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第51回 21年10月更新

脳・心臓疾患の労災認定基準の改定について

こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。
脳・心臓疾患を発症した労働者の労災認定基準が約20年ぶりに改定されました。これまでは平成13年12月に改定された「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」を基準としていましたが、本年9月15日から「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」を基準として労働基準監督署で運用が開始されています。厚生労働省は、今後この基準に基づいて、迅速・適正な労災補償を行っていくこととしています。
改正に関する4つのポイントは、下記の通りです。

1.長期間の過重業務の評価に当たり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化

改正前は、過重業務の評価を「発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合について業務と発症との関係が強いと評価できる」と示していました。
改正後は、上記の時間に至らなかった場合でも、これに近い時間外労働を行った場合には、「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮し、業務と発症との関係が強いと評価できることを明確にしました。

2.長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直し

労働時間以外の負荷要因として、従来の下記の例示が示されていました。

・拘束時間の長い勤務
・不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤
・出張の多い業務
・作業環境(温度環境・騒音)

改正では負荷要因を見直し、下記項目が追加されました。

・休日のない連続勤務
・勤務間インターバルが短い勤務
・事業場外における移動を伴う業務
・心理的負荷を伴う業務 (改正前の「精神的緊張を伴う業務」の内容を拡充)
・身体的負荷を伴う業務

3.短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化

業務と発症との関連性が強いと判断できる場合として、以下の例が示されました。

【短期間の過重業務】
・発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合
・発症前おおむね1週間継続して、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合

【異常な出来事】
・業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合
・事故の発生に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処理に携わった場合
・生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合
・著しい身体的負荷を伴う消火作業、人力での除雪作業、身体訓練、走行等を行った場合
・著しく暑熱な作業環境下で水分補給が阻害される状態や著しく寒冷な作業
・環境下での作業、温度差のある場所への頻回な出入りを行った場合

4.対象疾病に「重篤な心不全」を追加

これまでの基準では、脳血管疾患が4疾病(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症)、虚血性心疾患等が 4 疾病(心筋梗塞、狭心症、心停止、解離性大動脈瘤)でした。
新たな対象疾病として「重篤な心不全」が追加されました。「重篤な心不全」には、不整脈によるものも含みます。

なお、脳・心臓疾患の労災認定の新基準は、以下の点は従来の基準と変更ありません。

・「長期間の過重業務」、「短期間の過重業務」、「異常な出来事」により業務の過重性を評価すること
・「長期間の過重業務」について、発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること

今回の改正で、労働時間以外の負荷要因として「休日のない連続勤務」、「勤務間インターバルが短い勤務」などが追加されました。一定時間以上の休息時間を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保するための労務管理が求められます。
また、労働時間以外の負荷要因も考慮して総合的に労災認定できることが明記されたことで、労働時間はもちろんのこと、労働時間以外の労働者の負荷も考慮した労務管理がますます必要となるでしょう。

著者プロフィール(溝口知実氏)

溝口知実 氏

特定社会保険労務士。溝口労務サポートオフィス代表。千葉県出身。大学卒業後、IT企業の人事労務経理業務、公的年金相談のスーパーバイザー、社会保険労務士事務所勤務等を経て、平成26年溝口労務サポートオフィスを開業。主な業務は中小企業の労務管理全般にわたる相談、コンサルティング、就業規則の作成・改訂等。社会保険労務士10年以上のキャリアを活かし、お客様の発展のために、生き生きと元気なヒトと会社、社会づくりに貢献することを目指し奮闘中。
http://www.mizoguchi-sr-office.jp/

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