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第93回 21年03月更新

70歳までの雇用延長~その1

2021年4月から、高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業確保措置を講じることが『努力義務』となります。あくまでも努力義務なので、定年を70歳に引き上げなければならないというわけではありません。
しかし、退職者が年金のみを受給して生活していくことがなかなか困難な状況にあるため、高齢者も年金を受給しつつ就業するという流れは今後加速していくものと考えられます。
今回は、改正内容についてみていきたいと思います。 

高年齢者雇用確保措置について

現在は、65歳までの雇用確保措置(高年齢者雇用安定法第9条)によって、定年を65歳未満に定めている事業主は、次のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じる義務があります。

① 65歳までの定年引き上げ
② 定年制の廃止
③ 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入

③の65歳までの継続雇用制度を導入している場合は、原則として希望者全員が対象となります。
例外として、2013年4月1日までに労使協定により対象者の基準を定めていた場合は、基準に応じて対象者を限定することができます。労使協定により再雇用する者の基準を定めている場合は、2025年3月31日までに、基準を適用できる年齢を段階的に引き上げていく必要があります。
なお、継続雇用する先は、自社か特殊関係事業主に限定されています。特殊関係事業主は、自社と次のような関係にある事業主を指します。

・子法人等
・親法人等
・親法人等の子法人等
・関連法人等
・親法人等の関連法人等

70歳までの就業確保措置について

現在は、65歳までの雇用確保が義務となっています。今回の法改正でこの年齢が変わることはありません。
冒頭にも書きましたが、65歳から70歳までの就業確保措置については、努力義務です。就業確保措置は、次の5つのいずれかになります。

① 70歳までの定年引き上げ
② 定年制の廃止
③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

① 70歳までの定年引上げ
70歳まで定年の年齢を引き上げるということになります。最近では、建設業などで検討する会社が増えているようです。

定年制の廃止
読んで字のごとく、定年制を廃止することです。定年廃止のメリットは、高度なスキルを持った従業員をそのまま雇用することができることや、人手不足の解消につながることなどがあります。
デメリットは、企業の新陳代謝が鈍くなり、イノベーションが起こりにくくなること、退職時期が見通せないため、人員計画が難しくなることなどが考えられます。

③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
65歳以降は、特殊関係事業主以外の他社で継続雇用する制度も可能です。
継続雇用制度の場合、1年ごとの有期労働契約を締結するのが一般的です。お気づきの方もいらっしゃると思いますが、有期労働契約の場合、無期転換ルールの問題が生じます。
無期転換ルールは、平成25年4月1日に改正労働契約法により規定されました。このルールとは、同一の使用者(会社)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルールのことです。
例えば、契約期間が1年の場合は、5回目以降の更新後の契約期間中に、無期転換の申込権が発生します。

(厚生労働省 有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック)

(厚生労働省 有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック)

有期契約労働者が使用者(会社)に対して無期転換の申込みをした場合、使用者は断ることができず、その契約の終了日の翌日に無期労働契約が成立することになります。
勘違いをされている方がたまにいらっしゃるのですが、無期転換とは「会社が有期契約労働者から無期転換の申し込みをされた場合は断ることはできないが、正社員になるわけではない」ということです。給与や待遇等の労働条件については、労働協約や就業規則、個々の労働契約で別段の定めがある部分を除いて、直前の有期労働契約の際の労働条件、例えば時給制のパートタイマーであれば時給制のパートタイマーであることがそのまま引き継がれます。

このルールには、例外が設けられており、一定の手続きを経た次のいずれかの有期契約労働者の方は、無期転換申込権が発生しません。

①専門的知識等を有する有期契約労働者(「高度専門職」と呼ばれています。)
②定年に達した後、引き続いて雇用される有期契約労働者(継続雇用の労働者)

これらの特例は、都道府県労働局長の認定を受けなければ、適用されません。高度専門職と継続雇用の労働者の両方を例外とする会社は、それぞれ別の計画の認定を受けることが必要です。

70歳までの継続雇用制度で定年を延長した場合も、都道府県労働局長の認定を受けた事業主(特殊関係事業主を含む)における継続雇用の労働者は、定年後に雇用される期間は無期転換申込権を行使できません。
一方で、特殊関係事業主以外の他社で継続雇用される場合には、特例の対象にならず、無期転換申込権が発生しますので注意してください。

 

今回は、高年齢者雇用安定法の法改正の一部を紹介しました。次回も、引き続き高年齢者雇用安定法改正について説明したいと思います。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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