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第91回 21年01月更新

増加する兼業・副業~その3 通算労働時間の確認方法

前回のコラムで詳しく紹介をしましたが、兼業や副業をした場合の労働時間は通算して残業時間を計算しなければなりません。労働時間の通算とは、簡単に言えば午前中に4時間働き、午後に5時間別の場所で働いた場合は、その日の労働時間は9時間としてカウントされるということです。
労働時間の通算自体はただの足し算ですが、本業の会社と副業先の会社が連絡を取り合うことはまれであるため、実際に兼業や副業を認めた会社では労働時間の把握に苦戦することが多いようです。
今回は、労働時間の把握の方法と健康管理について紹介をしていきます。

労働時間等の把握について

会社は、従業員が副業や兼業を行う場合に把握しておくべき項目があります。これらは、従業員からの申告によって把握する必要があります。
そのため、就業規則や雇用契約書等に、副業や兼業を行う場合の届出についてのルールを定めておきましょう。会社が副業や兼業を希望する従業員から確認すべき事項には、以下のような項目があります。

①副業先の事業内容
②副業先で従事する業務内容
③労働時間通算の対象となるか否かの確認
④副業先との労働契約の締結日、期間
⑤副業先での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
⑥副業先での所定外労働の有無、見込み時間数、最大時間数
⑦副業先における実労働時間の報告
⑧これらの事項について確認を行う頻度

労働時間以外の項目については、変更があった都度、届け出てもらえばよい内容です。
一方で、定期的に報告を受ける必要があるのが労働時間です。前回のコラムで本業と副業先のどちらが残業代を清算すべきかについては説明しました。それでは、副業先での労働時間はどのぐらいの頻度で把握すべきかという点についてみていきたいと思います。

副業先の労働時間の把握については、労働基準法を遵守するために必要な頻度で行えばよいとされています。簡単に言えば、労働基準法が守られている限り、一週間分をまとめて申告をしても問題ありません。申告の方法の具体例としては、

・時間外労働の上限規制の遵守等に支障がない限り、一定の日数分をまとめて申告等させる
・所定労働時間どおり労働した場合には申告等は求めず、実労働時間が所定労働時間と異なった場合のみ申告をさせる

といったことが考えられます。
お互いに無理なく運用できる方法を相談して決めたほうが良いでしょう。

健康診断について

次に、短時間勤務を複数の会社で行っている方に対して、健康診断はどのように考えていけば良いのかを見ていきたいと思います。
短時間労働者で健康診断を行う必要がある方は、以下の2つの要件のいずれにも該当する方です。

①労働契約の期間の定めが無い者、もしくは期間の定めがある労働契約により使用される者のうち、1年(特定業務従事者は6ヶ月)以上使用されることが予定されている者。
②その者の1週間の労働時間数が、その事業場の同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上である者。なお、4分の3未満であっても概ね2分の1以上である者については健康診断を行うことが望ましい。

つまり、1週間の労働時間数が、その事業場の同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3未満であれば健康診断等の対象にはならなりません。
ここで問題になるのが、副業・兼業することにより所定労働時間の4分の3を超えてしまう場合は、健康診断の実施義務が発生するかどうかという点です。
少しややこしいので、具体例を挙げながら説明したいと思います。

それぞれの会社の通常の労働者の所定労働時間は40時間のケースで、

・A社では、「所定労働日は月曜日から金曜日、労働時間は 8:00~12:00」
・B社では、「所定労働日は月曜日から金曜日、労働時間は 13:00~16:00」

で雇用契約を締結したとします。

労働時間については、通算されることになっているので、1日の労働時間は7時間となります。一方で、健康診断等の基準は労働時間の通算は行いません。
そのため、それぞれの会社で①と②の条件に該当するかどうかを判断することになります。今回の例だと、両社ともに1週間の所定労働時間の4分の3未満となりますので、A社・B社とも健康診断の実施義務は生じないことになります。

 

今後はさらに、兼業や副業を行う方が増加すると思われます。知らぬ間に労働基準法違反を犯していたということにならないように、十分注意しましょう。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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