減損会計について
目次
減損会計とは、収益性の低下によって投資額の回収が見込めなくなったことにより、固定資産の帳簿価額を臨時的に減額する会計処理を言います。
例えば、資産(または資産グループ)が使用されている営業活動から生じる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナス(過去2期から継続してマイナス)となる見込みであるような場合に適用します。
(1)減損会計の適用例
1例として、2020年第4四半期に㈱電通グループが海外事業におけるのれんに関して1403億円の減損損失を計上しました。その際のプレスリリースは以下の通りです。
https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/000382.html
(2)減損損失の処理仕訳
(例)減損の兆候が生じている固定資産(簿価1000万円)について、将来収益の割引前のキャッシュ・フローが200万円と見積もられ、減損の兆候が見られた。そのため、減損損失の認識を行うこととした。当該資産の時価は、250万円であり、将来キャッシュ・フローの現在価値は150万円である。
減損損失 | 7,500,000 | / | 減損損失累計額 | 7,500,000 |
相手科目は、減損損失累計額という科目を使います。減損処理を行った資産は、減損損失を差し引いた帳簿価額から残存価額を差し引いた金額を、減価償却することになります。
本設例の場合の減損損失額は、当該資産の時価が将来キャッシュ・フローの現在価値を上回っていることから、時価の250万円を回収可能額と判定し、帳簿価額の1000万円との差額
を損失計上します。
(3)減損損失の税務処理
税務上、減損損失の計上は求められていません。(損金不算入)
会計の目的は、正しく資産性のあるものを貸借対照表に計上することであるのに対し、税務上は課税の公平性の観点から、恣意性が介入しかねない損失の計上には消極的なためです。そのため、計上された減損損失は、別表4上で加算調整され、減損適用前の減価償却費分だけ減算調整されていきます。
また、税効果会計を適用する場合、減損会計は将来減算一時差異に該当します。当該将来減算一時差異は、減価償却計算を通して解消されることから、スケジューリング可能な一時差異として取り扱われます。
減損会計は、対象となる全ての固定資産について回収可能性を検討するわけではありません。将来キャッシュ・フローを見積る必要もあり、事務的にも時間もコストもかかります。公認会計士や税理士と処理をよく相談し、適用される際には上記のような処理をするようにしてください。
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