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第47回 17年03月更新

管理職と管理監督者の違い

最近、「働き方改革」や「時間外労働時間の上限設定」などのニュースが、連日のように報道されています。これから数年間で、雇用に関するさまざまなルールが変更されていくと予想されます。これからは、これまで以上に短い労働時間で大きな成果を出すことが求められる時代になってくるでしょう。
これらの改革が進むと、業務全体の量を見直すか、人員を増やさない限り、残業代を支払う必要のない管理職に仕事が集中してしまうことも考えられます。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。

それは、「自社の管理職が本当に“残業代を支払う必要のない”管理監督者なのか?」という問題です。労働基準法上の「管理監督者」と認められなければ、会社内で管理職として扱っていたとしても、残業代や休日出勤手当を支払う必要があります。
今回は、労働基準法上の管理監督者の要件について、みていきたいと思います。

はじめに

これまで多くの会社の経営者や人事担当者と、残業時間や残業手当について話をしてきました。その際によく言われるのは、「管理職だから残業手当は必要ないですよね?」という質問です。
確かに、労働基準法の「管理監督者」であれば残業手当を支払う義務はありません。しかし、会社内で管理職としての地位にある従業員でも、労働基準法上の「管理監督者」には当てはまらない場合もあります。

例えば、飲食業の会社で「店長」を管理職と位置づけていても、実際に労働基準法上の判断基準からみて、十分な権限もなく、相応の待遇等も与えられていないのであれば、「管理監督者」には当たりません。
この場合は、一般の従業員と同じように残業手当が支払われていなければ、労働基準法違反になります。

また、「管理監督者」であっても、労働基準法により保護される労働者に変わりはありません。労働時間や休日の規定が適用されないからといって、何時間働いても構わないということではありません。管理監督者であったとしても、健康を害するような長時間労働をさせないマネジメントが必要です。

管理監督者とは

国は管理監督者の定義に関する通達を昭和63年に出しています。
1.管理監督者は、部長や工場長等労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意味であり、名称にとらわれず実態に即して判断するべきものである。
2.管理監督者の範囲を決めるに当たっては、資格(経験、能力等に基づく格付)や職位(職務内容と権限に応じた地位)の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要がある。
3.管理監督者であるかの判定に当たっては、前記1と2のほか、賃金等の待遇面においても無視しえないものである。この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比べて優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要がある。なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといっても、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではない。

通達なので多少読みにくい部分もありますが、上の3つの条件をすべてクリアすれば、管理監督者として認められることになります。
それでは、この通達をもう少し具体的に整理してみましょう。

1.労働時間や休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容と権限を有していること

たとえば、採用における決定権や、昇格や昇給、賞与、人事考課といった賃金などの労働条件の決定に際し、経営者と一体となって決定する立場にあることが求められます。
これらの権限を持っていない場合は、管理監督者とは言えません。

2.労働時間等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること

労働条件の決定その他の労務管理について、経営者と一体的な立場にあるというためには、経営者から重要な責任と権限を委ねられている必要があります。
「課長」「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項についてさらに上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような従業員は管理監督者とは言えません。

3.現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること

管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請される者を指すので、労務管理においても一般労働者と異なる立場にある必要があります。
たとえば、遅刻や早退があった場合に賃金を控除されているなど、労働時間について厳格な管理をされているような場合は管理監督者とは言えません。

4.賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

管理監督者は、その職務の重要性から、定期給与、賞与その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされている必要があります。
少なくとも年収で見たときに、一般労働者より少ない場合は管理監督者とは言えません。

 

繰り返しになりますが、会社内で管理職とされていても、これらの判断基準により総合的に判断した結果、労働基準法上の管理監督者に該当しなければ労働時間等の規制を受けることになります。
この場合は、残業や休日出勤に対する時間外割増賃金や休日割増賃金の支払いが必要になります。
なお、管理監督者であったとしても、深夜に関する規定は除外されません。午後10時から午前5時までに働いた分の深夜割増賃金については支払う必要がありますので、注意してください。

近年、未払い残業代の支払いを求めて、従業員が労働審判や訴訟を起こすことが多くなりました。管理監督者と認められなかった管理職は、おそらく多くの時間外労働や休日勤務をしていたと考えられます。
未払い残業は2年間遡って請求をすることができるため、支払い金額が多額になることは容易に推測できます。
トラブルになる前に、自社の管理職が労働基準法上の管理監督者に該当するか、今一度確認し、その在り方を見直すことをお勧めします。

 

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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