溝口知実
第75回  投稿:2026.05.19 / 最終更新:2026.05.18

本年4月変更 ― 健康保険の被扶養者認定における年間収入の判定方法の見直し

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こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。

本年4月1日より、健康保険の被扶養者の認定における、年間収入の判定方法が変更となりました。本年3月までは、「今後1年間の収入見込み」で判定されていましたが、4月1日以降は「労働契約の内容」により判定することとなりました。今回は、健康保険の被扶養者の認定の判定方法について、確認していきたいと思います。

健康保険の被扶養者の認定要件

健康保険の被扶養者の認定における要件は、以下の通りです。


年間収入130万円未満(60歳以上または一定の障害者の場合は180万円未満、(配偶者を除く)19歳以上23歳未満の場合は150万円未満) かつ

・被保険者と同一世帯の場合は被保険者の年収の2分の1未満

・被保険者と別世帯の場合は被保険者からの援助額(仕送り等)未満

従来、この年間収入については、過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の見込みにより判定されていました。年間収入には、時間外労働に対する賃金等予見しにくい収入が含まれていたため、働き控えなどの就業調整が行われていました。

本年4月1日からは、就業調整対策の観点から、被扶養者認定の予見可能性を高めるため、労働契約段階で見込まれる収入を用いて被扶養者の認定を行うこととされました。

具体的には、下記の取扱いにより判定します。

・労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入が基準額未満であること

・年間収入が給与収入のみであること

・臨時収入は年間収入の見込額には含まないこと

※労働契約で定められた賃金とは、労働基準法第11条に定められた賃金をいい、諸手当や賞与などを含みます。

以下、「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&A(第2版)について」(令和8年3月9日厚生労働省保険局保険課・厚生労働省年金局事業管理課事務連絡)を参照していきます。(一部抜粋)

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260310S0010.pdf

・年間収入は労働契約で定めた時給・労働時間・日数等を用いて算出されます。労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では見込み難い時間外労働に対する賃金等(臨時収入)は年間収入の見込額には含みません。(Q&A-1, Q&A-2)

・労働契約内容により年間収入が判定できない場合(例えば、「シフト制による」といった労働時間の記載が不明確な場合、契約期間が1年に満たない場合等)には、労働契約内容による年間収入の判定ができないため、従来どおり給与明細書、課税(非課税)証明書等により年間収入を判定します。(Q&A-2-2)

・複数事業所で勤務している場合、各事業所の労働条件通知書等に記載された情報に基づき、年間収入の見込額を個別に算定し、これらを合算して年間収入を判定します。(Q&A-2-3)

・労働契約内容が確認できる書類の提出がない場合は、従来どおり、給与明細書、課税(非課税)証明書等により年間収入を判定します。(Q&A-3)

・給与収入以外に他の収入(年金収入や事業収入等)がある場合は、従来どおり給与明細書、課税(非課税)証明書等により年間収入を判定します。 (Q&A-6)

・「給与収入のみである」旨の申立ては、健康保険被扶養者(異動)届の「扶養に関する申立書」欄に認定対象者本人が記載する方法や、健康保険被扶養者(異動)届の添付書類として認定対象者本人が作成した「給与収入のみである」旨の申立書を添付する方法により行います。(Q&A-5)

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・労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では時間外労働の見込みがなかったが、扶養認定時点では経常的に時間外労働が発生している場合は、今回の取扱いにより年間収入を判定します(年間収入の見込額には含まない)。(Q&A-4)

・被扶養者の認定の適否に係る確認について、2年目以降少なくとも年1回は保険者において被扶養者の認定の適否に係る確認が必要となります。実施にあたっては、その時点における最新の情報が記載された労働条件通知書等の提出が求められます。(通知書等が存在しない場合には従来どおり給与明細書、課税(非課税)証明書等を確認することにより実施)。(Q&A-7)

・被扶養者の認定の適否に係る確認時において、臨時収入によって結果的に年間収入が基準額を上回った場合であっても、当該臨時収入が社会通念上妥当である範囲に留まる場合には、これを理由として、被扶養者の認定は取り消されません。

一方で、臨時収入の支給を前提として、通知書等において賃金や労働時間を不当に低く記載していたことが判明した場合等、当該臨時収入により実際の年間収入が社会通念上妥当である範囲を超えて基準額を大きく上回っていることが判明した場合には、被扶養者の認定が取り消されることがあります。

なお、当該臨時収入が一時的な収入変動かどうかの確認のために、保険者より「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主証明の提出が求められることがあります。(Q&A-8)

・被扶養者の認定の適否に係る確認の結果、認定時から恒常的な時間外労働があり年間収入が 基準額以上であったことが判明した場合であって、社会通念上妥当である範囲を超えると判断される場合は、認定時に瑕疵があるものではないことから、被扶養者の要件を満たさなくなった時点(被扶養者の認定の適否に係る確認を行った日以降)で、被扶養者を削除する届出の提出が求められます。  (Q&A-8-2)

・労働契約の更新が行われた場合や労働条件に変更があった場合には、時給、所定労働日数等に変動がない、単なる契約期間の更新においても、その都度、内容が分かる書面等の提出が求められます。(Q&A-9)

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さいごに

今回の変更により、被扶養者認定の予見可能性が高まり、認定判断が明確でわかりやすいものになりました。一方で、企業にとっては自社の従業員(被保険者)がその家族を被扶養者とする手続きだけでなく、家族の被扶養者となっているパートタイム従業員の雇用管理においても労働条件通知書等の整備が求められることとなりました。企業の担当者は適正な被扶養者認定のために労働条件通知書等を適宜整備・見直しを行い、対応していきましょう。

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