溝口知実
第17回  投稿:2016.03.29 / 最終更新:2018.11.09

今後企業に求められる障害者雇用対策

こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。
近年、障害者の就労意欲は高まっており、国も障害者雇用対策を進めています。
障害者雇用促進法において、民間企業に対して、雇用する労働者の2.0%に相当する障害者を雇用することを義務付けています(法定雇用率)。
厚生労働省では、毎年6月1日現在の障害者の雇用状況について、障害者の雇用義務のある事業主などに報告を求め、それを集計、公表しています。昨年11月に公表された結果では、民間企業の雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新し、雇用障害者数は 45 万3133.5人、実雇用率1.88%、法定雇用率達成企業の割合は 47.2%となっています。
このような中、「障害者雇用促進法」が改正され、今年4月および平成30年4月に改正の施行が予定されています。今回は、障害者雇用促進法の改正について述べたいと思います。

平成28年4月施行
1.障害者に対する差別の禁止
募集・採用、賃金、配置、昇進などの雇用の分野における障害を理由とする差別的取扱いが禁止されます。たとえば単に「障害者だから」という理由で求人の応募を認めなかったり、業務遂行上必要でない条件をつけて障害者を排除したり、労働能力などを適性に評価せず、「障害者だから」という理由で異なる扱いをすることです。事業主は雇用の分野で障害者と障害者でない者との間に差異が生じる原因が「障害者だから」という理由からなのか、能力に基づく適正な評価に基づくものなのか、判断基準を明確に説明できる状況にしておくべきでしょう。

2.合理的配慮の提供義務
事業主に、障害者が職場で働くにあたっての支障を改善するための措置を講ずることが義務付けられます。たとえば車いすを利用する障害者に合わせて机や作業台の高さを調節することや、知的障害者に合わせて口頭だけでなくわかりやすい文書・絵図を用いて説明することなどです。ただし、このような合理的配慮の措置が、事業主に対して「過重な負担」になる場合は、措置を講ずる義務はないとされています。

3.苦情処理・紛争解決援助
事業主は、相談窓口の設置など、障害者からの相談に適切に対応するために必要な体制の整備が求められ、障害者からの苦情を自主的に解決することが努力義務とされます。

平成30年4月施行
1.法定雇用率の算定基礎の見直し
現在、障害者雇用対策法上で雇用義務の対象とされている障害者は「身体障害者又は知的障害者」ですが、平成30年4月からは「障害者」となります。これにより、精神障害者についても雇用義務の対象に含まれることになります。精神障害者にはうつ病や統合失調症、発達障害やてんかんも含まれます。
これに伴い、精神障害者も雇用義務の対象に含まれることから、平成30年からは法定雇用率(現行では民間企業で2.0%)の算定基礎に精神障害者が加わり、法定雇用率が引き上げられます。ただし施行後5年間(平成30年4月から平成35年3月まで)は猶予期間とし、精神障害者の法定雇用率の引き上げ分は、算定式通りに引き上げなくてもよい期間となります。

今後はますます企業にとって障害の特性を踏まえつつ、雇用管理していくことが求められていきます。たとえば発達障害者は口頭指示のみでは理解が難しかったり、臨機応変な対応が苦手だったりします。そのような特性を理解しつつ作業環境を整備していくことが、企業にとって大きな課題となるでしょう。一方、障害者が社会的な役割を担い、雇用の場が広がることにより、企業と障害者間、障害者でない者と障害者間で相互理解が深まるきっかけになることも期待されるところです。

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