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第26回 20年02月更新

2020年4月から始まる「GビズID」による社会保険電子申請とは

「GビズID」をご存じでしょうか?
1つのID・パスワードで様々な行政サービスにログインできる法人共通認証基盤サービスのことです。行政手続きの電子化を推進するため、ネックとされていた電子証明書の発行の手間やコストなどを、この「GビズID」を利用することにより、解決しようというものです。

既に運用は始まっており、現時点では経産省の補助金申請等の一部手続きに対応しています。今後、各種の行政手続きにおいて、GビズIDを利用した手続きが可能になるとされています。
社会保険分野に関しては。2020年4月から「GビズID」に対応すると通知がありました。これを利用すれば、社会保険・雇用保険の主要な手続きについては、電子証明書を取得することなく手続きが可能になります。
2020年4月というのは、大企業の電子申請義務化がスタートするタイミングでもあります。自社で電子申請に取り組む上で、この「GビズID」はどのような影響があるのでしょうか。

「GビズID」と「e-Gov」の違いは?

現在、社会保険の電子申請で利用している「e-Gov電子申請」が、これに取って代わる訳ではありません。「e-Gov」は今後も引き続き利用が可能です。「GビズID」は認証基盤であり、電子証明書の代わりになるものです。この認証基盤と「マイナポータル(企業用)」の仕組みを利用して、日本年金機構やハローワークに届書データを送信し、電子申請することが可能となる仕組みです。
従って、今後の社会保険の電子申請には、従来の「e-Gov」方式に加えて、「GビズID」方式が加わるイメージとなります。

「GビズID」ではどのような手続きに対応されるのか

厚生労働省の資料によると、2020年4月スタートのタイミングでは以下の手続きに対応します。

【社会保険】
資格取得届、資格喪失届、算定基礎届、月額変更届、賞与支払届、被扶養者(異動)届、国民年金第3号被保険者関係届

【雇用保険】
資格取得届、資格喪失届、転勤届、個人番号登録届

主要な手続きについてはカバーされますので、電子証明書が不要で手軽に始められるのなら、義務化に関わらず利用しようという企業も多く出てきそうです。
これらの手続を提出するためのソフトウェアとして、日本年金機構の「届書作成プログラム」が、2020年4月に「GビズID」対応バージョンをリリース(無償)する予定です。「届書作成プログラム」で申請データを作成し、GビズID・パスワードで認証の上、マイナポータルに送信することで、オンライン手続きが可能となります。自社システムで作成したCSVデータを「届書作成プログラム」を利用してマイナポータルに送信することも可能です。
また、e-GovのAPI申請のように、民間のソフトが直接マイナポータルに送信することも可能な仕組みのようですので、「GビズID」に対応するソフトも今後出てくると予想されます。

(出典)社会保険手続へのID/パスワード方式の導入について(令和元年12月26日 厚生労働省)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/koyou/2019/191226jinzai05_02.pdf

電子申請義務化対象の企業は「GビズID」だけで対応可能か?

残念ながら、義務化対象とされている手続きの全てが対応される訳ではありません。
雇用保険の高年齢雇用継続給付、育児休業給付、また、労働保険年度更新に関しては、「GビズID」では2020年4月には未対応のため、これらについては「e-Gov」による電子申請が必須となります。従って、義務化対象の大企業においては、電子証明書の取得はやはり必要となります。

また、「GビズID」による申請は、CSVデータを送信する形式を想定しています。磁気媒体(CD-R等)による申請や「e-Gov」の連記式による従来のものと同様のデータ形式が予定されており、現在のCSV形式に対応した人事給与システムであれば、そのまま「届書作成プログラム」を利用することで電子申請が可能になる予定です。

CSVによる一括申請は便利ですが、実務上の課題もあります。
それは、雇用保険の資格喪失届には対応をしているものの、離職証明書には対応をしていないという点です。つまり、離職証明書なしの資格喪失届は電子申請ができるが、離職票ありの場合には「GビズID」方式は使えないということになります。
前回のコラムで解説しましたが、電子申請義務化対象企業の雇用保険資格喪失届には離職証明書も電子申請である必要があります。実務面において、これをどのような手段で行うかの検討は必要になるでしょう。

まとめ

これまで、CSVデータをCDで郵送する電子媒体申請を利用されている企業にとっては、郵送の手間が省けることになりますので、「GビズID」方式はメリットのある方法になるでしょう。
しかし、前述したとおり、電子申請義務化の対応策としては不十分であり、「GビズID」では対応できない手続きの電子申請方法は確立しておく必要がありそうです。

電子証明書を作成しなくても行政手続きの電子申請が可能となる共通基盤は、今後のデジタル化において期待のできるサービスです。
マイナポータルでは法人設立ワンストップサービスも開始されました。2020年9月末にはe-Govの刷新も予定されています。またこの辺りについては、今後のテーマとして取り上げていきたいと思います。

著者プロフィール(野田宏明氏)

ITS社会保険労務士法人 代表
社会保険労務士。情報処理技術者(ITストラテジスト、プロジェクトマネージャ、アプリケー ションエンジニア)。
メーカー系IT企業にて人事業務のシステムコンサルタントに従事。大規模から中小規模まで多くの企業に対し、人事業務における業務コンサルティングからシステムの導入・運用保守まで一貫した対応を多数実施する。
その後、社会保険労務士として現職に至る。労務相談や教育講師の他、電子申請、給与計算などの領域にてITを活用した効率化をご提案する社会保険労務士として活躍中。
このコラムでは、社労士とシステムコンサルの視点にて、労務管理の様々なテーマを取り上げていきたいと思います。
http://www.it-sharoushi.jp/

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