日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第100回  投稿:2024.11.20 / 最終更新:2024.11.21

産後パパ休暇と給与計算

人事給与統合システム×人事給与アウトソーシング

育児・介護休業法の改正が、令和4年4月1日から3段階で施行されます。

今回は、令和4年10月1日に施行される「出生時育児休業(産後パパ育休)」の概要と、休業時の給与計算の方法について説明していきたいと思います。

出生時育児休業(産後パパ育休)とは

出生時育児休業は、通常の育児休業(子が1歳に達するまでの休業)とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる育児休業です。出生後8週間と言っても、予定日当日に出産しない限り、正確に8週間となるわけではありません。

実際には、出産予定日前に子が生まれた場合は、出生日から出産予定日の8週間後までが対象となります。反対に、出産予定日後に子が生まれた場合は、出産予定日から出産日の8週間後までが対象となります。

出生時育児休業期間中も、育児休業給付金の支給対象となります。ただし、休業中に就業日がある場合は、就業日数が最大10日(10日を超える場合は、就業している時間数が80時間)以下である必要があります。給付率については、67%となります。

子の出生後8週間については、女性は産後休業期間にあたるため、この制度は男性が取得することを目的としています。これまでも、パパ休暇という制度がありましたが、利用率が低いといった問題がありました。この問題を解決するために、パパ休暇を廃止して産後パパ育休が創設されました。

産後パパ育休の取得をする場合

産後パパ育休の取得をする場合は、休業の2週間前までに申出を行う必要があります。ただし、例外として、職場環境の整備などについて、今回の制度見直しにより求められる義務を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1ヶ月前までとすることができます。

産後パパ育休は2回を限度として、分割をして取得することができます。例えば、出産直後に10日間休業を行い、仕事復帰をし、その後に再度14日間取得するといったことが可能です。分割をする場合は、原則として2回分をまとめて申し出なければならないので気を付けましょう。

出生時育児休業は、労使協定を締結している場合に限られますが、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能です。就業する場合の具体的な手続きは、次の流れになります。


 1.労働者が就業しても良い場合は事業主にその条件を申し出る
 2.事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日、時間を提示する
 3.労働者が同意する
 4.事業主が通知する

ただし、就業可能日等については上限が決まっています。

・休業期間中の所定労働日と所定労働時間のそれぞれ半分まで

休業開始日・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満

この就業可能日の上限について、例を使って考えていきたいと思います。

所定労働時間が1日8時間、1週間の所定労働日が5日の労働者が、

休業期間:2週間、休業期間中の所定労働日:10日、

休業期間中の所定労働時間80時間 で出生時育児休業を取得しました。

このケースでの就業可能な条件は、以下のようになります。

1)就業日数の上限:5日
休業期間中の所定労働日の半分以下とする必要があるため、10日÷2=5日になります。

2)就業時間の上限:40時間
休業期間中の所定労働時間の半分以下とする必要があるため、80時間÷2=40時間になります。

3)休業開始日と終了予定日の就業:いずれも8時間未満
休業を開始した日と、終了予定日に就業する場合は、所定労働時間数未満という条件があります。
このケースでは当日の所定労働時間が8時間なので、8時間未満となります。

出生時育児休業の給与計算について

前述のように出生時育児休業は、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能です。通常の育児休業と同様に休業した日については、給与の控除を行う必要があります。しかし、通常の育児休業と違う部分は、給与計算期間のすべてが休みということではなく、出勤した日と休業した日が混在する点です。

控除の計算方法は、1日あたりの賃金額、もしくは1時間あたりの賃金額を基準にして、その額に休業日数や休業時間数を乗じて控除する方法が一般的です。

出生時育児休業は、所定労働時間の一部を休業するケースが考えられるため、休業日数を基準にする場合でも、休業時間数の控除方法も決定しておく必要があります。

よく使われる計算式は、次のとおりです。

1)休業日数の控除方法
1日あたりの賃金額=月給÷1年間における1ヶ月平均所定労働日数

2)休業時間の控除方法
1時間あたりの賃金額=月給÷1年間における1ヶ月平均所定労働時間数

1ヶ月平均所定労働日数や、1ヶ月平均所定労働時間数ではなく、その月の所定労働日数や所定労働時間数とすることも可能ですが、この場合は、月によって所定労働日数や所定労働時間が変動するので、各月で控除する単価も変わることになります。

控除のルールは、就業規則等にもとづき会社が決めることができます。したがって、年間を通じた平均所定労働日数(時間)とその月の所定労働日数(時間)のどちらかを選択するかは会社が決定することができます。また、1日(1時間)あたりの単価計算をする際に、基本となる額(上の式における「月給」の部分です)を基本給だけにしても構いませんし、基本給+諸手当の合計額とすることも可能です。

同じように給与から控除をする欠勤や遅刻と、育児休業時における計算方法がかならずしも一致している必要はありませんが、出生時育児休業の方が不利益になることは止めてください。

給与ソフト等を使用している会社は、控除計算の計算式を初期設定する必要があります。1年間における所定労働日数(時間)で計算する場合でも、カレンダーの関係で年によって数字が異なることがあります。

初期設定が誤っていると、残業代の計算や欠勤控除の計算等が間違ってしまいますので、定期的に点検を行った方がよいでしょう。

今回は、出生時育児休業について紹介をしました。男性の育児休業取得率は、毎年増加しています。今後は、これまで以上に取得率が上がると考えられますので、育児休業中の給与計算のルールはあらかじめ明確にしておくようにしましょう。


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