インボイス制度の実務①インボイスの記載事項 その3
目次
今回は適格簡易請求書について解説いたします。
インボイス(適格請求書)の記載事項
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等(消費税額及び地方消費税額に相当する金額の合計額をいいます。以下同じです。)
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
1.適格簡易請求書
原則的には、インボイスには交付を受ける側の事業者の氏名又は名称を記載することが要件となっており、これを満たさないものはインボイスとして認められません。
ただし、以下の事業に関しては、不特定多数の相手に適格請求書を発行することとなるため、実務上の煩雑さを考慮して、交付を受ける事業者の氏名又は名称の記載を省略することができます。これを適格簡易請求書と言います。
《対象となる事業》
①小売業
②飲食店業
③写真業
④旅行業
⑤タクシー業
⑥駐車場業(不特定多数の者に対する者に限る)
⑦その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業
このため、例えば飲食店やコンビニエンスストアで受け取るレシートや、時間貸し駐車場で受け取る領収書などについては、宛先が記載されていなくてもインボイスとして認められることとなります。
また、現実に相手方の氏名又は名称を把握することが困難であるか否かは問われておらず、上記の事業に該当さえしていれば適格簡易請求書を発行できるため、例えば宿泊者の氏名や住所を記録・保管する義務を負っている旅館業等であっても、適格簡易請求書を発行することは可能です。
2.適格簡易請求書の消費税額の記載方法
適格簡易請求書については、消費税額の記載方法についても簡素化が認められております。
具体的には、適格請求書であれば税率ごとに区分した消費税額の記載が必要ですが、適格簡易請求書においては、これに代えて適用税率を記載するのみでも良いこととなっております。
そのため、適格請求書においては、
8%対象合計 ○○○円 (内 消費税 ○○円)
10%対象合計 ○○○円 (内 消費税 ○○円) |
と記載する必要がありますが、適格簡易請求書においては、
8%対象合計 ○○○円
10%対象合計 ○○○円 |
のみの記載でも適正な書類として認められることとなります。
これまで3回に渡ってインボイスの記載事項について解説いたしました。いずれも執筆時点での情報となっておりますので、最新の制度概要については専門家にお問い合わせください。
(参考:国税庁インボイス制度Q&A 令和5年5月31日現在)
インボイス制度の関連コラムはこちら!
インボイス制度の実務①インボイスの記載事項 その1
インボイス制度の実務①インボイスの記載事項 その2
-
第50回支度金に関する会計処理と税務
-
第49回損害賠償金の会計・税務② ~取り扱い(具体例)と消費税の取り扱いについて~
-
第48回損害賠償金の会計・税務①
-
第47回永年勤続表彰に関する経理処理について
-
第46回一括売買した土地・建物の内訳が不明な場合の按分について
-
第45回ストックオプション制度について②
-
第44回ストックオプション制度について①
-
第43回インボイス制度の実務③インボイス制度における税額計算
-
第42回インボイス制度の実務②インボイス制度における税額計算
-
第41回インボイス制度の実務①インボイスの記載事項 その3
-
第40回インボイス制度の実務①インボイスの記載事項 その2
-
第39回インボイス制度の実務①インボイスの記載事項 その1
-
第38回暗号資産(仮想通貨)に関する経理処理について④
-
第37回リース資産の減損会計について
-
第36回減損会計について
-
第35回事業譲渡に伴う資産除去債務の処理方法について 考え方①
-
第34回貸倒引当金についての会計税務
-
第33回ポイント引当金について
-
第32回特別損失に関する会計処理
-
第31回のれんに関する会計処理
-
第30回税効果会計①について
-
第29回自己株式に関する経理処理について②
-
第28回会計と税務の相違点について①
-
第27回生命保険に関する経理処理について(その4)
-
第26回生命保険に関する経理処理について(その3)
-
第25回役員賞与に関する法人税および消費税の取扱に関する処理①について
-
第24回補助金・助成金・給付金に関する法人税および消費税の取扱に関する処理について
-
第23回地代家賃に関する法人税および消費税の取扱に関する処理について
-
第22回切手代等に関する会計処理ならびに法人税および消費税の取扱に関する処理について
-
第21回仮想通貨に関する経理処理について③
-
第20回不動産取引に関する経理処理①について
-
第19回合併に関する経理処理①について
-
第18回リース取引に関する経理処理について①
-
第17回本店・支店取引に関する経理処理(決算)について②
-
第16回本店・支店取引に関する経理処理について①
-
第15回減価償却に関する経理処理について②
-
第14回減価償却に関する経理処理について①
-
第13回現金・小口現金に関する経理処理について
-
第12回自己株式に関する経理処理について
-
第11回手形に関する経理処理について①
-
第10回研究開発費に関する経理処理について
-
第09回仮想通貨に関する経理処理について②
-
第08回仮想通貨に関する経理処理について①
-
第07回有価証券に関する経理処理について(売買目的有価証券 編)
-
第06回資産除去債務に関する経理処理について
-
第05回生命保険に関する経理処理について(その2)
-
第04回生命保険に関する経理処理について(その1)
-
第03回繰延資産についての経理処理
-
第02回税込経理と税抜経理の処理の注意点~消費税の経理処理について~
-
第01回確定給付年金と確定拠出年金の会計処理について