S-PAYCIALコラム

S-PAYCIAL-Column

第98回 21年07月更新

令和3年 育児休業法の改正について

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律」が国会で可決・成立し、令和3年6月9日に公布されました。今回から数回に分けて、改正された内容を確認していきたいと思います。

産前産後休業と育児休業について

今回の法改正の内容説明に入る前に、産前産後休業と育児休業を簡単におさらいしておきましょう。

・産前産後休業

従業員が出産するときは、出産予定日の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内であれば、本人が休みを希望した場合、会社は休業させる義務が生じます。
また、出産後8週間は、従業員が働きたいと申し出たとしても、働かせることはできません。ただし、出産後6週間を経過している場合には、本人から働きたいとの請求があり、医師が認めた仕事内容であれば働くことができます。
この産前産後休業の期間は、就業規則に定めておけば有給でも無給でもどちらでも構いません。給与が支給されない場合は、健康保険から出産手当金が支給されます。仮に給与が支給された場合は、その分だけ出産手当金が減額されます。

・育児休業

従業員が1歳に満たない子供を養育するために休業を希望するときは、会社は育児休業を認める必要があります。また、子供が保育園に入園できないなど一定の要件を満たせば最長で2歳に達するまで育児休業を延長することができます。
育児休業中の給与の支給についても法律的な制約はないので、会社の規則で定めておけば、有給でも無給でも構いません。給与の支給がない場合は、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。仮に育児休業期間中に働いて賃金を得たとしても、次の3つすべての条件を満たしている場合は、育児休業給付金が支給されます。

① 一時的・臨時的にその事業主の下で就労したこと
② 就労が月10日(10日を超える場合は月間80時間)以下であること
③ 支給対象期間に支給された賃金額が休業開始前の80%未満であること

なお、産前産後休業期間中と育児休業期間中については、健康保険、介護保険と厚生年金保険の保険料が会社負担、従業員負担のいずれも免除されることになっています。

改正の概要について

今回の育児休業法の法改正では、次の6つの項目が改正されることになりました。項目ごとに内容を見ていきたいと思います。

① 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設(出生時育児休業)
② 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
③ 育児休業の分割取得
④ 育児休業の取得の状況の公表の義務付け
⑤ 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
⑥ 育児休業給付に関する所要の規定の整備

① 出生時育児休業について

出生時育児休業は、通常の育児休業(子が1歳に達するまでの休業)とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる育児休業です。実務的な内容になりますが、出産予定日前に子が生まれた場合は、「出生日」から「出産予定日の8週間後まで」が対象となります。逆に、出産予定日後に子が生まれた場合は、「出産予定日」から「出産日の8週間後まで」が対象となります。
この出生時育児休業期間中も、育児休業給付金の支給対象となります。給付率については、67%となります。

先ほど紹介をしたように、子の出生後8週間については、女性は産後休業期間にあたるため、この制度は男性が取得することを目的としています。これまでも、パパ休暇という制度がありましたが、利用率が低いといった問題がありました。この問題を解決するために、パパ休暇を廃止して出生時育児休業が創設されました。
出生時育児休業の取得をする場合は、休業の2週間前までに申出を行う必要があります。ただし、例外として、職場環境の整備などについて、今回の制度見直しにより求められる義務を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1ヶ月前までとすることができます。具体的な内容については、今後厚生労働省令で定められることになっています。

この出生時育児休業は、2回に分割をして取得することも可能です。例えば、出産直後に10日間休業し、いったん仕事復帰をした後に再度14日間の休業を取得するといったこともできるのです。ただし、分割して取得する場合は、原則として2回分をまとめて申し出る必要があるので注意しましょう。

また、出生時育児休業は、労使協定を締結している場合に限られますが、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能です。就業する場合の具体的な手続きの流れは、次のとおりです。なお、就業可能日等の上限(所定労働時間の半分)については、今後厚生労働省令で定められる予定です。

① 労働者が就業しても良い場合は事業主にその条件を申し出る
② 事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日、時間を提示する。
③ 労働者が同意した範囲で就業する。

 

出生時育児休業の施行時期は、公布日から1年6ヶ月を超えない範囲内で政令で定める日となっています。今後、施行日や具体的な厚生労働省令が発表されるはずなので、注視しておく必要があります。

 

今回は、育児休業法の改正のうち、新たに創設された「出生時育児休業」について紹介をしました。その他の法改正事項については、次回以降で説明していきます。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

バックナンバー

S-PAYCIALコラムTOPへ戻る

PAGE TOP