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第20回 18年08月更新

社会保険手続における従業員の押印省略について

規制改革実施計画に基づく行政手続き簡素化について、前回のコラムでは電子申請の義務化について解説しました。
今回は、同じく行政手続き簡素化のひとつとして検討が進められている「従業員の押印・署名の省略」について取り上げたいと思います。

健康保険・厚生年金、雇用保険には、従業員の押印、署名が必要な手続きがいくつか存在します。提出は事業主から行いますが、従業員の押印、署名が必要であることから、どうしても本人と人事労務部門での書類のやり取りが発生し、それが効率化の妨げになっています。特に多くの支社や店舗等が存在する場合は非効率な業務です。
また、政府は電子申請の普及を目指していますが、この普及を妨げる要因にもなっています。電子申請は押印の代わりに電子署名が利用されていますが、従業員本人の電子署名を添付することは現実的に不可能であるため、現在は「委任状」や「同意書」を書面で提出させ、それをPDF等で電子申請に添付することで本人の押印、署名とする運用としています。電子データで扱える点は良いのですが、スキャンして添付するという作業がやはり手間となるため、大量の手続きが発生する訳ではない限り、敬遠される理由になるでしょう。

省略が可能となる手続とは

今回の「従業員の押印・署名の省略」の検討に関しては、従業員と会社で利益が相反する可能性がある手続を除き、事業主が「本人が当該届出を提出する意思を確認しました。」と記載することで、申出者署名欄の本人署名・押印を省略することを可能にするというものです。

【従業員の署名・押印が必要な手続】

■健康保険・厚生年金
・被保険者氏名変更(訂正)届
・被保険者住所変更届
・被保険者生年月日訂正届
・被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者関係届
・年金手帳再交付申請書
・養育期間標準報酬月額特例申出書
・産前産後終了時報酬月額変更届(★)
・育児休業等終了時報酬月額変更届(★)
・介護保険適用除外等該当・非該当届
・健康保険被保険者証滅失・棄損再交付申請書
・健康保険被保険者証再交付申請書

■雇用保険
・離職証明書(★)
・高年齢継続給付金支給申請
・育児休業給付金支給申請
・介護休業給付金支給申請

上記のうち、★印の手続は従業員と会社で利益が相反する可能性がある手続として、省略の対象から外れますが、それ以外の手続については省略可能とする見込みです。

具体的にどのような業務になるか

雇用保険については既に省令改正が平成30年3月30日に公布されており、その中で「本人から届出等について同意を得たことが明らかとなる書類を保管しておくことを要件として、届書等上の本人の署名・押印を不要とする」とされています。
つまり、本人の同意が単に不要になるのではなく、ハローワークに提出する書面上(電子申請であれば同意書の添付)において不要になるというものであり、人事労務部門においては同意を得る業務は残ることになります。
「同意を得たことが明らかとなる書類」がどのようなものなのかは現時点(平成30年7月)では明らかになっていませんが、電子申請の際に添付する「記載内容に関する確認書/提出代行に関する同意書」のような様式を想定しているのかもしれません。
例えば、メールやワークフローなどで同意を得るという手法も可能になれば、本人にとっても人事労務部門にとっても随分と楽になるように感じるのですが・・
いずれにしても、雇用継続給付を書面で提出している場合、毎回の支給申請において署名・押印を得ていたものが不要になるというのはメリットでしょう。

実施時期については、雇用保険に関しては平成30年10月を予定しており、社会保険に関しては平成30年度のなるべく早い時期とされています。今後、より具体的な情報が出てくると思われますので、引き続き情報収集が必要でしょう。

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著者プロフィール(野田宏明氏)

ITS社会保険労務士法人 代表
社会保険労務士。情報処理技術者(ITストラテジスト、プロジェクトマネージャ、アプリケー ションエンジニア)。
メーカー系IT企業にて人事業務のシステムコンサルタントに従事。大規模から中小規模まで多くの企業に対し、人事業務における業務コンサルティングからシステムの導入・運用保守まで一貫した対応を多数実施する。
その後、社会保険労務士として現職に至る。労務相談や教育講師の他、電子申請、給与計算などの領域にてITを活用した効率化をご提案する社会保険労務士として活躍中。
このコラムでは、社労士とシステムコンサルの視点にて、労務管理の様々なテーマを取り上げていきたいと思います。
http://www.it-sharoushi.jp/

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