溝口知実
第14回  投稿:2015.11.29 / 最終更新:2018.11.09

一億総活躍社会―企業における影響は?

こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。11月26日、安倍政権が掲げる一億総活躍社会実現に向けた国民会議は、「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策- 成長と分配の好循環の形成に向けて-」をとりまとめました。今回は、その中で、今後企業に期待される人事労務施策に関わる部分を取り上げてみました。

安倍内閣は新たな「三本の矢」の政策で全ての人が活躍できる「一億総活躍社会」を目指すと表明しました。第一の矢「希望を生み出す強い経済」、第二の矢「夢をつむぐ子育て支援」、第三の矢「安心につなぐ社会保障」を新たな三本の矢とし、それぞれ「名目GDP600兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」という目標を掲げています。
以下、目標達成のための「緊急に実施すべき課題」から、企業の人事労務管理に関連する事項を抽出しました。

■最低賃金・賃金引上げを通じた消費の喚起
○最低賃金について、年率3%程度を目途として、名目GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1,000円となることを目指す。
○賃上げについての環境を整備する。

■女性・若者・高齢者・障害者等の活躍促進
○就労促進の観点から、いわゆる103万円、130万円の壁の原因となっている税・社会保険、配偶者手当の制度の在り方に関し、国民の間の公平性等を踏まえた対応方針を検討する。
○長時間労働の是正や公共調達の活用等により、ワーク・ライフ・バランスの実現を加速する。
○障害者等の就労支援体制を拡充する。
○企業の採用基準等や学校の入学者資格が、障害や難病のある方が一律排除されているかのような表現になっていないか総点検を呼びかけ、改善を促す。

■結婚・子育ての希望実現の基盤となる若者の雇用安定・待遇改善
○不安定な雇用と低所得のために結婚に踏み切れない若者の希望を実現するため、既卒者・中退者の雇用機会の確保などを通じ若者の円滑な就職を支援するとともに、非正規雇用労働者の正社員転換・待遇改善を推進する。
○非正規雇用労働者が育児休業を取得し、継続就業しやすくするための制度見直しを検討する。
○妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱い等を防止するため、法制度を含めて対応を検討する。
○自営業者・短時間労働者等の産前産後期間の経済的負担を軽減するため、国民年金の保険料の免除等の検討を行う。
○中小企業に被用者保険の適用拡大の途を開く制度的措置を講ずる。

■出産後・子育て中も就業が可能な多様な保育サービスの充実
○企業側の取組として、子育て支援への事業主拠出金制度の拡充により、事業所内保育所など企業主導型の保育所の整備・運営等を推進することについて、平成28年度予算編成過程において検討する。

■介護に取り組む家族が介護休業・介護休暇を取得しやすい職場環境の整備
○介護休業を利用しやすくするため、対象家族1人につき93日取得することが可能な休業を、分割取得できるよう制度の見直しを検討する。また、介護休暇について、より柔軟な取得が可能となるよう検討する。
○介護休業の前後で所得を安定させるため、介護休業給付の給付水準(40%)について、育児休業給付の水準(67%)を念頭に引上げを検討する。

以上、賃上げ、税・社会保険の扶養範囲の適用拡大、長時間労働の是正、非正規雇用から正規雇用への転換・待遇改善、妊娠・出産・育児等を理由とする不利益取扱い(いわゆるマタハラ)の防止、介護休業制度の見直し等がキーワードとなっています。また現在、育児・介護休業法の改正も検討されており、企業としては、今後の動向を見据え対策を講じることが必須となります。

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