令和3年の年末調整
令和3年分の年末調整を行う時期が近づいてきました。昨年は、年末調整のルールが大きく変更されました。今年は、昨年ほどの大きな変更はありません。
今回は、令和3年分の年末調整業務や来年以降の変更点についてみていきたいと思います。
税務関係書類における押印義務の改正
税務署長等に提出する源泉所得税関係書類について、押印の必要がなくなりました。
このため、扶養控除等申告書などの年末調整の際に使用する書類についても、従業員の方からの押印は不要です。
源泉徴収関係書類の電磁的提供に関する改正
これまでは、年末調整の資料を電子データで受け取るには、「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を事前に提出する必要がありました。今回の改正で、以下の書類をデータで受け取る場合は、承認申請書の提出は不要となりました。
1.給与所得者の扶養控除等申告書 2.従たる給与についての扶養控除等申告書 3.給与所得者の配偶者控除等申告書 4.給与所得者の基礎控除申告書 5.給与所得者の保険料控除申告書 6.給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書 7.所得金額調整控除申告書 8.退職所得の受給に関する申告書 9.公的年金等の受給者の扶養親族等申告書 |
ただし、電子データで受け取る場合は、会社が以下の要件をすべて満たしている必要があるので注意が必要です。
1.電磁的方法による提供を適正に受けることができる措置を講じていること 2.提供を受けた記載事項について、その提供をした給与等の支払を受ける者を特定するための必要な措置を講じていること 3.提供を受けた記載事項について、電子計算機の映像面への表示及び書面への出力をするための必要な措置を講じていること |
住宅ローン控除の特例の延長等
住宅ローン控除の控除期間13年の特例について、以下の期間に契約した場合は、令和4年末までの入居者まで延長されることになりました。
注文住宅 :令和2年10月から令和3年9月末まで
分譲住宅等:令和2年12月から令和3年11月末まで
また、この延長した部分に限り、合計所得金額が1,000万円以下の者について面積要件を緩和し、床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅も対象とされます。
令和3年の年末調整に関係する変更点については、以上となります。
退職金の所得税の計算方法
今年の年末調整とは直接関係はないのですが、令和4年から退職所得にかかる所得税の計算方法が変更となります。
特定役員退職手当等を除く、一般的な退職金にかかる所得税の計算は、これまで以下の式で行っていました。
*退職所得金額=(退職金の金額-退職所得控除額)×1/2
令和4年以降の計算については、「短期退職手当等」に係る退職所得の金額について、一定の要件を満たす場合、上記の計算方法は使用しないというルールが誕生しました。
短期退職手当等の定義は、短期勤続年数(役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数が5年以下であるものをいい、この勤続年数については役員等として勤務した期間がある場合、その期間を含めて計算します。)に対応する退職手当等として支払を受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないものをいいます。
つまり、次の2つの要件に該当する場合は、別の計算式で所得税の金額を算出するということです。
1.勤続年数が5年以下で退職をした
2.退職金の金額から退職所得控除を行った後の金額が300万円を超える
この2つの要件に該当する場合は、300万円を超えた分については、「1/2」がなくなり、
退職所得金額=(退職金の金額-退職所得控除額)で計算します。
「超えた分」というのが判りにくいと思いますが、実際の計算式は次の通りになります。
*退職所得の金額=150 万円+{収入金額-(300 万円+退職所得控除額)}
今回は、令和3年の年末調整の変更点について紹介をしてきました。昨年と比べると大きな変更点はありませんが、年末調整の計算を間違えると、会社に対しての信頼感の低下といったことが発生する可能性があります。油断せずに年末調整に臨んでいただければと思います。
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