美術品に関する会計処理と税務
企業が、絵画などの美術品を購入した際の会計処理について解説いたします。
1.美術品とは何か
美術品とは、具体的には例えば以下のものが該当します。
古美術品・古文書・出土品・遺物等・絵画、彫刻、工芸品、書画、骨とう
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2.勘定科目
原則的には、「工具器具備品」として処理することになります。ただし、取得価額(運送費等の付随費用を含む。)が10万円未満の場合には、税法の基準により「消耗品費」として処理するのが一般的です。
3.減価償却資産かどうか
減価償却とは、時の経過によって資産の価値が減少する部分を費用化するための科目です。したがって、その美術品が時の経過によって価値が減少するのかどうかで減価償却資産に該当するか否かが決まります。
国税庁からは、以下の基準が示されております。(以前存在していた美術年鑑基準は廃止されました。)
「2015年1月1日以後に取得した美術品は、取得価額が1点100万円未満であれば原則として減価償却することが出来る。」
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上記の通達により、1点100万円以上の美術品は原則として、減価償却することができません。
4.3、の例外
ただし、100万円以上の美術品であっても、時の経過によって価値が減少することが明らかであれば、減価償却することが可能です。具体的には、以下の3つが示されています。
① 会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。 (ただし、ガラスケース等に収納されているなどの配慮がされている場合を除く。) ② 移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること。 ③ 他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。 |
5.耐用年数
美術品を減価償却する場合の耐用年数について、耐用年数表の器具備品「11.前掲以外-その他-その他」の5年を適用しているケースをしばしば目にしますが、正しくは、
耐用年数表の「器具及び備品」の「室内装飾品」を適用して、以下の通りとします。
・室内装飾品のうち主として金属製のもの・・・15年
・室内装飾品のうちその他のもの・・・・・・・8年
例えば、絵画であれば、上記のより、耐用年数8年を適用するのが妥当と考えられます。
以上 美術品の処理について取り上げました。
国税庁より、100万円基準と言う金額基準が示されましたが、「時の経過によって価値が減少することが明らか」かどうかによって取り扱いが決まるため、最終的には個々の事例ごとに判断することになります。その都度、顧問税理士へお問い合わせください。
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