溝口知実
第55回 22年07月更新

複数の事業所で社会保険に加入する場合の取扱いについて

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こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。

兼業・副業などで複数の事業所に勤務する人が、複数の事業所で社会保険の加入基準を満たす場合は、それぞれの事業所で社会保険に加入する必要があります。今回は、複数の事業所で社会保険に加入する場合の取扱いについて解説します。

1.社会保険の加入要件

社会保険の適用事業所に勤務する人で下記の要件を満たす人は、社会保険に加入する必要があります。

・法人の代表取締役、常勤役員

・常時使用される人

・1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である人

・従業員500人超(令和4年10月以降は100人超)の事業所に勤務し、以下の要件を満たす人

①継続して2か月を超えて雇用される見込みがある
(令和4年9月までは1年以上の雇用見込みがあること)

②週の所定労働時間が20時間以上

③月額賃金が8万円以上

④学生でないこと

複数の事業所で代表取締役、常勤役員を兼務している場合は、それぞれの事業所で社会保険に加入しなければなりません。アルバイトを複数掛け持ちしている人や会社勤めをしながら副業をしている人などは、上記の要件を満たせば社会保険に加入します。令和4年10月に予定されている社会保険の適用拡大に伴い、複数の事業所で社会保険に加入しなければならなくなる人は増加すると見込まれます。

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2.複数の事業所で社会保険に加入する場合の手続き

複数の事業所で社会保険の加入基準を満たす場合、新たに被保険者となる勤務先の事業所は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の提出を行います。

その上で、いずれか1つの事業所をメインの事業所として選択し、「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・2以上事業所勤務届」を、選択した事業所の所在地を管轄する日本年金機構事務センター(または健康保険組合)に被保険者本人が提出します。なお、健康保険組合を選択した場合でも、厚生年金保険については別途選択した事業所管轄の事務センターに届出が必要となります。

届出の際に、これまで使用していた健康保険証は返却します。届出の結果、選択した事業所の所在地を管轄する事務センター(または健康保険組合)が被保険者に関する事務を行うこととなり、新しい健康保険証が送付されます。選択した事業所以外の健康保険証は発行されません。

被扶養者がいる場合、選択した事業所で既に被扶養者の登録を行っていれば被扶養者の健康保険証も発行されます。ただし、選択した事業所で被扶養者の登録を行っていなければ、被扶養者異動届の提出が必要となります。

 

2以上事業勤務届は被保険者本人が届出を行うこととされていますが、実務的にはそれぞれの事業所の事務担当者は2以上事業勤務届の届出が行われた対象者であることを把握しておく必要があります。2以上事業所勤務届を提出すると、社会保険料額の算定方法や、算定基礎届、月額変更届などの扱いが異なるからです。

3.社会保険料額について

複数の事業所で社会保険に加入する場合の社会保険料については、事業所ごとに標準報酬月額を決定するのではなく、すべての事業所から受ける報酬額を合算して標準報酬月額を決定します。そのうえで、決定された標準報酬月額による保険料額を、それぞれの事業所で受ける報酬額に応じて按分した保険料が徴収されます。

保険料額=標準報酬月額×保険料率×按分率

<計算の具体例>

A事業所の報酬月額60万円+B事業所報酬月額40万円=合計100万円
⇒健康保険・介護保険の標準報酬月額は98万円
厚生年金保険の標準報酬月額は65万円(上限)
按分割合 A事業所 60万円/100万円 B事業所 40万円/100万円
それぞれの事業所の保険料

A事業所 健康保険・介護保険 98万円×保険料率×60万円/100万円
厚生年金保険 65万円×保険料率×60万円/100万円
B事業所 健康保険・介護保険 98万円×保険料率×40万円/100万円
厚生年金保険 65万円×保険料率×40万円/100万円

算出した額を、それぞれ事業所負担分と被保険者負担分で折半します。

 

「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・2以上事業所勤務届」を提出すると、それぞれの事業所に日本年金機構事務センターから「健康保険・厚生年金保険資格取得確認、二以上事業所勤務被保険者決定及び標準報酬決定通知書」が送付されてきます。その通知書に保険料額(事業所負担分と被保険者負担分の合算額)が記載されています。

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4.月額変更届・算定基礎届の提出について

二以上の事業所勤務者の報酬額が変更となった場合の随時改定(月額変更届の提出)については、1つの事業所のみで随時改定の要件に該当するかどうかを判断し、月額変更届を提出します。その後、日本年金機構事務センターより各事業所に報酬月額改定の通知がされます。

二以上の事業所勤務者の算定基礎届は、通常送付の算定基礎届とは別に、日本年金機構事務センターから各事業所に送付されます。送付された算定基礎届は、選択事業所を管轄する事務センターに提出します。通常送付の算定基礎届の届出は不要です。算定基礎届の提出後、日本年金機構事務センターより各事業所に報酬月額決定通知書が送付されます。

 

以上見てきましたように、二以上勤務者の社会保険の取扱いについては、通常とは異なり事務手続きが煩雑になります。特に気を付けなければならないのは社会保険料額の徴収誤りです。10月に予定されている社会保険の適用拡大後は、対象者の増加が見込まれます。事務担当者の方は、慎重に手続きを行っていきましょう。

 

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