溝口知実
第30回  投稿:2018.04.25 / 最終更新:2018.04.25

割増賃金の計算を正しく行うための留意点

こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。企業様より就業規則の改訂のご依頼をいただき賃金台帳を拝見させていただくと、割増賃金の計算を正しく行っていないケースが散見されます。近年では従業員から指摘を受け過去の未払い残業代を請求されるケースも増えています。今回は、割増賃金の計算を正しく行う方法ための留意点をまとめました。

1.割増賃金の計算式と割増率

会社は、労働基準法第37条に基づき、時間外労働や休日労働及び深夜労働をさせた場合には、割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金の計算式は、下記の通りです。
割増賃金=1時間あたりの賃金額×時間外労働・休日労働・深夜労働時間×割増率

割増率は、時間外労働は2割5分以上(1か月の時間外労働が60時間を超えた場合は、5割以上。ただし、当分の間中小企業に適用なし)、休日労働は3割5分以上、深夜労働は2割5分以上です。

2.割増賃金の支払いが必要な時間外労働および休日労働

割増賃金の支払いが必要となる時間外労働とは、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた時間です。会社が定める所定労働時間が法定労働時間より短い場合であれば、所定労働時間を超え、法定労働時間内である時間分は割増賃金の支払いをする義務はなく、通常の手当の支払をすれば足ります(ただし、就業規則上に割増賃金支払の定めがある場合は除く)。
また、割増賃金の支払が必要となる休日労働とは、法定休日に労働させた日に対するものです。労働基準法上、週1日又は4週に4回以上休日を与えなければならないと規定されています。この休日を法定休日といいます。これを上回り休日を与えている会社(週休二日制等)では、法定休日とそれ以外の休日(所定休日)の割増率が異なるため、別個に計算する必要があります(ただし、就業規則上、所定休日であっても法定休日と同率の割増率を規定する場合を除く)。

3.割増賃金の計算における留意点

ア.1時間あたりの賃金額を正確に把握する
割増賃金の計算式における1時間あたりの賃金額は、時給制の場合は時給単価をそのまま計算式に当てはめればよいのですが、月給制の場合は1時間あたりの賃金額に換算する必要があります。

月給制の場合の1時間あたりの賃金額=月給÷1年間における1か月平均所定労働時間

1年間における1か月平均所定労働時間は、1年の所定労働日数に所定労働時間を乗じ、1か月あたり12か月で除して求めます。例えば年間休日122日、1日の所定労働時間が8時間の場合の1か月平均所定労働時間は、

1年の所定労働日数(365日-122日)×所定労働時間8時間÷12か月=162時間となります。

なお、上記の「月給」には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当(住宅に要する費用に応じて算定されるものに限る)、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれません。これらに該当しない賃金はすべて算入しないといけません。

イ.労働時間の端数切捨てはできない
1日の労働時間は1分単位で計算しなければならず、端数を切り上げることはよいですが、切捨てることはできません。ただし1か月の労働時間を通算し30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げることは認められています。

ウ.暦日をまたいで継続勤務した場合の割増賃金の取り扱い
暦日をまたいで継続勤務した場合、翌日の始業時刻までの労働が前日の勤務とされます。この場合、翌日の始業時刻までの超過時間(時間外労働)に対して、割増賃金を支払えばよく、翌日の始業時刻以降の労働は時間外労働にはなりません。
しかし、2暦日をまたいで継続勤務した場合のうち1日が法定休日であった場合には,法定休日の日の午前0時から午後12時までの労働時間が法定休日労働となります。

エ.定額残業代を支給している場合は要注意
定額残業代を支給していても、実際の残業時間が定額残業代相当分を超えればその差額分は支払う必要があります。
詳細は過去のコラム「定額残業代 運用上の留意点」をご参照ください。
https://s-paycial.shinwart.co.jp/column/mizoguchi24/

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