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第34回 18年12月更新

過労死ラインの長時間労働と働き方改革関連法

こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。来年4月以降順次施行予定の働き方改革関連法ですが、大きな柱は、長時間労働の是正です。長時間労働の問題は近年ニュースや新聞等の報道で多く取り上げられるようになりました。その中で、「過労死ラインを超えた労働時間」といった表現もよく耳にします。働き方改革関連法において、過労死ラインを考慮した時間外労働時間等の規制が設けられています。今回は、過労死ラインと絡めて働き方改革関連法の時間外労働の規制について述べたいと思います。

 

過労死ラインとは

過労死ラインとは、労災で過労死と認定される労働時間の基準となる時間のことで、このラインを超えると労働時間と過労死との間に因果関係があると認められやすくなります。「過労死ライン」は、厚生労働省の基準に基づいています。厚生労働省は、労働者に発症した脳・心臓疾患を労災として認定する際の基準として、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」を定めています。これによると、

・発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる
・発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる

とあります。

厚生労働省が発表した「平成29年度 過労死等の労災補償状況」によると、脳・心臓疾患に関する時間外労働時間別支給決定件数では、「評価期間1か月」では「100時間以上~120時間未満」42件(全体91件)が最も多く、「評価期間2~6か月における1か月平均」では「80時間以上~100時間未満」96件(全体158件)が最も多い結果となっています。
働き方改革関連法では、時間外労働の上限規制が設けられていますが、この上限時間は過労死ラインとほぼ同じに設定されています。

 

働き方改革関連法における時間外労働の上限規制とは

来年4月より順次施行される働き方改革関連法ですが、この改革の柱のひとつに「時間外労働の罰則付き上限規制」があります(大企業は2019年4月1日施行、中小企業は、2020年4月1日施行、自動車の運転業務・建設事業・研究開発業務・医師等は、当面の間適用除外)。
労使協定(36協定)を締結することにより、法定労働時間を超えて労働させることができる延長時間を決定することができますが、現行では法定の上限時間はなく、「時間外労働の限度に関する基準告知(限度基準告知)」において、一定の限度時間が定められています。
今回の改正により、告示で示していた時間外労働の上限(月45時間、年360 時間)を法律に格上げし、原則としました。更に、例外として、繁忙期等の臨時的な特別な事情がある場合についても上限時間を規定し、罰則規定(6か月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金)を設けています。

・時間外労働の上限は、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできない
・臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間、1か月100時間(休日労働を含む)、2~6か月で平均80時間(休日労働を含む)を限度に設定しなければならない
・月45時間を超えることができるのは、年間6か月までとする

これまでは、残業時間の規制が法的に規制されていませんでしたが、法施行後は際限なく働かせることは法違反となり罰則が適用されます。企業にはこれまで以上に厳格な労働時間の管理が求められます。
また、時間外労働の上限が、1か月100時間、2~6か月平均80時間未満といういわゆる「過労死ライン」に設定されているため、過労死に至るまで働かせられるのかといった批判もあり、課題は残されています。今後は、時間外労働の上限時間を段階的に少なくしていく検討も必要と思われます。

 

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著者プロフィール(溝口知実氏)

溝口知実 氏

特定社会保険労務士。溝口労務サポートオフィス代表。千葉県出身。大学卒業後、IT企業の人事労務経理業務、公的年金相談のスーパーバイザー、社会保険労務士事務所勤務等を経て、平成26年溝口労務サポートオフィスを開業。主な業務は中小企業の労務管理全般にわたる相談、コンサルティング、就業規則の作成・改訂等。社会保険労務士10年以上のキャリアを活かし、お客様の発展のために、生き生きと元気なヒトと会社、社会づくりに貢献することを目指し奮闘中。
http://www.mizoguchi-sr-office.jp/

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