溝口知実
第01回  投稿:2014.08.29 / 最終更新:2018.11.09

職場における熱中症対策と労災認定

熱中症により病院に救急搬送されている人数が連日報道されています。職場での熱中症発生も、後を絶ちません。
厚生労働省の発表によると、熱中症により死亡した労働者数は平成10年以降では記録的猛暑だった平成22年が最も多く47件、次いで昨年の平成25年が30件でした。それ以外の年は、概ね20人前後の年が多く、減少傾向を示していません。
業種別でみると、過去4年間(平成22年から平成25年)、建設業が最も多く計44名、次いで 製造業が計20名となっています。
月別では、7月、8月に全体の約9割が発生しています。

厚生労働省のリーフレット「熱中症を防ごう!」によると、「熱中症とは、高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称」であり、症状としては、「めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温」とあります。
また、環境省のホームページでは、上記に加えて、
「死に至る可能性のある病態です。予防法を知っていれば防ぐことができます。応急処置を知っていれば救命できます。」
とあります。つまり、日頃の労働者の健康管理はもとより、会社の安全配慮義務が大きく関わってくるのです。

安全配慮義務とはなにか。労働契約法第5条において、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と使用者に安全配慮義務を課しています。この義務を怠った場合は、使用者は法律上の損害賠償責任を問われることにもなりますので、注意が必要です。

熱中症対策としての安全配慮の取組として、厚生労働省の通達「職場における熱中症の予防について」(平21.6.19基発第0619001号)では、下記の通り指導しています(抜粋・一部追記・省略)。
1作業環境管理
(1)WBGT値(暑さ指数)の低減に努める
(2)休憩場所の整備
2作業管理
(1)高温多湿作業場所での連続作業時間の短縮等に努める
(2)計画的に、熱への順化(熱に慣れ、環境に適応すること)期間を設けるよう努める
(3)水分・塩分の摂取
(4)透湿性・通気性の良い服装、帽子などを着用させる
(5)高温多湿作業場所では巡視を頻繁に行い、健康状態に異常はないかを確認する
3健康管理
(1)健康診断および異常所見者への就業上の措置(就業場所の変更、作業の転換など)
(2)日常の健康管理についての指導、健康相談
(3)作業開始前・作業中の巡視などによる労働者の健康状態の確認
(4)休憩場所などに体温計や体重計などを備え、身体の状況を確認できるように努める
4労働衛生教育
(1)熱中症の症状(2)熱中症の予防方法(3)緊急時の救急処置(4)熱中症の事例

ところで、熱中症が労災として認定されるには、次の一般的認定要件または医学的診断要件のいずれかに該当していることが必要です(以下、公益財団法人労災保険情報センターホームページより抜粋)。
「【一般的認定要件】
①業務上の突発的又はその発生状態を時間的、場所的に明確にし得る原因が存在すること
②当該原因の性質、強度、これが身体に作用した部位、災害発生後発病までの時間的間隔等から災害と疾病との間に因果関係が認められること
③業務に起因しない他の原因により発病(又は増悪)したものでないこと
【医学的診断要件】
①作業条件及び温湿度条件等の把握
②一般症状の視診(けいれん、意識障害等)及び体温の測定
③作業中に発生した頭蓋内出血、脳貧血、てんかん等による意識障害等との鑑別診断」

一般的認定要件は表現がわかりづらいのですが、仕事をしている時間・場所が熱中症を引き起こす明確な原因が存在していること、その原因により熱中症に至ったという因果関係があること、仕事に関係しない他の原因により発症したものではないことに該当するかということになります。

また、夏の屋外労働者の日射病が業務上の疾病に該当するかについては、「作業環境、労働時間、作業内容、本人の身体の状況及び被服の状況その他作業場の温湿度等の総合的判断により決定されるべきものである」と厚生労働省から通達されています(昭26.11.17基災収第3196号)。

前述の通り、労災認定される場合は安全配慮義務責任とともに損害賠償責任も問われる可能性がありますので、リスク管理意識を持ち労務管理を行うことが望まれます。
まだまだ暑い日は続きますので、適切な対策を講じ、熱中症の発生を防ぎたいものです。

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