日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第07回  投稿:2014.09.29 / 最終更新:2019.07.12

遅刻をした日に残業をしたときの計算方法

給与計算を行う上で、一番ミスが起きやすいケースとして残業代の支払いや欠勤や遅刻の控除等があげられます。
計算ミスがおきる原因は、担当者が間違った労働基準法の知識を持っていて計算方法に誤りがあったり、給与ソフトを使用せずに担当者が手計算で給与計算を行っているために計算ミスをしてしまう等が考えられます。給与は、従業員にとって一番大切なものです。何度もミスをしてしまうと会社への不信感につながりかねません。
今回は、よく問い合わせを受ける「遅刻をした日に残業をした場合」の計算方法について、具体例を挙げながら見ていきます。

①割増賃金の支払義務は法定労働時間を超えてから

一番スタンダードな、午前9時始業、午後6時就業、休憩1時間で所定労働時間8時間の会社で考えてみましょう。
この会社で1時間遅刻して午前10時に出社し、午後7時まで勤務した社員がいた場合、どのような扱いをすればよいでしょうか?
労働基準法では、「1日8時間、1週間で40時間を超えて労働させた場合は、法定の割増賃金を支給しなければならない」と定めています。
そのため、先ほどの1時間遅刻して同じ時間の残業をしたようなケースは、1日8時間を超えていないので割増賃金は支払わなくてよいということになります。つまり、遅刻することによって労働時間が繰り下げられているだけで、実質的に通常の勤務と同じと考えればよいのです。もし、遅刻した1時間を賃金控除するのであれば、「割増をしない」残業代を1時間分支給することになります。
同じ考え方で、遅刻2時間、残業1時間であれば、1日の所定労働時間に1時間足りません。この場合は、1時間分の賃金控除だけを行うか、あるいは、2時間分を賃金控除して割増をしない残業代をやはり1時間分支給することになります。
逆に1時間遅刻して10時に出勤し、午後8時までの2時間残業した場合は、どうでしょうか。この場合は、午後7時以降は1日8時間を超えますので、単純に1時間の時間外勤務として、1時間分の割増賃金を支給することになります。もし、遅刻2時間分を賃金控除するのであれば、午後6時から7時までの1時間は割増をしない残業代、7時から8時までの1時間は割増賃金を支給しなければなりません。

②給与規程について

①で説明した内容が労働基準法の解釈になります。しかし、会社の給与規程において、労働基準法を上回る別の定めがある場合は、その規定が優先されることになります。
例えば、『午後6時以降の労働については、25%増の割増賃金を支給する』という定めがあれば、それに従わなければなりません。この場合は、遅刻1時間で控除する金額と残業1時間で支給する金額が異なります。そのため、1時間遅刻して10時に出勤し、午後7時までの1時間残業した場合は、それぞれ1時間控除し、1時間の割増賃金を支払わざるを得ません。
例えば、時給換算で2,000円の社員がいたとします。この社員が1時間遅刻したときの控除金額(1時間分)は時間単価である2,000円になります。一方、残業は給与規程の定めにより25%増しの2,500円となります。結果として2,500円-2,000円=500円を通常より多く支払うことになってしまいます。
このような扱いは、遅刻せずにまじめに出勤した他の社員に対しても非常に不公平な取扱いとなってしまいます。そのため、計算方法を給与規程などに定める際は注意が必要になります。規程の文言は『1日8時間を超えて労働した場合に割増で支払う』などとしておくべきでしょう。

③遅刻をした場合でも深夜勤務手当は支給

時間外勤務手当の割増については、法定労働時間を超えなければ支払う必要はありません。しかし、深夜勤務手当については午後10時から翌日午前5時までの深夜勤務をさせた場合は必ず支払わなければなりません。これについては「遅刻をしたからその分を繰り下げる」という考え方はできません。
例えば、午前10時始業、午後7時就業、休憩1時間で所定労働時間8時間の会社があったとします。この会社の社員が5時間遅刻をして15時に出社し、そのまま24時(休憩1時間)まで働いたとします。実働は8時間なので時間外労働としての割増賃金は発生しませんが、22時から24時までの2時間は深夜勤務となるため、この2時間に対する25%の深夜勤務手当は支給しなくてはなりません。
遅刻に対する懲戒処分を厳しくするなどして、社内の規律を正していくことが重要かもしれません。

④中小企業が猶予されている月残業時間が60時間を超えた場合の割増率について

ところで、平成22年4月1日より1か月60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が現行の25%から50%に引き上げられています。このルールは大企業のみに適用があり、中小企業は法定割増率の引き上げは猶予されています。この法律が施行されたときに、中小企業の割増賃金率については、施行から3年経過後に改めて検討することとされています。平成25年になり、厚生労働省は大企業のみに適用している割増率のルールを、中小企業まで拡大をするかの検討を始めています。
1か月60時間を超える残業の割増賃金が25%でなくなると、これまで一番スタンダードな週休2日制で、1日8時間の会社(週40時間の会社)では、日々の残業時間だけを計算していればよかったものが、同じ残業であっても割増率が違う残業時間が出てくることになります。
猶予措置の廃止となれば大きく報道をされると思いますが、給与計算の担当者は、法改正情報も含めて注視していく必要があります。

いかがでしたでしょうか?

平成22年の法改正では1か月60時間超の残業時間に対する割増率のほかにも、限度基準告示を超える残業時間(1か月45時間超になる会社がほとんど)の割増率の引き上げの努力義務も定められており、こちらも今後は「努力義務」から「強制」になっていくことも想定されます。
1か月の残業時間が多い会社では、コストを抑制するために、今回のような遅刻して残業したときの計算方法などを法律通りの計算に変更する会社も出てくるかもしれません。
法改正の行方にもよりますが、残業代の計算が複雑になっていき、給与計算の担当者にかかる負荷も大きくなっていくことは間違いなさそうです。この機会に、人事給与アウトソーシング(ペイロールアウトソーシング)S-PAYCIALの導入や社会保険労務士などの専門家へのアウトソーシングの活用を検討してみてはいかがでしょうか。戦略的な人事やタレントマネジメントなどの高度な人材育成が求められるなか、給与計算はアウトソーシングを行い、コストの削減と戦略的人事部門の強化を行うのも必要な時代になってきているように思えます。

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