就業規則と給与計算の関係
目次
給与計算業務で計算ミスが生じやすいケースには、欠勤控除や入退社時の日割り計算等があります。とくに、給与計算を行う担当者の退職などで担当者が変わったときは要注意です。引き継ぎが不十分だったために計算方法が曖昧になり、これまでとは違った方法で欠勤控除等を行ってしまうケースなどが考えられます。
このようなことが発生しないようにするためには、誰が見ても計算方法がわかるように就業規則を整備する必要があります。給与計算のルールが規程でしっかり明記されていれば、給与計算担当者の変更等によって混乱が生じることもありません。
給与ソフトを使用すれば、欠勤控除や日割控除は自動的に計算してくれますので計算ミスが生じにくくなります。給与計算のミスが、会社への不信感への引き金になることもあるので、計算ミスを起こさない体制作りが重要になります。
今回は、給与計算にはなぜしっかりとした就業規則が必要なのかについて、紹介をしていきたいと思います。
就業規則とは
労働基準法では、社員を常時10人以上使用している会社は、就業規則を作成して労働基準監督署へ届け出をしなければならないと定めています。この社員の中には、正社員のみならず、パートやアルバイトの数も含めます。ただし、事業所ごとにカウントしますので、それぞれの支店の合計人数が10人未満であれば、会社全体で何百人いようとも就業規則を作成して届け出る義務はありません。
就業規則を作成するときは、絶対に記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、定めても定めなくても良いが、その会社に決まりがあるのであれば記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります。
(1)「絶対的必要記載事項」
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交代制の場合には就業時転換の事項
- 賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締め・支払いの時期、昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由も含む)
(2)「相対的必要記載事項」
- 退職手当に関する事項(適用者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法・時期)
- 賞与等の臨時の賃金・最低賃金額に関する事項
- 食費・作業用品等の負担に関する事項
- 安全・衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償・業務外の疾病扶助に関する事項
- 表彰・制裁に関する事項
- その他、当該事業場の全労働者に適用される事項
給与計算と就業規則の関係
(1)の②にあるように給与の計算方法は、就業規則で必ず定めなければならない事項です。なお、給与に関する事項は就業規則そのものに盛り込むのではなく、「給与規程」などのように就業規則とは独立させた別規則として定めてもかまいません。多くの会社では、「給与規程」や「退職金規程」は別規程としているようです。
また、就業規則等は、ただ作成をして労働基準監督署に届け出をしておけば良いというものではなく、社員が見たいときにはいつでも見ることができる場所に保管しておく必要があります。
給与に関する事項は、「絶対的必要記載事項」であるため就業規則等には必ず記載をしなければなりませんが、法律に定められているから記載するというだけではなく、次の理由からも定めておく必要があります。
給与計算にあたり、法律に特に定めがなく会社が独自に定めることができる欠勤控除や入退社等の日割計算のルールは、誰が見ても分かるように給与規程などにはっきりと盛り込み、周知することで効力が発生します。
反対に残業代の計算方法などは、法律には最低限のルールがありますが、法律以上の計算方法であれば会社で独自にルールを定めることができます。
このルールが曖昧で、社員が計算方法を理解していないと無用のトラブルが生じることがあります。また、せっかく就業規則等に定めていても、実務で使用した計算方法が就業規則等の計算方法と異なっていて、実際の支給額が少なくなっていれば、会社が約束を果たしていないことになります。この場合は、行政の指導対象になったり、トラブルに発展する可能性が高いでしょう。
就業規則を定めて届け出る義務のない会社の場合であっても、給与計算の方法は、明文化して従業員へ周知しておくほうが良さそうです。
いかがでしょうか。①給与の計算方法は就業規則に定めなければいけないこと、②就業規則を定めなくても計算ルールは明文化しておくこと、③就業規則等で明文化したルールと実務上の計算方法に差異が出ないようにすること、が大切なことがお分かりいただけたかと思います。
担当者が変更になるときの引き継ぎをきちんとすれば良さそうなものですが、給与計算に限らず引き継ぎは十分過ぎるほど行ったように見えても、レアケースなどで引き継ぎの穴が出ることも多いようです。
ミスにより会社への不信感を芽生えさせるくらいなら、人事給与アウトソーシング(ペイロールアウトソーシング)S-PAYCIALの導入や社会保険労務士などの専門家へのアウトソーシングの活用を検討されるのも一つの方法だと思います。
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