人事担当者が知っておきたいマタニティハラスメントへの対応策
こんにちは。溝口労務サポートオフィス代表の溝口知実です。
女性の社会進出が進む中で問題化している妊娠・出産した女性労働者に対するマタニティハラスメント(マタハラ)について、10月23日、最高裁は初めて判断を示しました。この事件は、妊娠を理由に降格された女性労働者が、男女雇用機会均等法に違反するとして勤務先を訴えたものです。最高裁は、「妊娠や出産を理由にした降格は自由意思の合意か、業務上の必要性について特段の事情がある場合以外は違法で無効」とし、使用者側に意識を改めるよう初めて促し、降格の必要性について審理不十分とし広島高裁に審理を差し戻しました。
男女雇用機会均等法では、妊娠・出産を理由とした不利益取り扱いは禁止されています。具体的には、有期契約労働者の契約の更新をしない、正社員を非正規社員とする、降格・減給などが挙げられます。
マタニティハラスメント(マタハラ)という言葉は、ここ数年耳にするようになりました。「働く女性が妊娠・出産を理由とした解雇・雇止めをされることや、妊娠・出産にあたって職場で受ける精神的・肉体的なハラスメントで、働く女性を悩ませる「セクハラ」「パワハラ」に並ぶ三大ハラスメントの一つ」(連合非正規労働センター「マタニティハラスメント(マタハラ)に関する意識調査」による)と定義されています。
同センターが今年5月に実施した調査結果によると、妊娠を経験した女性労働者でマタハラ被害に遭ったと回答した割合は26.3%に上り、被害の内容は、「妊娠中や産休明けなどに、心無い言葉を言われた」が最も多く10.3%となっています。
妊娠中の女性に「時期を考えて妊娠すべきだった」「つわりで休まれると周囲に迷惑だ」「妊娠するのは順番にして」等の言葉を投げかけることはマタハラとなります。
マタハラが起こる原因として挙げられているのは「男性社員の妊娠・出産に対する理解・協力不足」が66.1%であるとともに、「女性社員の妊娠・出産に対する理解・協力不足」も38.6%となっており、男女問わず理解不足であることが伺えます。
マタハラは、妊娠・出産中の女性のみならず、これから妊娠・出産する女性にもモチベーションの低下をもたらします。周囲の理解が得られない職場では肩身の狭い思いをするのではと妊娠・出産を躊躇したり、この会社では長期的なキャリアが描けないと転職を希望したり、企業にとっては人材の流出が起こる要因となり、大きな損失となります。
採用から研修を行い一人前になるまで従業員を育成するコストを考えても、妊娠・出産後に退職させ新しい人材を採用し一から育成するより、出産・育休を経て育児期間中は短時間勤務でも継続勤務させた方が、長期的にみて効率がよいことは明らかです。
人事担当者として、マタハラ防止への意識を浸透させることは、経営上の問題としても考慮していく必要があるでしょう。マタハラ防止の具体的な対応策としては、育児休業や復帰しやすくなる制度作りや管理職だけでなく職場全体の意識改革、育児経験者の女性の管理職登用やロールモデルを作ることなどが挙げられます。そうはいってもなかなか取組が難しく、権利ばかりを主張してくる社員がいることも事実でしょう。ただ、長期で休むことは誰にでも起こりえます。妊娠・出産ばかりでなく、私傷病や家族の介護など、誰もが「自分にも起こりえること」と捉え、「お互い様」という意識を持つこと、そして当事者もまた周囲に感謝の気持ちを持って接することがマタハラ防止には重要と考えます。
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