会計と税務の相違点について①
目次
今回は、会計と税務の相違点①について解説いたします。
1.会計と税務で利益が異なる理由
会計における経費とは、利益を上げるために会社が支出した費用のことをいいます。一方で税務における経費とは、税金の計算上「損金」として計上できる費用のことをいいます。会計と税務は主な目的が異なるため、それぞれの利益額に差が生じることになるのです。
簡単にまとめると以下のような目的の違いがあります。
会計:正確な期間利益の計算
税務:税に対する公平性・担税力(租税を負担する能力)を計算
2.会計と税務で取り扱いが異なる費用
では、どのように会計と税務で取り扱いが異なるのかについて、今回は、減価償却費と引当金を例にして解説いたします。
2.1 減価償却費(建物を例に)
会計:減価償却については、あくまで「実態に則した使用年数」で計算して費用を計上すると考えられています。つまり、会社がその償却資産を何年使うつもりで購入したのかによって、減価償却する期間が変わってくるのです。
税務:一方、税務上の考え方は、会計と異なります。同じ資産を保有している企業間で計上できる減価償却費に大きな差が出てしまうと公正な課税ができませんので、償却資産の種類(RC建物や木造建物等)や用途(事務所や店舗等)に応じて償却期間が一律にあらかじめ決められている「法定耐用年数」を用いることになっています。税務上の減価償却費は、この法定耐用年数で減価償却していくため、実態に則した使用年数との間にズレが生じるのです。
では、仕訳例を使ってどのような違いが生まれるのか、また、その違いをどのようにして調整するのかを解説していきます。
仕訳例
当法人は、12月決算で1月1日にRCの建物を400,000円で新築した。
また税務上の法定耐用年数は47年、使用可能年数を20年とした。
会計(20年で償却)
減価償却費 20,000 | 建物 20,000 |
税務(47年で償却)
減価償却費 8,800 | 建物 8,800 |
このように会計と税務では、費用計上できる金額が異なります。会計上¥20,000の減価償却費を計上したとしても、税務上は、¥8,800しか減価償却費が認められないため、この差額¥11,200に関しては、法人税の別表4にて加算調整することになります。
減価償却費方法についての詳しい説明については、第14回および第15回のコラムをご参照いただければと思います。
2.2 引当金
引当金とは、「将来的に発生する可能性がある費用や損失に備えるためのお金」のことで、会計上は、当期の損失として繰入れします。
※【引当金の具体例】※
貸倒引当金/返品調整引当金/賞与引当金/修繕引当金/製品保証引当金/売上割戻引当金/債務保証損失引当金
上記のうち、税務上も損金として認められる可能性があるのは、現状のところ「貸倒引当金」となっております。また、損金算入される金額も大きく制限されております。具体的な金額は、法人の規模などにより異なりますのでご注意ください。
以上 会計と税務の相違点①に関する経理処理について取り上げました。
-
第49回損害賠償金の会計・税務② ~取り扱い(具体例)と消費税の取り扱いについて~
-
第48回損害賠償金の会計・税務①
-
第47回永年勤続表彰に関する経理処理について
-
第46回一括売買した土地・建物の内訳が不明な場合の按分について
-
第45回ストックオプション制度について②
-
第44回ストックオプション制度について①
-
第43回インボイス制度の実務③インボイス制度における税額計算
-
第42回インボイス制度の実務②インボイス制度における税額計算
-
第41回インボイス制度の実務①インボイスの記載事項 その3
-
第40回インボイス制度の実務①インボイスの記載事項 その2
-
第39回インボイス制度の実務①インボイスの記載事項 その1
-
第38回暗号資産(仮想通貨)に関する経理処理について④
-
第37回リース資産の減損会計について
-
第36回減損会計について
-
第35回事業譲渡に伴う資産除去債務の処理方法について 考え方①
-
第34回貸倒引当金についての会計税務
-
第33回ポイント引当金について
-
第32回特別損失に関する会計処理
-
第31回のれんに関する会計処理
-
第30回税効果会計①について
-
第29回自己株式に関する経理処理について②
-
第28回会計と税務の相違点について①
-
第27回生命保険に関する経理処理について(その4)
-
第26回生命保険に関する経理処理について(その3)
-
第25回役員賞与に関する法人税および消費税の取扱に関する処理①について
-
第24回補助金・助成金・給付金に関する法人税および消費税の取扱に関する処理について
-
第23回地代家賃に関する法人税および消費税の取扱に関する処理について
-
第22回切手代等に関する会計処理ならびに法人税および消費税の取扱に関する処理について
-
第21回仮想通貨に関する経理処理について③
-
第20回不動産取引に関する経理処理①について
-
第19回合併に関する経理処理①について
-
第18回リース取引に関する経理処理について①
-
第17回本店・支店取引に関する経理処理(決算)について②
-
第16回本店・支店取引に関する経理処理について①
-
第15回減価償却に関する経理処理について②
-
第14回減価償却に関する経理処理について①
-
第13回現金・小口現金に関する経理処理について
-
第12回自己株式に関する経理処理について
-
第11回手形に関する経理処理について①
-
第10回研究開発費に関する経理処理について
-
第09回仮想通貨に関する経理処理について②
-
第08回仮想通貨に関する経理処理について①
-
第07回有価証券に関する経理処理について(売買目的有価証券 編)
-
第06回資産除去債務に関する経理処理について
-
第05回生命保険に関する経理処理について(その2)
-
第04回生命保険に関する経理処理について(その1)
-
第03回繰延資産についての経理処理
-
第02回税込経理と税抜経理の処理の注意点~消費税の経理処理について~
-
第01回確定給付年金と確定拠出年金の会計処理について