日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第24回  投稿:2016.03.02 / 最終更新:2019.07.12

フレックスタイム制の労働時間制度

変形労働時間には、1ヶ月や1年単位の変形労働時間制のほかに、フレックスタイム制もあります。柔軟な働き方を目的として、このフレックスタイム制を導入している会社もあります。

フレックスタイム制にも、この制度ならではの労働時間の計算方法があります。正しい給与計算を行うために、今回は「フレックスタイム制」を導入している場合の計算方法を見ていきます。

フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制とは、1か月以内の一定期間(清算期間)における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で始業時間や終業時間を自分自身で決定をしながら働くことができる制度です。

この制度では、1日単位で残業時間の計算を行うことはありません。清算期間のトータルの労働時間によって、時間外手当の支払いをするか否かを判断することになります。労働時間の長さが直接成果に結びつかない、研究・開発等を行う会社で採用されていることが多いようです。

フレックスタイム制度では、「通勤ラッシュを避けることができる。」「保育園や幼稚園など育児の時間に合わせて出退勤を決めることができる。」「従業員自身が労働時間の決定をするので無駄な残業時間を軽減することができる。」などといったメリットが見込めます。

清算期間の所定労働時間

フレックスタイム制の清算期間の所定労働時間の上限時間は、前々回説明した「1か月単位の変形労働時間制」と同様の方法で計算することができます。

清算期間の上限時間 = 清算期間の暦日数 ÷ 7 × 法定労働時間
*法定労働時間 = 40時間
(常時使用する労働者数が10名以下の商業など特例措置対象事業場の場合は44 時間)

1か月の暦日数 上限時間数(特例措置対象事業場)
28日 160.0時間(176.0時間)
29日 165.7時間(182.2時間)
30日 171.4時間(188.5時間)
31日 177.1時間(194.8時間)

 

清算期間中の所定労働時間は、清算期間を平均し、この上限時間以内になるようにあらかじめ定めておく必要があります。実務上は「清算期間の所定労働日数×1日の基準になる所定労働時間」を清算期間中の所定労働時間にしている会社が多いようです。

割増賃金の計算方法

フレックスタイム制を採用した場合に時間外労働となるのは、「各人の清算期間中の総労働時間」が「清算期間中の所定労働時間」を超えた時間です。つまり、時間外労働であるかどうかは、1日単位では判断せず清算期間の労働時間のトータルで計算するということになります。

各人の清算期間中の総労働時間が清算期間中の所定労働時間を超えていたとしても、法律上割増が必要になるのは、前述の所定労働時間の上限時間数を超えた時間になります。所定労働時間の上限時間数以内の残業は、割増をしなくても良い時間です。

なお、フレックスタイム制であっても、深夜時間や休日労働の割増賃金の定めはそのまま適用されますので注意が必要です。

清算期間の所定労働時間に不足があった場合

フレックスタイム制では、日々の労働時間を従業員が決定する制度になります。そのため、月の労働時間が設定した時間よりも少なくなってしまう場合があります。

フレックスタイム制を導入していない会社であれば、不足分は給与から控除します。しかし、フレックスタイム制の場合は、次のいずれかの方法をとることが可能です。

1)その月の不足時間分を控除して、毎月清算する。
2)不足時間分の控除はせず、その時間を次の清算期間に合算する。

具体的に言えば、所定労働時間が160時間の月に150時間しか勤務しなかった場合は、不足した10時間分を次の月の所定労働時間に上乗せすることが可能です。ただし、「上乗せされた月の所定労働時間も上限時間以内であること」という制約がありますので、繰越する時間数には制限を設けておいた方が良いでしょう。

一方で、不足時間を次月に繰り越せるのであれば、「超過時間があった場合は次月の所定労働時間から超過時間を控除して時間外手当を支払わない」というのも同じような感じがします。しかし、超過時間を次月で清算することは、労働基準法第24条の賃金の全額払いの原則に違反するため、行うことはできません。

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フレックスタイム制の時間外手当の計算方法は休日や深夜を除けば1か月の合計時間で判断しますので、他の変形労働時間制よりも簡単で給与計算業務の軽減につながるかもしれません。

また、フレックスタイム制の「清算期間を3か月以内まで延長しよう」という法改正の動きもあり、さらに利用しやすくなる可能性があります。もちろん、製造現場のように一斉に勤務しないとならない事業場や営業時間が決まっている飲食業や小売業では導入は困難かもしれませんが、職種を限定するなど、一度導入の検討をする価値はあるかもしれません。

 

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