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第61回 18年05月更新

会社が行う健康診断~その2

前回より、労働安全衛生法で定められている会社が実施すべき健康診断を順次取り上げています。前回は、雇入れ時の健康診断と定期健康診断について説明しました。
今回は、「特定業務従事者の健康診断」と「海外派遣労働者の健康診断」についてみていきたいと思います。

<特定業務従事者の健康診断について>

「特定業務」の健康診断は、文字だけを読むとあまりなじみがないような感じがするかもしれません。しかし、特定業務の内容をつぶさにみていくと、特殊な業務を取り扱っていない会社であっても、実は特定業務に該当している従業員がいる可能性を秘めています。

労働安全衛生法に定められているルールでは、会社は次の項目のいずれかの業務(特定業務)に従事する労働者に対しては、当該業務への「配置替えの際」と「半年ごと」に健康診断を行なわなければなりません。
健康診断の項目は、前回説明した定期健康診断と同じです。

それでは、特定業務の種類をみていきましょう。なお、「14) その他厚生労働大臣が定める業務」については、現在定められていません。

1) 多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務
2) 多量の低温物体を取り扱う業務および著しく寒冷な場所における業務
3) ラジウム放射線、X線その他の有害放射線にさらされる業務
4) 土石、獣毛等の塵埃または粉末を著しく飛散する場所における業務
5) 異常気圧下における業務
6) 削岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
7) 重量物の取り扱い等重激な業務
8) ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
9) 坑内における業務
10) 深夜業を含む業務
11) 水銀、ヒ素、黄リン、フッ化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、苛性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
12) 鉛、水銀、クロム、ヒ素、黄りん、フッ化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉塵を発散する場所における業務
13) 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
14) その他厚生労働大臣が定める業務

これら特定業務のうち、特殊な業務を取り扱わない会社でも該当する可能性があるのは、「10) 深夜業を含む業務」です。たとえば、飲食店やコンビニや病院、介護事業所など、午後10時から朝5時までの深夜に業務を行っている会社は多く存在しています。
たまに残業が深夜になることがあるというケースでは特定業務に該当しませんが、労働契約の内容に深夜業が含まれている場合は特定業務に該当します。
たとえば、コンビニの業務で、1週間の中で月曜日は深夜勤務、それ以外は日中の勤務といった契約の場合は、深夜勤務は週1回だけしかありませんが、労働安全衛生法上は特定業務に該当することになります。
深夜業の回数や頻度は関係ありませんので、この場合は特定業務の健康診断の対象者となり、当該業務への「配置替えの際」と「半年ごと」に健康診断を行なわなければなりません。

<海外派遣労働者の健康診断>

昨今では、海外とビジネスをする会社は増加の一途をたどっています。従業員を海外へ派遣する場合は、一般的な雇入れ時の健康診断や定期健康診断以外にも、特別に健康診断を実施しなければなりません。

ここでいう「海外派遣労働者」とは、業務命令によって日本国外の業務に「6ヶ月以上」従事する労働者を指します。この場合の業務遂行の形態は、転籍、在籍出向、移籍出向、長期出張等が考えられます。
「出張だから海外派遣労働者には該当しない」ということではありません。名称にとらわれず、6ヶ月以上海外で勤務させる場合は「海外派遣労働者の健康診断」を実施するようにしましょう。

海外派遣労働者には、「6ヶ月以上海外に派遣しようとするとき」と「6ヶ月以上海外で勤務した労働者が帰国し、国内業務に就かせるとき(一時的に帰国し、業務に就かせるケースを除く)」の両方で特別に健康診断を実施する必要があります。
実施しなければならない検査項目は、定期健康診断と同じですが、医師が必要であると認めた場合は、下記の検査項目をプラスして健康診断を行うことになります。

海外に派遣しようとするとき 海外から帰国したとき
腹部画像検査 腹部画像検査
血液中の尿酸の量の検査 血液中の尿酸の量の検査
B型肝炎ウイルス抗体検査 B型肝炎ウイルス抗体検査
ABO式及びRh式の血液検査 糞便塗抹検査

 

なお、海外へ労働者を派遣する前には、健康診断とあわせて「予防接種」を受けさせなければならないことがあります。予防接種の種類は、派遣をする地域によって異なります。また、予防接種は「6ヶ月以上」の派遣に限るものではなく、ごく短期間の出張でも必要になることがあります。
詳しくは「厚生労働省検疫所(FORTH)」に記載されていますので、確認してください。参考までに、このうちの一部を抜粋して紹介します。

予防接種の種類 対象
黄熱 感染リスクのある地域に渡航する人
A型肝炎 途上国に中・長期(1ヶ月以上)滞在する人。特に40歳以下
B型肝炎 血液に接触する可能性のある人
破傷風 冒険旅行などで怪我をする可能性の高い人
狂犬病 犬やキツネ、コウモリなどの多い地域に行く人で、特に近くに医療機関がない地域に行く人。動物研究者など、動物と直接接触する人
ポリオ 流行地域に渡航する人
日本脳炎 流行地域に長期滞在する人(特に東南アジアで豚を飼っている農村部)

 

予防接種の種類によっては、複数回の接種が必要なものもあります。海外派遣が決定したら、派遣日から逆算し、余裕をもって予防接種のスケジュールを決めるようにしましょう。

 

前回と今回の2回に分けて、会社が実施すべき健康診断について紹介をしてきました。労働安全衛生法では、このほかにも「給食従業員の検便」や「有害業務従事者に対する特殊健康診断」などもあります。
「うっかり従業員に健康診断を受診させていなかった」ということのないように、「特定業務」や「海外派遣労働者」には、定期健康診断以外にも健康診断を実施する必要があることを改めて認識していただければと思います。

 

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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