石田昇吾
第35回  投稿:2022.02.07 / 最終更新:2022.02.09

事業譲渡に伴う資産除去債務の処理方法について 考え方①

鈴与シンワートが提供する管理部門の業務ソリューション

1,資産除去債務とは

資産除去債務とは、取得した有形固定資産を法令上の義務により将来除去する必要があるとき、将来発生する合理的に見積もり可能な費用を表します。貸借対照表上、負債の部で計上します。賃貸物件の原状回復費用などがこれにあたります。

 

資産除去債務に関する会計基準では、以下のように定義されています。

 

・有形固定資産の取得や建設、開発、通常の使用で生じるもの

・除去に関連し法律や契約で要求される法律上の義務や準ずるもの

・売却や廃棄、リサイクルなどの資産の除去に該当すること

 

①会計処理は、

建物付属設備 10,000 資産除去債務 10,000

とされ、

 

②決算時には、

利息費用 100 資産除去債務 100
減価償却費 2,000 建物付属設備 2,000

と処理されます。資産除去債務を期末の現在価値で表示するため、費用である利息費用を計上します。また、契約終了期間などに資産除去債務が0円となるよう、減価償却費で毎期に費用配分します。

 

 

2,事業譲渡があった場合の資産除去債務

事業譲渡により譲り受けた固定資産の資産除去債務に関する処理方法については、各々の法人又は監査法人によって考え方が複数存在いたします。

今回は、企業結合時に資産除去債務を再計算するパターンをご紹介いたします。

 

(例)A社はB社の1部門を事業譲渡により120万円で譲り受けた。この時、譲り受けた部門の財務内容は以下の通りである。

・建物附属設備 100万円
・敷金 5万円

 

上記建物附属設備の資産除去債務は、10万円と見積もられ、譲受時までの経過期間を考慮すると、6万円となる。

 

①会計処理

(仕訳)

建物付属設備 1,000,000 普通預金  1,200,000
敷金 50,000 資産除去債務 100,000
建物付属設備(資産除去債務) 60,000
のれん 190,000

 

この場合、資産に計上される建物付属設備勘定(資産除去債務部分)は規則性償却のために計算擬制的に存在しているもの(そもそも純粋な資産性がない)なので、譲受時までの時の減価分を加味します。結果、その減価分は前の会社で擬制償却されているので、貸方の資産除去債務との差額は、計上するところがないので、会計上ののれんで調整する処理になります。

 

②税務上の考え方

ただし、税務上は、資産除去債務という概念自体が存在しえないので、以下の仕訳を切ることになります。

 

(税務上の仕訳)

建物付属設備 1,000,000 普通預金 1,200,000
敷金 50,000
資産調整勘定 150,000

 

つまり、会計上ののれんと税務上ののれんである資産調整勘定との金額に差が出ることとなり、この差額には税効果会計を適用するのが通常です。

 

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