暗号資産(仮想通貨)に関する経理処理について④
目次
2022年7月に一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)及び一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)より、2023年度税制改正に当たって、要望書が提出されました。
金融庁と経済産業省ではこれを受けて、暗号資産にかかる法人税の課税方法について一部を見直す方針を固めており、今後本格的に議論されていく見込みです。
今回は、この見直しについて解説致します。
1.2023年度税制改正では何が見直される?
今回の改正では、暗号資産を発行する企業が自ら保有する自社発行暗号資産について、期末に含み益が発生していた場合でも、課税対象からは除外されるようにする方針で議論が進められております。
2.今回の見直しの経緯
これまでは、取得の形態にかかわらず、期末において保有する暗号資産については時価による評価を行い、含み益に対して法人税の課税が行われていました。
一方で、資金調達の新たな手段として自社で暗号資産を発行するという形を考えた際に、仮に発行した暗号資産を一部でも売却せず自社で保有していた場合、「活発な市場が存在する暗号資産」に該当してしまうと、現金収入がないのに法人税だけ課税されてしまうという状況に陥っていました。暗号資産を発行した時点では期末に時価がいくらになっているかの予想をすることは相当困難であり、予想外に値上がりしてしまった場合、納税資金を準備できなくなる恐れもありました。
このことが国内における有力なスタートアップの登場や暗号資産市場の活発化、ブロックチェーン技術の開発における国際的な競争力の獲得などを妨げることになるのではという懸念が高まっており、今回の見直しにつながりました。
3.会計上の取り扱いと税務上の取り扱いについて
今回の見直しは税務上の取り扱いについてのものであり、会計上の取り扱いの見直しではないため、注意が必要です。つまり、時価評価を行うことの是非ではなく、時価評価により発生した含み益について課税することの是非が見直されているということになります。
そのため、今回の改正が実行されれば、会計上はあくまでも保有暗号資産全てについて期末に時価評価を行った上で、税務上は自社発行の暗号資産に限り、当該含み益を課税対象から除外する、という扱いになると考えられます。現行の有価証券の取り扱いのように、保有目的によって処理方法が異なることになります。これは、暗号資産市場の広がりとともに様々な目的で暗号資産が発行、保有されるようになったことを考えれば、必然的な流れです。
今回は自社発行か否かという点の改正のみですが、今後も暗号資産が広く浸透するようになれば、現行の有価証券の評価方法のように、さらに細かく保有目的に応じて区分することが必要になってくるでしょう。
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