平成29年10月改正の育児・介護休業法の概要について
目次
こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。
今年平成29年1月より、育児・介護休業法の改正法が施行されました。介護休業の分割取得(対象家族1人につき通算93日まで、上限3回まで)、子の看護休暇および介護休暇の半日単位での取得、介護のための所定労働時間の短縮措置や制限等が改正内容ですが、企業の人事担当者の皆様は就業規則の改定や制度の整備等、対応に追われた方も多かったのではないでしょうか。さらに今年10月には、再度改正が予定されています。今回は、10月改正予定の育児・介護休業法の内容の概略について述べたいと思います。
1.最長2歳まで育児休業の再取得が可能に
今回の改正の最大のポイントとなる改正事項です。
現行では、育児休業期間は原則として子が1歳に達するまで、1歳の時点で保育所に入れない等の事情があれば例外的に1歳6か月まで育児休業を延長できましたが、改正後は、1歳6か月に達した時点で、保育所に入れない等の場合に再度申出することにより、育児休業期間が最長2歳まで延長できることとなります。また、ハローワークから支給される育児休業給付金の受給期間も最長2歳までとなります。
従来の制度の問題点としては、保育所の入所時期は一般的に年度初めの4月であることが多く、年度途中に入所することが実質困難であるため、子が1歳6か月に達した以降も入所できない場合は保育所に預けられず、かつ育休も取得出来ない期間となり、退職を余儀なくされるケースも多く問題となっていました。
さらに、今回の改正では育児休業取得者のキャリア形成という観点にもスポットを当て、育介指針が改正されています。育児休業が最長2年まで延長されれば仕事復帰の時期が長引き、キャリア形成の観点からは望ましくない場合もあります。そのため、労使間で職場復帰のタイミングを話し合い、事業主が労働者の事情やキャリアを考慮し、育児休業からの復職を促す場合は「育児休業等に関するハラスメントに該当しない」と育介指針が改正されています。ただし、職場復帰のタイミングは労働者の選択に委ねられることに留意が必要です。
2.育児休業等制度の個別周知
育児休業を取得したくても、会社が育児休業を取得しづらい雰囲気であったため、育児休業が取得できなかったという声が一定数以上あることを踏まえ、事業主側に個別に育児・介護休業等に関する定めを周知する努力義務が規定されました。事業主は、労働者又はその配偶者が妊娠・出産した場合、家族を介護していることを知った場合に、当該労働者に対して、個別に育児休業・介護休業等に関する定めを周知するように努めなければなりません。
3.育児目的休暇の新設
主に男性の育児参加の促進を目的として、新設されました。
現状では、配偶者の妊娠・出産に際して男性が取得した休暇・休暇制度は年次有給休暇制度等、育児休業制度以外の休暇が多く利用されており、育児を目的とした休暇は高いニーズがあると言えます。
今回の改正により、事業主に対し、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、育児に関する目的で利用できる休暇制度(例えば、配偶者出産休暇、入園式等の行事参加を含めた育児にも使える多目的休暇等)の措置を設けるよう努めることが義務付けられます。
企業は10月の改正を踏まえ、就業規則の改定、制度の整備や従業員への対応について、準備、検討していく必要があります。実務的には最長2歳まで育児休業の再取得を可能とする規定を育児休業規程に盛り込むことを最優先事項とし、努力義務とされている育児休業等制度の個別周知、育児目的休暇の新設については企業の実情に合わせ、検討を進めていくべきでしょう。
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