出来高払い制の残業代
目次
営業職など業務の種類によっては、歩合やインセンティブなどの出来高で給与を決めている会社があります。このように、労働時間に関係なく、出来高や成果に応じて給与を支払うことを「出来高払制」といいます。
出来高払制で給与を支払っている場合、残業代の計算方法が通常と異なります。今回は、出来高払制における残業代の計算方法についてみていきたいと思います。
出来高払制の保障給とは
出来高払制といっても、完全に出来高だけの支払いにすることは労働基準法で禁止されています。
「出来高払制その他請負制で使用する労働者については、使用者は労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」
このルールがないと、労働者は、ノルマを達成しなければ給料を受け取ることができなくなってしまいます。そのため、労働基準法第27条で、出来高がたとえ少なかったとしても、労働時間に応じて一定額の保障をするということを使用者に義務付けています。
出来高払制の割増賃金について
割増賃金の計算の基礎に含めなくてもよい手当は、以下の7種類の賃金のみです。
1)家族手当
2)通勤手当
3)住宅手当
4)別居手当
5)子女教育手当
6)臨時に支払われた賃金
7)1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
これらの賃金以外は、割増賃金の計算の基礎に含める必要があります。
そのため、出来高払制で支払った歩合給やインセンティブなどの出来高給については、割増賃金の計算に算入しなくてはなりません。
とはいえ、出来高払制における割増賃金の計算方法は、通常の場合と異なります。基本給や手当などの固定給については、所定労働時間で計算を行い、割増賃金の基礎となる1時間当たりの時間給を計算します。
しかし、歩合給やインセンティブ、出来高給は、残業も含めた総労働時間の結果、得られた成果であると考えられます。そのため、出来高給については、総労働時間で計算をすることになっています。
具体的例にそって見ていきたいと思います。例として、以下のような条件で計算をしていきます。
基本給 :160,000円 所定労働時間:160時間
出来高給:200,000円 総労働時間 :200時間
合計 :360,000円 残業時間 :40時間
基本給部分の残業代の計算 :160,000円÷160時間×1.25×40時間=50,000円
出来高給部分の残業代の計算:200,000円÷200時間×0.25×40時間=10,000円
その月の残業代の合計金額 : 60,000円
この例ですと、基本給と出来高給の合計金額である360,000円に残業代60,000円を加えた420,000円を支給することになります。
なお、出来高給部分の割増賃金の計算においては、割増率を1.25ではなく0.25で計算をすることになります。先ほども説明したとおり、出来高給部分については総労働時間に対する賃金と考えますので、「1」の部分は出来高給にすでに含まれており、割増部分の「0.25」だけを残業代として支給すれば良いのです。
今回は、出来高払制の割増賃金の計算方法について紹介をしました。細かい点かもしれませんが、出来高給の部分も1.25で計算して支払っている(二重払いをしている)会社や、そもそも出来高給を残業代の基礎に含めていない会社も時々見受けられます。
出来高部分の支払いがある会社では、正しく計算されているか、あらためて確認してみてください。
-
第99回社会保険の定時決定~その2
-
第101回振替休日と代休の違い
-
第100回産後パパ休暇と給与計算
-
第98回社会保険の定時決定~その1
-
第97回雇用保険の料率変更
-
第96回定年延長と退職金
-
第95回夜勤シフトの割増賃金
-
第94回休業補償と休業手当
-
第93回社会保険の適用拡大について
-
第92回令和3年の年末調整
-
第91回兼業している65歳以上の方の雇用保険
-
第90回個人型確定拠出年金(iDeCo)
-
第89回社宅家賃や社員旅行の積立金
-
第88回感染対策費用の課税・非課税
-
第87回兼業、副業の時間外手当
-
第86回2以上事業所勤務者の社会保険料
-
第85回有給休暇と残業手当
-
第84回在宅勤務手当の非課税計算
-
第83回延長された社会保険の特例改定
-
第82回育児・介護休業法の改正
-
第81回年末調整のイレギュラー対応
-
第80回年末調整の変更点~その2
-
第79回年末調整の変更点~その1
-
第78回厚生年金保険保険料の上限引き上げ
-
第77回新型コロナウイルスによる社会保険標準報酬月額の特例改定
-
第76回寡婦控除の見直し
-
第75回住民税の特別徴収
-
第74回在宅勤務時の労働時間と割増賃金
-
第73回高年齢労働者の雇用保険料免除の廃止
-
第72回休業手当の計算方法
-
第71回源泉所得税の仕組み
-
第70回時間単位の有給休暇付与
-
第69回短時間労働者の社会保険の適用拡大
-
第68回60時間超の残業の割増率の猶予措置廃止
-
第67回フレックスタイム制の改正と残業代
-
第66回健康保険の加入資格と保険料
-
第65回厚生年金保険の加入資格と保険料
-
第64回介護保険料を徴収するタイミング
-
第63回社会保険における賃金とは
-
第62回労働保険における賃金とは
-
第61回労働基準法における賃金とは
-
第60回出来高払い制の残業代
-
第59回休業手当の計算方法
-
第58回賞与における所得税の計算
-
第57回年末調整(住宅ローン控除)の実務
-
第56回年末調整の変更点
-
第55回社宅制度と労働保険料
-
第54回社宅制度と社会保険料
-
第53回住宅手当と社宅貸与の違い
-
第52回退職金の税務計算
-
第51回賃金支払いの5原則~その4(最終回)
-
第50回賃金支払いの5原則~その3
-
第49回賃金支払いの5原則~その2
-
第48回賃金支払いの5原則~その1
-
第47回時給者の有給休暇の賃金の計算方法
-
第46回割増賃金の基礎となる賃金
-
第45回年末調整の留意点~その2
-
第44回年末調整の留意点~その1
-
第43回退職者の住民税
-
第42回労働時間の端数処理
-
第41回入社した従業員がすぐに退職したとき
-
第40回賃金から控除できる項目と労使協定
-
第39回1か月60時間超の残業の割増率と代替休暇
-
第38回退職者の社会保険料徴収とタイミング
-
第37回雇用保険料率の改定と変更のタイミング
-
第36回最低賃金の仕組み
-
第35回毎月の給与からの源泉所得税の徴収
-
第34回65歳以上の従業員に対する雇用保険の法改正
-
第33回今年の年末調整の留意点
-
第32回年末調整における海外居住の扶養家族
-
第31回年末調整におけるマイナンバーの取扱
-
第30回従業員が死亡したとき
-
第29回雇用保険料と介護保険料の免除
-
第28回企画業務型裁量労働制と割増賃金の考え方
-
第27回事業場外労働に関するみなし労働時間制度の考え方
-
第26回専門業務型裁量労働制と割増賃金の考え方
-
第25回1週間単位の変形労時間制度
-
第24回フレックスタイム制の労働時間制度
-
第23回1年単位の変形労時間制度
-
第22回1か月単位の変形労時間制と残業代の関係
-
第21回管理職への残業代の支払い
-
第20回今年の年末調整で昨年から変更になった点
-
第19回社会保険料の仕組みと変更時期
-
第18回通勤費の決め方と非課税限度額
-
第17回報奨金の現金支給や現物給与
-
第16回徹夜勤務や遅刻をした日の残業代の支払い
-
第15回有給休暇の付与と消滅
-
第14回給与の支給日の決め方やその変更
-
第13回給与計算の誤入力を修正するときの注意点
-
第12回標準報酬月額の随時改定
-
第11回年間の給与計算の流れ
-
第10回年末調整の後の諸手続き
-
第09回離婚時の年金の分割制度
-
第08回年末調整その1~年末調整の意味と対象者~
-
第07回遅刻をした日に残業をしたときの計算方法
-
第06回就業規則と給与計算の関係
-
第05回給与から引かれるものは?
-
第04回残業代を正しく計算するための基礎知識
-
第03回賞与の支給と給与計算
-
第02回産前産後休業や育児休業の仕組みと社会保険料
-
第01回消費税増税で変わる通勤手当と社会保険料