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第84回 20年04月更新

パワハラ防止法~その6

ここ数回にわたって、厚生労働省が作成する「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」に記載されている、パワーハラスメント対策の具体的な対策手順について紹介をしています。

① トップのメッセージ
  組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場から無くすべきであるということを明確に示す。

② ルールを決める
  就業規則に規定を定める、労使協定を締結する。
予防・解決についての方針やガイドラインを作成する。

③ 実態を把握する
  従業員アンケートを実施する。

④ 教育する
  研修を実施する。

⑤ 周知する
  組織の方針や取組について周知・啓発を実施する。

⑥ 相談や解決の場を設置する
  企業内外に相談窓口を設置する。職場の対応責任者を決める。
外部専門家と連携する

⑦ 再発防止のための取組
  行為者に対する再発防止研修等を行う。

これまで⑤までを順次説明してきました。今回は、『⑥相談や解決の場を設置する』について考えてみたいと思います。

相談窓口の重要性

実際にパワーハラスメント等が発生した場合は、相談窓口が効果的であるか否かがその後の行方を大きく左右します。もし、相談窓口があまり機能していなければ、問題が表面化せず、パワーハラスメントが繰り返されたり、エスカレートしていく可能性が高まります。
相談窓口等を設置するのであれば、形だけのものでなく、社内風土や組織体系等を考慮して、有効なものにしなければ意味がありません。
「相談者の秘密が守られること」「相談したことによる不利益な取り扱いを受けないこと」などは、絶対に守らなければならないポイントです。

相談窓口の担当者の人選

相談窓口の相談担当者は、中立的な立場で相談を受け、解決に向けて取り組むことができる人材を選出する必要があります。当然、パワーハラスメントの問題に対応できるスキルも求められます。
相談担当者のスキルアップを図るための研修やチェックシートについては、厚生労働省のポータルサイト「あかるい職場応援団」からダウンロードすることができます。
相談担当者は1人でなければいけないというわけではありませんので、男女両方を含めた複数の担当者を選任するとより良いでしょう。

相談窓口の設置方法

相談窓口には、「社内に相談窓口を設ける方法」と「社外に相談できる窓口を委託する方法」の2種類の手法があります。それぞれに善し悪しはありますが、いずれの相談窓口であっても、従業員が相談しやすい環境を作り出すことが重要です。

1)内部相談窓口の例
・管理職や従業員をパワーハラスメント相談員として選任して相談対応
・人事労務担当部門
・コンプライアンス担当部門/監査部門/人権(啓発)部門/法務部門
・社内の診察機関、産業医、カウンセラー
・労働組合

2)外部相談窓口の例
・弁護士や社会保険労務士の事務所
・ハラスメント対策のコンサルティング会社
・メンタルヘルス、健康相談、ハラスメントなど相談窓口の代行を専門に行っている企業

少人数の会社では、会社内部に相談窓口を設置すると、仮にパワーハラスメントの事実があったとしても、相談内容や相談した事実が漏れることを恐れて、相談しないといったケースが起こり得ます。
そのため、小規模な会社は、費用は多少かかりますが、外部に相談窓口を設置する方が機能する可能性が高いと言えます。
内部に相談窓口を設置せざるを得ない場合は、相談していることが判らないように配慮した運用方法を検討しましょう。

相談対応の手順

従業員からの相談対応は、次の手順で行います。特に注意を払わなければならないのは、最初の2つのポイントです。

1)相談窓口での対応
2)事実関係の確認
3)行為者・相談者へのとるべき措置を検討
4)行為者・相談者へのフォロー
5)再発防止策の検討

相談窓口での対応方法

相談窓口では、相談の受付のみを相談担当者が行う場合(一次対応)と、相談担当者が事実確認までもあわせて行う場合があります。
上記のフローで言えば、「1)相談窓口での対応」と「2)事実関係の確認」を、別々に行うか、一緒に行うかの違いになります。大した違いがないような気もしますが、役割と権限を明確にしておかないと、相談担当者が問題に対してどこまで踏み込んで良いのか判断できなくなります。
責任や権限を曖昧にしておくと、問題が解決するどころか、むしろ悪化する結果になることもあります。相談担当者がどこまでの対応を行うのか、相談窓口を設置する前に社内で良く検討しておきましょう。
相談方法は、面談に限るわけではありませんので、電話や手紙・電子メール等でも可能な体制とすると良いでしょう。これらの方法を取り入れることで、従業員が相談しやすい相談窓口にすることができます。

事実関係の確認方法

パワーハラスメントは、お互いの認識にずれが生じていることが多く、解決していくためには事実関係の把握が重要です。しかし、会社の対応が悪ければ、場合によっては相談者が退職せざるを得なくなる事態になったり、こじれて訴訟になってしまうことも考えられます。
事実関係の確認をする前に、相談者の了解を得ることはもちろんですが、行為者に対しても、慎重に、かつ事実を正確にとらえられるように行わなければなりません。
行為者に対して、事実関係の確認をする際は、中立的な立場で話を聴くというスタンスを崩さないようにしましょう。また、相談者の認識に誤解があった場合にも、報復などは厳禁であることを伝えましょう。
パワーハラスメントは、相談者と行為者の説明が一致しないことはよくあります。その際は、同僚などの第三者に対しても確認をしていかなければなりません。ただし、事実確認をする人数を多くすれば多くするほど、問題になっている事案の内容が外部に漏れやすくなり、余計な勘繰りを生むこともあります。事実確認を行う人数は、ポイントと考えられる人だけに絞るなど、必要最低限にすることが望まれます。

 

今回は、相談窓口の設置と役割について紹介をしました。次回は、就業規則の懲戒の規定方法などを紹介していきたいと思います。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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