インボイス制度の実務③インボイス制度における税額計算
目次
今回は、インボイス制度導入前と導入後における免税事業者から、商品の仕入れ在庫の処理の違いについて解説いたします。(インボイス制度導入は令和5年10月1日からになります。)
〈例題〉当社(小売業)は、免税事業者から国内にある商品(家具)30個を仕入れ、その対価として330万円(11万円×30個)を支払いました。当社は、税抜経理方式で経理しており、この商品のうち10個は、期末時点で在庫として残っています。インボイス制度導入前と後における仕入時と決算時の仕訳は以下の通りになります。
インボイス制度導入前(令和5年9月まで)
仕入時の仕訳
仕入 | 3,000,000 | / | 現金預金 | 3,300,000 |
仮払消費税 | 300,000 |
*3,300,000×10/110=300,000
決算時の仕訳
商品 | 1,000,000 | / | 仕入 | 1,000,000 |
インボイス制度導入後(令和5年10月~令和8年9月までの経過措置期間)
①仕入時の仕訳
仕入 | 3,060,000 | / | 現金預金 | 3,300,000 |
仮払消費税 | 240,000 |
*3,300,000×10/110×80%=240,000
①決算時の仕訳
商品 | 1,020,000 | / | 仕入 | 1,020,000 |
インボイス制度導入後(令和5年10月1日以降)は、税務上は適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについて仮払消費税等の額はないこととなるため、仮に法人の会計において仮払消費税等の額として経理した金額がある場合には、その金額を取引の対価の額に算入して、法人税の所得金額の計算を行うことになります(新経理通達14の2)。ただし、激変緩和措置で
・令和5年10月1日~令和8年9月30日までは80%
・令和8年10月1日~令和11年9月30日までは50%の控除が認められるため、該当部分を仮払消費税等として処理します。
もしくは、以下のような処理も考えられます
②仕入時の仕訳
仕入 | 3,000,000 | / | 現金預金 | 3,300,000 |
仮払消費税 | 240,000 | |||
雑損失 | 60,000 |
*3,300,000×10/110×80%=240,000
②決算時の仕訳
商品 | 1,000,000 | / | 仕入 | 1,000,000 |
この雑損失の額は、本来は商品の取得価額に算入すべきものですが、期中に販売した商品に係る部分の金額は売上原価として当該事業年度の損金の額に算入されますので、期末に在庫として残った商品に係る分の金額(20,000円)を当該事業年度の所得金額に加算することになります。
インボイス制度導入後(令和8年10月1日~令和11年9月30日までの経過措置期間)
①仕入時の仕訳
仕入 | 3,150,000 | / | 現金預金 | 3,300,000 |
仮払消費税 | 150,000 |
*3,300,000×10/110×50%=150,000
①決算時の仕訳
商品 | 1,050,000 | / | 仕入 | 1,050,000 |
もしくは
②仕入時の仕訳
仕入 | 3,000,000 | / | 現金預金 | 3,300,000 |
仮払消費税 | 150,000 | |||
雑損失 | 150,000 |
*3,300,000×10/110×50%=150,000
②決算時の仕訳
商品 | 1,000,000 | / | 仕入 | 1,000,000 |
資産の取得価額と雑損失についての考え方は変わりません。
インボイス制度導入後(経過措置期間終了後)
仕入時の仕訳
仕入 | 3,300,000 | / | 現金預金 | 3,300,000 |
決算時の仕訳
商品 | 1,100,000 | / | 仕入 | 1,100,000 |
経過措置終了後に関しては消費税等課税対象外として処理することになるので、仮払消費税等の科目は使用しません。
〈参考資料〉「令和3年改正消費税経理通達関係Q&A」(令和3年2月国税庁)
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