石田昇吾
第30回  投稿:2021.04.19 / 最終更新:2021.04.19

税効果会計①について

今回は、税効果会計①について解説いたします。

1.税効果会計とは

例えば、会計上費用として計上した項目であっても、法人税法上の費用(損金)とならない場合があります。企業会計と税務会計にはズレが生じているという事です。税効果会計とは、このようなズレを調整し、適切に期間配分する手続きのことです。
今回は、生じたズレが近い将来解消するもの(一時差異)の処理について解説します。なお、非上場の中小企業には、税効果会計は義務付けられていません。上場会社など一部の法人に適用される会計処理となります。
※税効果会計の適用義務がある会社は、以下の通りです。
・上場会社
・金融商品取引法の適用を受けている非上場会社。
・非上場会社でも会計監査人を設置している会社。

2.仕訳例

令和元年決算において、会計上、期末売掛金の回収可能性を検証し、貸倒引当金を¥60,000と見積もったうえで、引き当て計上した。ただし、法人税法上の貸倒引当金の繰入限度額は、¥10,000となっており、企業会計と税務会計で¥50,000のズレが生じてる。(将来減算一時差異50,000円)
なお、法定実効税率は令和元年度末では40%である(差異は上記以外にはないものとする)。

令和元年 繰延税金資産 20,000 法人税等調整額20,000

※50,000×40%=20,000

<解説>
上記の仕訳例で、貸倒引当金計上前の当期利益が100万円と仮定します。税務上は、貸倒引当金は1万円しか損金算入できませんから、100万円-1万円=99万円に対して、法人税の実効税率40%を乗じた\396,000が当期に納付すべき法人税額となります。
ただし、会計上は、貸倒引当金を6万円計上していますから、当期利益は、100万円-6万円=94万円として決算書を作ります。
法人税等調整額が貸方に¥20,000計上されることにより、会計上の法人税等を¥20,000減額する効果があります。
すると、決算書に表示される税金費用の額が、¥396,000-¥20,000=¥376,000となり、税引き前当期利益の40%とすることができます。

このように、税効果会計を適用することで、税務上の制約のために大きく(又は小さく)計算されてしまう法人税等を実行税率通りに計上することができます。
なお、あくまでも支払うべき法人税等は¥396,000であり、税効果会計を適用することで納付税額に有利不利は生じない点ご留意ください。
(※今回は、説明を簡略化するため、資産負債法ではなく、繰延法の様な手順で解説しました。)

以上 税効果会計に関する経理処理について取り上げました。

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