S-PAYCIALコラム

S-PAYCIAL-Column

第24回 17年04月更新

定額残業代 運用上の留意点

こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。
4月は入社、昇格、昇給等、雇用契約の締結や更改を行う時期です。昇給すれば基本給の増加に伴い時間単価も増加しますので、当然ながら時間外手当の単価も増加します。事務作業の負担軽減のため毎月定額の残業代の支給をする「定額残業代」を採用している企業も多いことでしょう。しかしながら、基本給は昇給しても定額残業代は昇給前と同額のままであったり、基本給が異なる複数の従業員に一律同額の定額残業代を設定しているケースなど、定額残業代を適正に運用していないケースも散見されます。
今回は、定額残業代の運用上の留意点について述べたいと思います。

定額残業代とは、あらかじめ一定時間の時間外労働がある前提で、定額の残業代を支払う制度です。よくある誤解が、「定額残業代を払えば、残業時間にかかわらず、それ以上は払わなくてよい」というものですが、実際の残業時間が定額残業代相当分を超えればその差額分は支払う必要があります。定額残業代が正しく運用されているかは、下記の要件を押さえておきましょう。

1.定額残業代が、他の手当と明確に区分されていること

例えば、「月給30万円(一律残業時間を含む)」といった内容では、基本給と残業代の区分がされていません。

2.定額残業代の金額と残業時間が明示されていること

例えば、「月給30万円(20時間分の残業時間を含む)」といった内容では、定額残業代の金額が明示されていません。また、○○時間分の定額残業代と明記した上で、その金額を個別に計算する必要があります。

3.時間外労働の対価としての性格以外に、他の性格が含まれていないこと

例えば、営業手当を定額残業代としながら、営業手当の中に経費の補充やインセンティブ的な性格が含まれていると認められる場合は、時間外労働の対価としての性格が否定され、定額残業代として認められません。

4.定額残業代で明示されている残業時間を超えた場合は、超過分の追加支給がされていること

例えば、「残業手当5万円(月20時間分)」と雇用契約書に記載されていた場合、残業時間が月に20時間を超えれば、超えた分の追加の残業代を支払わなければなりません。そのためには、労働者の労働時間管理を適正に行い、超えた時間分に応じた追加支給の額を算出する必要があります。

以上、定額残業代運用上の留意点を述べましたが、定額時間外手当の制度は、正しく運用し、労働者への説明を行わないと無効とされることもあります。定額残業代の効力が否定されてしまうと、基本給の中に定額残業代が含まれていると企業側が主張しても、残業代は支給されていないこととなってしまい、未払い残業代として請求されるリスクを負います。しかも、支給されるべき残業代の計算にあたっては、定額残業代としていた部分も残業代の算定基礎賃金に含まれることとなり、残業代の時間単価が高くなってしまいます。

定額残業代に関しては、労使間でのトラブルになりやすく、たびたび紛争が起きています。企業が現状の時間外労働の実態を把握し、労働環境を改善しながら適正に運用を進めていくことが、トラブルを避ける重要なポイントとなるでしょう。

 

業務とシステムに精通した専門家集団によるアウトソーシングサービス

全面WEBの統合人事ソリューション(人事・給与・就業・ワークフロー)

著者プロフィール(溝口知実氏)

溝口知実 氏

特定社会保険労務士。溝口労務サポートオフィス代表。千葉県出身。大学卒業後、IT企業の人事労務経理業務、公的年金相談のスーパーバイザー、社会保険労務士事務所勤務等を経て、平成26年溝口労務サポートオフィスを開業。主な業務は中小企業の労務管理全般にわたる相談、コンサルティング、就業規則の作成・改訂等。社会保険労務士10年以上のキャリアを活かし、お客様の発展のために、生き生きと元気なヒトと会社、社会づくりに貢献することを目指し奮闘中。
http://www.mizoguchi-sr-office.jp/

バックナンバー

S-PAYCIALコラムTOPへ戻る

PAGE TOP