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第40回 19年12月更新

歩合給制運用の留意事項について

こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。

社員のモチベーションアップを図るために歩合給制を導入している企業は少なくありません。歩合給の導入及び運用にあたってはいくつかの注意点がありますが、その中でも残業代の計算が少々複雑で、適正に計算を行っていないケースもたびたび見受けられます。今回は、歩合給制運用の留意事項について述べたいと思います。

1.歩合給制とは

歩合給制とは、個人の成績や売り上げに応じて計算した給与制度のことをいいます。歩合給の支払い方法として、「固定給+歩合給」と「完全歩合給」の2つがあります。「固定給+歩合給」は固定給にプラスして個人の成績や売り上げに応じて歩合給が支払われるもので、一方、「完全歩合給」とは、固定給はなく、給与のすべてが歩合給で支払われるというものですが、一定額の賃金の保障がなければ、労働基準法上違法となります。労働基準法27条(出来高払制の保障給)では、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ、一定額の賃金の保障をしなければならない。」と規定されています。そのため、全く成果が上げられなかったとしても、労働時間に応じた一定の賃金の保障をしなければなりません。また、一定の賃金の保障は、最低賃金を上回らなければならないことは言うまでもありません。

2.歩合給制導入のメリットとデメリット

歩合給制導入のメリットとしては、労働者のモチベーションの向上が第一に挙げられるでしょう。個人の成績や売り上げに応じて給与が変動するため、仕事のモチベーションを上げる効果が期待できます。
デメリットとしては、固定給のように給与が一定額でないことから、収入を安定させることが難しいことが挙げられます。また、個人の成績や売り上げに応じて給与が支給されるため、競争意識が高まり職場での協調性が損なわれてしまうといった点も挙げられます。

3.歩合給制の導入の注意点

前述の通り、歩合給制を導入する際には、労働時間に応じた一定の賃金の保障をする必要があり、その額は最低賃金を上回らなければなりません。
また、歩合給にも割増賃金の支払いは必要となりますが、計算方法が少々複雑で、固定給と歩合給では計算方法が異なります。
固定給は1時間あたりの単価を求める際に、所定労働時間数で除するのに対し、歩合給は、総労働時間数で除して求めます。総労働時間数とは、時間外労働や休日労働時間数も含んだすべての労働時間数をいいます。
また、固定給の割増率は、1時間あたりの単価の1.25倍となりますが、歩合給の割増率は、0.25倍のみの支払いで足ります。これは、歩合給は実際に労働したすべての時間に対して支払われるものであるため、通常の賃金の1.0の部分はすでに支払い済みといえるからです。

<残業代計算例>
月所定労働時間160時間、時間外労働時間40時間、総労働時間200時間、固定給26万円、歩合給6万円の場合

固定給:260,000円÷160時間×40時間×1.25=81,250円
歩合給:60,000円÷200時間×40時間×0.25=3,000円
合計84,250円

以上見てきましたように、歩合給制はいくつかの注意点を踏まえた上で運用することが必要です。しかし、歩合給は従業員のモチベーションアップや自社の活性化を図るには魅力的な制度です。導入にあたっては、適正に運用し、効率的に活用していきましょう。

著者プロフィール(溝口知実氏)

溝口知実 氏

特定社会保険労務士。溝口労務サポートオフィス代表。千葉県出身。大学卒業後、IT企業の人事労務経理業務、公的年金相談のスーパーバイザー、社会保険労務士事務所勤務等を経て、平成26年溝口労務サポートオフィスを開業。主な業務は中小企業の労務管理全般にわたる相談、コンサルティング、就業規則の作成・改訂等。社会保険労務士10年以上のキャリアを活かし、お客様の発展のために、生き生きと元気なヒトと会社、社会づくりに貢献することを目指し奮闘中。
http://www.mizoguchi-sr-office.jp/

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