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第26回 15年06月更新

休職中の社会保険料の取扱いと休職規定サンプル

近年、会社を休職する社員が増加傾向にあります。会社は、社員が私傷病での休職をしないように健康管理を行っていく必要がありますが、社員が休職せざるを得ないときには、社会保険料をどのように徴収するかなどの問題が発生します。
今回は、休職に関する実務的な取扱いについてみていきましょう。

<休職について>

社員が、病気や怪我などで長期にわたって会社を休む場合、その社員を「休職」という扱いにする会社が多いようです。休職は、労働基準法などの法律に基づく制度ではないので、会社は就業規則や給与規程などで、休職の期間や復職に際してのルール、休職期間中の給与などについて明確に定めておく必要があります。

どのような場合に休職にするか、休職することができる従業員の範囲はどこまでか、休職する場合はどのくらいの期間にするのか、などの内容については、会社が独自に決めることができます。
ただし、ここでいう病気や怪我に「労働災害」や「通勤災害」によるものは含まれません。労働災害や通勤災害で仕事を休む場合の取扱いは、「労働基準法」や「労働者災害補償保険法」の定めにしたがうことになります。

まず、給与については休職中を「有給」にするか「無給」にするかを明確にしなければなりません。一般的には、休職期間は無給としている会社が多いようです。これは「ノーワーク・ノーペイ」の原則に沿ったものなので、無給であっても法的な問題はありません。
給与は無給であっても、私傷病により休職している社員本人には、医師の証明を受けて、給与のおよそ3分の2に当たる額が健康保険から「傷病手当金」として支給されます。もちろん、「有給」であれば、この傷病手当金の支給を受けることはできません。

<社会保険料の取り扱い>

休職中の給与の取り扱いで最も注意をしなければならないのは、毎月給与から控除するものをどのように扱うかという点です。
給与が支給されていれば、社会保険料やその他親睦会費なども控除することができますが、無給にする場合には、当然に給与から控除できません。
とくに社会保険料(健康保険・厚生年金保険・介護保険)は、休職で給与の支給がなかったとしても毎月納付しなければなりません。ご存知の通り、これらの社会保険料は、会社と社員本人が折半で負担しています。社員本人負担分は給与から控除して、会社負担分と一緒に行政機関や健康保険組合へ納付します。ほとんどの会社は口座振替を利用しており、その月の全社員分の保険料がまとめて引き落とされます。そのため、休職者1人の自己負担分を徴収していなくても、会社がその分も負担した形のまま、気づかずに何か月も経ってしまうこともあるようです。

1か月分なら大してことがなくても、積み重なると本人負担分の合計額も相当になります。休職期間中は、休職する社員の収入も少なくなるので、会社で立て替えておくこともありますが、休職期間が長引くと会社の負担も大きくなりますし、何より後でまとめて返済する社員が大変になります。休職が長引きそうであれば、できれば毎月、長くても3か月や半年ごとに、休職中の社員から振込や現金で会社に支払ってもらったほうがお互いに良いようです。
なお、就業規則や給与規程に休職時の給与の取扱いについて記載がない場合は、原則として過去の同じような事例に沿った扱いをしなければなりません。過去の事例がない場合は、ノーワーク・ノーペイの原則に従って休んでいる期間の給与について支払う必要はありませんが、社会保険料の徴収をはじめ、さまざまな扱いについては、基本的に本人との話し合いにより進めて行くことになります。
取扱いを明確にして、公平に運用するためには、給与規程等で休職中の社会保険料の本人負担分を、どのタイミングで本人から会社に支払ってもらうか定めておき、休職する社員に理解してもらえるようにしておきましょう。

<就業規則の休職規定例>

(休職)
従業員が次の事由に該当するときは、所定の期間休職とする。
(1)私傷病による欠勤が継続・断続を問わず、1ヶ月を超え、なお療養を継続する必要があると認められたとき(療養休職)  3ヶ月
(2)私傷病により完全に業務の遂行ができず、その回復に相当の時間を要すると認められるとき  3ヶ月
(3)前各号の他、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき  必要と認めた期間

(休職期間中の取り扱い)
1.休職期間中は原則として無給とする。
2.休職により、給与がマイナスになった場合は、翌月10日までに不足額を精算しなければならない。
3.従業員は、療養休職の場合は、健康保険の傷病手当金を受けるものとする。
4.傷病による休職者は、療養に専念し、定期的に会社の認める、あるいは指定する医師の診断を受け、その経過を1ヶ月ごとに会社に報告しなければならない。
5.休職期間は、勤続年数に含めない。

(復職の取り扱い)
1.休職期間満了前に、休職事由が消滅した場合で、会社が復職可能と認めた場合は復職させる。
2.療養休職の者が、休職期間満了前に復職を申し出たときは、会社が指定する医師の診断をもとに、復職の当否を会社が決定する。
3.会社は、休職前に従事していた業務以外の業務への復職を命ずることがある。
4.休職者が復職した月の給与は、復職日から日割計算で支給する。

(休職期間の通算)
復職の取り扱いの定めに従い復職した場合で、復職後12ヶ月以内に同一または関連する傷病あるいは類似の症状により休職をする場合は、前後の休職期間を通算する。

(休職事由が消滅しない場合の取り扱い)
休職期間満了までに休職事由が消滅しない場合は、休職期間満了をもって自然退職とする。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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