日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第23回  投稿:2016.02.08 / 最終更新:2019.07.12

1年単位の変形労時間制度

製造業やサービス業を中心に、さまざまな変形労働時間制を導入している会社は少なくありません。しかし、実際の給与計算の内容を見てみると、正しい計算方法を理解しないままこれまでのやり方を踏襲しているケースもあるようです。

前回の1ヶ月単位の変形労働時間制に引き続き、今回は、1年単位の変形労働時間制の概要と、制度を導入している場合の割増賃金の計算方法を見ていきます。

1年単位の変形労働時間制とは?

1年単位の変形労働時間制とは、労働基準法で定められた変形労働時間制のひとつの形態です。

労働基準法第32条の4
「労使協定を締結し、対象期間として定められた期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、特定された日又は特定された週に法定労働時間を超えて労働させることができる」

これを平たく言ってしまうと、「会社が1ヶ月超1年以内の期間を定め、その期間中の1週間当たりの平均労働時間が40時間以内であれば、業務の繁閑に応じて労働時間や労働日数を分配することを認める」ということです。

年末年始に繁忙期があり夏場は閑散期といったような季節により業務の繁閑がある業種や、まとめて休みをとる代わりに他の週は6日稼動した方が効率がよい装置産業などは導入するメリットがあります。

変形労働期間中の所定労働時間

1年単位の変形労働時間制では、1ヶ月超1年以内で定めた対象期間を平均し、1週間の労働時間は40時間を超えないように決定しなければなりません。そのため、対象期間の所定労働時間の総枠は、次の式によって計算された範囲内で定めることになります。

所定労働時間の総枠(上限)=40時間×対象期間の暦日数÷7日

この計算による対象期間ごとの労働時間の総枠(上限)時間は、次のとおりになります。

対象期間の暦日数 所定労働時間の総枠(上限)
1年 (365日) 2,085.71時間
6ヶ月(183日) 1,045.71時間
4ヶ月(122日) 697.14時間
3ヶ月(92日) 525.71時間

 

1年単位の変形労働時間制を取り入れている多くの会社では、対象期間をその名のとおり1年としているケースが多いようです。また、1年単位の変形労働時間制という名称から、数ヶ月単位では認められないと勘違いをされて導入をためらっている会社もあるようです。

しかし、法律では対象期間は「1ヶ月を超えて1年以内」と定められているため、3ヶ月でも半年でも導入することができます。

割増賃金の計算方法

一般的な会社であれば、1日8時間を超えた場合と週40時間を超えた場合に割増賃金の支払いをします。

しかし、1年単位の変形労働時間制の場合は、少し計算の方法が変わってきます。代表的なケースごとにまとめてみたいと思います。

・ケース1 1日についての計算
労使協定で定めた時間が8時間を超える日の場合は、あらかじめ定めていた時間を超えた時間が割増賃金の対象となります。
例えば、1日の労働時間を労使協定で8時間45分の日に9時間30分働いたとすると、9時間30分-8時45分=45分の残業ということになります。
また、1日の労働時間を8時間より短く設定している日は、8時間を超えた時間が割増賃金の対象となります。ただし、あらかじめ設定した時間から8時間までの間も残業には変わりありませんので、割増をしない残業代の支払いが必要です。

・ケース2 週についての計算
労使協定で定めた労働時間が40時間を超える週の場合は、定めた時間を超えた時間が割増賃金の対象となります。
例えば、その週の設定労働時間が44時間の週に46時間働いたとすると、46時間-44時間=2時間の残業をしたということになります。
ただし、すでにケース1で割増賃金の支払対象とした時間は、二重でカウントする必要はありませんので、その時間を除いて週の労働時間を計算するとよいでしょう。
一方で、週の労働時間を30時間で設定した週に43時間働いた場合は、40時間を超えた時間から割増賃金の対象、30時間から40時間までの10時間は割増をしない残業代の支払の対象となります。
こちらも、ケース1と二重でカウントする必要はありませんので、まずケース1で割増賃金の支払い対象とした時間は除きます。その上で40時間を超えた時間があれば、割増賃金の支払対象にします。

・ケース3 対象期間全体についての計算
前述の対象期間の総枠の上限を超えた時間については、すべて割増賃金の支払対象になります。ただし、ケース1やケース2ですでに割増賃金を支払っている時間については、カウントする必要はありません。
この対象期間全体の上限時間を超えた時間は、ほとんどの場合すでにケース1やケース2で割増をしない残業代を支払っていると思います。そのため、この時間については、割増部分(一般的には25%)だけを支払って清算すればよいことになります。
変形期間の総枠については、前述の表「所定労働時間の総枠(上限)」を参照ください。

注意が必要なのは、対象期間の途中で入社や退職した従業員の場合です。この場合は、対象期間の在籍日数に応じて、変形期間の総枠(上限)時間を再計算することになります。

そのため、会社で定めた就業カレンダー通りにぴったり働いていたとしても、割増部分の清算が必要になるケースがあります。

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このように、1年単位の変形労働時間制を導入している会社では、割増賃金の対象となる労働時間が複雑になるケースがあります。会社が当初設定した就業カレンダーの時間を超えた時間すべてで割増賃金を支払うのであれば、簡便ですし、問題になることはほとんどありません。

しかし、厳密には割増をしなくてもよい残業時間まで割増賃金を支払っていることになりますので、それを理解した上でこのような計算方法を取り入れましょう。

また、その場合でも、中途入社や退職者への清算が行なわれていないケースもあるようなので、担当者は再度確認してみてください。

1年単位の変形労働時間制は、1ヶ月単位の変形労働時間制と違って、あらかじめ対象期間のカレンダーの作成等を行うことが原則です。

これから導入を検討する会社は、専門家や行政機関に確認をしながら準備をすすめた方がよいでしょう。

 

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