今年の年末調整で昨年から変更になった点
目次
生命保険会社から生命保険料控除証明書が各家庭へ届き始めて、いよいよ年末調整の時期が近づいてきました。
年末調整は、簡単に言ってしまうと、1年間の所得を確定させ、毎月徴収していた源泉所得税を清算することです。年末調整で確定した1年間の所得は、住民税の算定の根拠になります。また、医療費控除や住宅ローン控除など年末調整では清算できなかった人が確定申告を行う際には年末調整の結果(源泉徴収票)が必要になります。
そのため、会社は年末調整で算出した数字をもとに「給与所得の源泉徴収票」と「給与支払報告書」を作成しなければなりません。
今回は、昨年の年末調整との違いを紹介していきます。一般的な年末調整の考え方は、第8回と第10回の「日本の人事部」バックナンバーを一読頂ければと思います。
変更点1 源泉徴収税額表の変更
平成27 年分以後の所得税の税率について、課税所得4,000 万円超の区分が設けられ、その税率が45%になりました。この改正に伴い、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)」と「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」が改正されています。
税率の改正は、平成27 年1 月1 日以後に支払うべき給与等について適用されますので、平成27年の年末調整の計算を行う際は、新しい税額表で行うように注意をしてください。
一般的に課税所得が4,000万円を超える方は多くないと考えられますが、対象になる方がいる事業所の担当者は、所得税額が前年よりも増える旨を事前に説明をしておいた方が良いでしょう。
変更点2 平成28年 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の変更
平成28年1月1日より、マイナンバー制度が本格的にスタートします。最近では、新聞やテレビ等で報道されない日はないぐらいに注目を浴びている制度です。
マイナンバーは、社会保障・税・災害対策の3つの分野において行政手続きに利用されます。そのため、年末調整も個人番号を利用していくことになります。
「平成27年分の年末調整には個人番号を利用する」と勘違いをされている担当者や経営者の方が意外に多くいらっしゃいますが、今回の年末調整では個人番号の利用はしません。あくまでも、マイナンバー制度が運用されるのは、平成28年1月からとなります。
しかし、今回の年末調整では直接的に個人番号は利用しませんが、「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」には、本人や扶養する家族の個人番号を記載する欄が新たに設けられました。
そのため、実質的には今回の年末調整から個人番号を取り扱うことになります。「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」への記載は、年末調整を行う際に個人番号が分かっているのであれば家族の分も含めて個人番号を申告書に記載をしてもらっても良いですし、来年中に個人番号を記載してもらっても構いません。
個人的には、個人番号はできるだけ早く従業員から収集してしまった方が良いと考えています。理由としては、通知カードが送られてきても、時間の経過とともに紛失したり、誤って捨ててしまったりといったことが発生する可能性があるからです。また、収集していなかった従業員が退職したことにより、収集できなくなることも考えられます。
そのため、世間でマイナンバー制度の話題が出ているうちに、個人番号を収集してしまった方が良いと考えます。
<平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 サンプル>
変更点3 非居住者である親族についての扶養控除等の申告書類の変更
平成28年1月1日以降に支払いを受けるべき給与等の源泉徴収について、国外に住む扶養家族の控除を受ける場合には、「親族関係書類」と「送金関係書類」を提出または提示しなければならなくなりました。
具体的にこれらの書類の提出をするタイミングと、提出する書類は以下の通りです。
1.親族関係書類
非居住者である親族の氏名、生年月日、住所が確認できる日本国または外国政府、あるいはその地方公共団体が発行した戸籍謄本等を「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」提出の際に提出または提示すること。
2.送金関係書類
外国送金依頼書の控えや家族カードになっているクレジットカードの利用明細書の控えを「平成28年」の年末調整の際に提出または提示すること。
送金関係書類は、平成28年の年末調整の際に改めて提出してもらうことになりますので、親族関係書類だけを「平成28年 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とともに提出または提示してもらうことになります。
親族関係書類の提出または提示がされない場合は、平成28年1月1日以降の給与支給からは該当者分の扶養控除ができませんので、ご注意ください。
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