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第54回 17年10月更新

働き方改革を実現するために(その3)

マスコミ等で頻繁に報道されるようになった影響からか、「労働時間を短縮して生産性を向上させたい」という相談を多く受けるようになりました。経営者の中には、「生産性を上げるためには新しい機械を導入したり、人工知能(AI)を活用したりしなければ解決しない」と考えている方が少なくありません。
もちろん、業種や従業員数によっては、そのような機械やシステムの導入が必要になることもあります。しかし、費用や時間をあまりかけずに、今日から生産性の向上のために実践できる項目も存在します。
そのヒントにするため、前々回から内閣府・仕事と生活の調和推進室が発行している「ワークライフバランスの実現に向けた10の実践」を紹介しています。これには当たり前のことが書いてありますが、すべてを実践できている会社はそれほど多くないのではないでしょうか。

生産性の向上は、一朝一夕で達成できるものではありません。そのため、できることからコツコツと実践をしていくことが重要になります。前回までに5項目の紹介をしましたので、今回はその続きを紹介したいと思います。

<6.業務分担の適正化>

業務の流れ自体に、業務の効率性を阻害する要因が隠されている場合があります。これは、業務分担の問題とかかわってきます。
例えば、本来は作業者の裁量で意思決定ができるような内容の業務であっても、「上長の承認が必要なために上長の会議終了を待たなければならない」ということがあります。これは、本来管理職が行うべきではない業務を管理職が引き受けてしまっているという可能性があります。

また、店舗型の事業所では、アルバイトやパートタイム労働者が多く勤務をしているため、管理職(店長)にさまざまな業務が集中しがちです。改善策としては、アルバイトやパートタイム労働者の中でリーダーを決めて、店長が行っている業務の一部を分担するといったことが考えられます。
また、そのようなアルバイトリーダー等の職務に就いた従業員に対して手当等を支給すると、モチベーションの向上を期待することができ、より積極的に会社に貢献してくれる可能性もあります。

「以前から管理職が行ってきた仕事だから」といった理由で、効率的か否かを判断せずに業務を継続するのではなく、社内の常識が本当に正しいのか疑う目が必要になってくるでしょう。
業務分担の適正化を図るためには、管理職の引き受けるべき業務を明確化し、業務を平準化する必要があります。業務の流れの各段階で、必要となる作業や担当者を業務分析により把握し、「だれが」「どのタイミングで」「どの作業を」担当するのかを再検討することも有効です。

事例紹介

プロジェクトの進捗管理は、現場の管理職に任せることにした。マイルストーンを置きながら進捗を管理していく中で、今までは作業の遅れを残業でカバーしていたが、その作業は遅れても次の工程・納期に影響しないことがわかった。
その作業を1週間遅らせるとか、場合によっては最終納期を守るために人員体制を早めに組み直すなど、柔軟な対応ができるようになった。

<7.担当以外の業務を知る>

業務負荷が特定の人に集中しないように業務分担の平準化を行うためには、各従業員にある程度広い業務を担当させ、かつ適切な意思決定ができるようにする必要があります。
特に、管理職の業務を部下に移譲する際には、同時に裁量権の移譲も行う必要がある場合が多いでしょう。こうした権限の委譲を行う前提として、各従業員が、主たる担当業務の周辺の業務に関する知識やスキルを身に着けておく必要があります。

これは、サッカーやバスケットボールの試合で使われる「マンツーマンディフェンス」ではなく、「ゾーンディフェンス」のイメージに近いと思います。
ほとんどの方はご存知だと思いますが、マンツーマンディフェンスは、自分がマークする相手が決まっているため、その人だけ確実に見ていれば失点を防ぐことができます。一方のゾーンディフェンスは、自分の担当領域に入って来た相手を見なければならないので、コミュニケーションをしっかりとらないと、「自分の領域」と「仲間の領域」の境界線でミスが起こりがちです。
職場においても、多能工化を進めるのであれば、日ごろのコミュニケーションをしっかりとりましょう。コミュニケーションが不十分だと仕事が他人任せになってしまい、結果的にクレームにつながる可能性があります。
「多能工化」が実現できれば、業務負荷の偏在を解消することができます。また、現場での裁量が増すことで、意思決定にかかる時間が短縮し、組織全体の業務効率が向上するメリットも期待できます。

事例紹介

直接部門の多能工化を進めることで、急に人員不足が生じたときや、生産量の変動があったときに備えている。このよう人材の柔軟性を高めることが、休暇の取得しやすさにもつながっている。
同様に間接部門でも、生産管理を担当する部門から多能工化を進めている。

事例紹介

多能工化は、「その人しかできない業務をなくす」という業務の効率運営面と、「さまざまな仕事ができる人を育てる」という教育面の2つの意味があり、部内で業務のローテーションを積極的に行っている。

 

今回は、「業務分担の適正化」と「担当以外の業務を知る」の2つを紹介しました。これらを実現して生産性を向上させるには、これまでの社内の常識を一度疑って、誰がその仕事を行った方が真に効率的なのか、業務の棚卸しを行う必要があります。

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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