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第86回 20年07月更新

パワハラ防止法~その8

ここ何ヶ月かにわたって、厚生労働省が作成する「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」のパワーハラスメント対策の具体的な対策手順について紹介をしてきましたが、今回でその最終回となります。

① トップのメッセージ
  組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場から無くすべきであるということを明確に示す。

② ルールを決める
  就業規則に規定を定める、労使協定を締結する。
予防・解決についての方針やガイドラインを作成する。

③ 実態を把握する
  従業員アンケートを実施する。

④ 教育する
  研修を実施する。

⑤ 周知する
  組織の方針や取組について周知・啓発を実施する。

⑥ 相談や解決の場を設置する
  企業内外に相談窓口を設置する。職場の対応責任者を決める。
外部専門家と連携する。

⑦ 再発防止のための取組
  行為者に対する再発防止研修等を行う。

『⑥ 相談や解決の場を設置する』の手順は、次の5段階で成り立ちます。

1)相談窓口での対応
2)事実関係の確認
3)行為者・相談者へのとるべき措置を検討
4)行為者・相談者へのフォロー
5)再発防止策の検討

これまでで、『⑥ 相談や解決の場を設置する』の「3)行為者・相談者へのとるべき措置」まで説明していますので、最終回の今回は、「4)行為者・相談者へのフォロー」から順番に解説をしていきたいと思います。

4)行為者・相談者へのフォロー

行為者と相談者の双方に対して、事実関係の調査結果やその対応方法、会社の考え方を丁寧に説明します。会社の考え方や取り組みに対して理解をしてもらうことが重要なため、1回の説明で理解が得られなければ複数回にわたって根気よく説明を行っていきましょう。
パワーハラスメントにあたる場合はもちろん、誤解される言動だったとしても、行為者の行動や発言にどのような問題があったかを伝え、同様の問題が起こらないように継続的なフォローアップを行います。行為者が似たような言動を繰り返してしまう可能性は十分考えられますので、行為者の上長は、行為者の言動に目を配っていく必要があります。
万が一、パワーハラスメントに該当する、あるいはその可能性がある言動があった際は、行為者に対してアドバイスを行うとともに、定期的な面談を行います。「感情をコントロールすることができないためにパワハラをしてしまう」といったケースもありますので、面談等に加えてアンガーマネジメント、効果的な指導方法、コミュニケーションの手法といった研修を継続的に受講してもらうといったことも検討します。

⑦再発防止のための取組

企業のパワハラ対応を見ていると、発生した事案を解決するだけで丸くおさまったと考えている節があります。行為者を処分するだけで終わりにしてしまうと、ふたたび同じことが繰り返されてしまうという可能性があります。これは同一人物による繰り返しだけでなく、ほかの従業員が同様の問題を起こすことも含みます。

再発防止策は、予防策と表裏一体の関係です。予防策を確実に実施していくことができれば、結果的に再発防止につながります。パワーハラスメントの問題が解決した後も、同様の問題が発生しないように、従業員の理解を深めていく必要があります。

また、再発防止策等の取り組み内容は、常にブラッシュアップしていくことでより高い効果を期待することができます。厚生労働省が公開している「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」には、再発防止策の具体例として以下のようなものがあげられています。

行為者に対する再発防止研修の実施
パワーハラスメント行為の再発を防ぐために研修を実施します。研修は、本人の立場も配慮して行うことが必要です。社内で対象者を集めての研修は、お互い顔を合わせることになるので、できれば避けた方がよいでしょう。社内にこだわることなく、社外セミナーなどに参加してもらい、レポート提出などをさせるのも一つの方法です。

事例発生時のメッセージ発信
事例発生時には、可能であれば何らかのメッセージ・情報の発信をするとよいでしょう。 職場を預かる管理職に、注意喚起をするだけでも効果が見込まれます。

事例の活用
社内事例ごとに検証し、新たな防止策を検討し、毎年のトップメッセージや会社ルール、 研修などの見直し・改善に役立てることが望まれます。またプライバシーに配慮しつつ、 同様の問題が発生しないように、社内の主要な会議で情報共有することも大切です。

管理職登用の条件
管理職登用にあたり、部下とのコミュニケーションの取り方や部下への適正な指導や育成にあたれる人材かどうかを昇格の条件とすることも考えられます。

職場環境の改善のための取組
パワーハラスメント行為の防止に当たり、職場環境の改善に取り組みます。パワーハラスメントが起きてしまう要因には、例えば職場内のコミュニケーションや人間関係の希薄化、長時間労働の恒久化が考えられます。
コミュニケーション不足により、異質なものを排除する風土が生まれ、また長時間労働による疲弊がパワーハラスメントへとつながっていく可能性があります。このような状況がある場合は、職場内のコミュニケーションの強化や長時間労働対策を行うなど、職場環境を改善することがパワーハラスメントの予防にもつながります。

 

長期間にわたって、パワーハラスメント防止について解説をしてきました。大企業は令和2年6月から、中小企業は令和4年4月から、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。
パワハラが発生した後の対応について検討することも重要ですが、もっとも大切なのは、そもそも職場でパワハラを発生させないための対策です。
パワハラは、今この時にも起きているかもしれません。中小企業であっても、法律上の義務の有無にかかわらず、法律を先取りして準備をしておきましょう。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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