溝口知実
第15回  投稿:2016.01.29 / 最終更新:2018.11.09

パワーハラスメントの防止策-コミュニケーション環境を整える

こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。
都道府県労働局等に設置されている総合労働相談コーナーに寄せられる相談件数は、平成26年度では7年連続で100万件を超え、相談内容では「いじめ・嫌がらせ」が62,191件と、3年連続で最多となっています。また、職場でのいじめ・嫌がらせ、暴行や職場内のトラブルにより、うつ病などの精神障害を発病し、労災補償を受ける件数も年々増加しています。パワーハラスメント、いわゆるパワハラという言葉は日常の中に定着してきました。パワハラ防止策に積極的に取り組む企業も増えています。今回は、パワハラに該当する行為とその防止策について述べたいと思います。

パワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える、職場環境を悪化させる行為」と定義されています(厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」)。
厚生労働省が公表した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」によると、具体的なパワハラの内容としては、下記の行為が挙げられています。
・精神的な攻撃(ミスを皆の前で大声で言われる、人格を否定されるようなことを言われる等)
・過大な要求(終業間際に過大な仕事を毎回押し付ける、一人では無理だと分かっている仕事を一人でやらせる等)
・人間関係からの切り離し(報告した業務への返答がない。部署の食事会に誘われない等)
・個の侵害(交際相手の有無について聞かれ、過度に結婚を推奨された等)
・過小な要求(従業員全員に聞こえるように程度の低い仕事を名指しで命じられた等)
・身体的な攻撃(足をけられる、胸ぐらをつかむ、髪を引っ張る、火の付いたたばこを投げる等)

また、同報告書によると、パワーハラスメントに関連する相談がある職場に共通する特徴として、「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」が51.1%と最も多くなっており、パワハラと職場内のコミュニケーション不足は関連深いことがうかがえます。
さらに、パワーハラスメントの予防・解決のための取組を進めるに当たっての課題として最も比率が高かったのは「パワハラかどうかの判断が難しい」で、回答企業全体の72.7%が課題としてあげています。職場内で、この行為はパワハラにあたるのか、あるいは指導の範囲なのか、判断がつかないという声も多く聞きます。
以上のことから、パワハラを防止するには、職場内でのコミュニケーション環境を整えるとともに、職場の一人ひとりが、それぞれの価値観、立場、能力などといった違いを認め合うことが大切であることが求められます。

コミュニケーション環境を整える具体的な防止策として、職場内で自己点検を行うことからはじめてみます。
上司として
・指導や注意は「事柄」を中心に行っているか(「人格」攻撃に陥っていないか)
・自分のやり方を押し付けていないか
・部下の立場・尊厳を尊重しているか
・過剰な要求をしていないか
・部下の能力を上げるために普段から取り組んでいるか 等

部下として
・普段から仕事の進め方について疑問があれば上司に適切に伝えているか
・叱責された理由が何であるか(自分の成長の為に叱責されたか)を考えてみる
・普段の勤務態度、仕事への取り組み方について問題はないか 等

上記と並行して職場内での研修(人権問題やコンプライアンス、コミュニケーションスキル、マネジメントスキル、パワーハラスメント研修)も効果的です。

企業全体としての取組としては、パワーハラスメントを放置しないと会社の方針を明確にし、周知します。また、パワーハラスメント防止ためのルール作りを今一度点検してみます。就業規則等に具体的なパワハラの行為や相談窓口、罰則規定、再発防止に向けた取組等は規定されているか、等を見直してみます。

パワーハラスメントは、職場の生産性の低下、業績の悪化、訴訟への発展、人材の流出、企業イメージの失墜等のリスクをはらんでいます。パワーハラスメントの予防に取り組む意義は、このようなリスクへの対策はもとより、職場の活力や生産性の向上にもつながるため、積極的に推進していくことが求められます。

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