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第26回 17年06月更新

年金受給資格期間の短縮による外国人従業員への影響について

こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。外国人の入社や退社に伴い、外国人に適用する日本の年金制度について、人事担当者様からしばしばお問い合わせをいただきます。
お問い合わせ内容としては、帰国する外国人従業員が厚生年金の資格喪失後に一時金で受け取る「脱退一時金」の請求方法等が主なものです。
しかし、年金機能強化法の改正により、今年8月1日より年金の受給資格が原則25年から10年に緩和されることで、短期在留の外国人でも日本の年金を受け取れる対象者が広がります。
今回は、外国人従業員の年金加入及び8月の法改正による影響について述べたいと思います。

外国人でも日本に居住していれば、20歳から60歳未満の間は日本の年金に強制加入が基本です。
会社に勤めているのであれば、外国人であっても日本人と同様の要件を満たせば厚生年金保険に加入しなければなりません。
ただし、「社会保障協定」を締結している国からの就労者は、就労状況や派遣期間により、本国の社会保障制度または日本の社会保障制度のどちらかに加入することになります。
これにより、本国と日本の社会保障制度への二重加入を防止することができます。
5年を超えると見込まれる派遣や日本での現地採用であれば、日本の社会保障制度にのみ加入し、5年以内の短期派遣であれば本国の社会保障制度にのみ加入します。
2017年1月時点で、日本は20カ国と社会保障協定を署名済み、うち16カ国(ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ等)は発効しています。
http://www.nenkin.go.jp/service/kaigaikyoju/shaho-kyotei/kyotei-gaiyou/20141125.html
なお、現在中国、スウェーデン、トルコとは締結に向け協議中です。

社会保障協定締結国との年金加入期間の通算により、日本の年金を受け取る資格を得ることができます(ただし、イギリス、韓国については年金加入期間を通算することができません)。
例えば、アメリカの年金制度に6年加入し、日本の年金制度に19年加入した場合、両国の年金加入期間を通算し25年以上となるため、日本の年金受給資格期間を満たし、日本の年金を受け取ることができます。

一方、日本の年金受給資格を得られない多くの外国人は、一時金で受け取れる「脱退一時金」を請求します。脱退一時金は、6カ月以上日本の年金制度に加入し、老齢・障害年金を受け取ることができない外国人が、出国後2年以内に請求できます(ただし平成29年3月以降、転出届を市区町村に提出すれば、住民票転出(予定)日以降に日本国内での請求が可能)。
脱退一時金は、短期在留の外国人の保険料掛け捨て防止の制度と言えます。
以上のように、日本の受給資格を満たさない外国人は脱退一時金を請求する方法が一般的でした。
日本の年金受給資格を得るには25年の高いハードルがあるからです。
しかし、今年8月から老齢年金の受給資格期間が25年から10年に短縮される影響で、日本の老齢年金を受給できる外国人が増加することが見込まれます。
例えば、アメリカの年金制度に6年加入し、日本の年金制度に4年加入した場合、両国の年金加入期間を通算し10年となり、日本の年金受給資格が得られます。
その場合、帰国後に脱退一時金を請求するか、あるいは将来日本の年金を請求するか、外国人従業員からの問い合わせが増えることが想定されます。
企業として、外国人従業員が退職後に必要となる手続きについて説明できることが望ましいでしょう。

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著者プロフィール(溝口知実氏)

溝口知実 氏

特定社会保険労務士。溝口労務サポートオフィス代表。千葉県出身。大学卒業後、IT企業の人事労務経理業務、公的年金相談のスーパーバイザー、社会保険労務士事務所勤務等を経て、平成26年溝口労務サポートオフィスを開業。主な業務は中小企業の労務管理全般にわたる相談、コンサルティング、就業規則の作成・改訂等。社会保険労務士10年以上のキャリアを活かし、お客様の発展のために、生き生きと元気なヒトと会社、社会づくりに貢献することを目指し奮闘中。
http://www.mizoguchi-sr-office.jp/

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