新型コロナウイルス感染拡大防止のための雇用調整助成金の特例措置について
目次
こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。新型コロナウイルスの影響を受け、雇用調整助成金の問い合わせを事業主の方よりかなり頻繁にいただくようになりました。
雇用調整助成金とは、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るため、雇用調整(休業・教育訓練・出向などの措置)を行った場合に助成されるものです。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、4月1日から6月30日の緊急対応期間中は、全国で、全ての業種の事業主を対象に、雇用調整助成金の特例措置が実施されています。新型コロナウイルスによる業績悪化を受けて労働者を休業させた場合の雇用調整助成金の特例措置の概要は下記の通りです。
1.計画届の事後提出が認められる
本来、助成金の申請においては、休業等を開始する前にあらかじめ労使間でその取り決めをし、計画届の作成と労働局への届出後に休業等を実施することが原則ですが、6月30日までは、すでに休業を実施し休業手当を支給している場合でも、事後に計画届を提出することが認められています(休業等の初日が令和2年1月24日以降のものにさかのぼって適用されます)。
2.支給対象となる事業主の要件
新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、雇用の維持を図るために労使間の協定に基づき休業を実施する事業主が対象です。支給対象は全業種です(風俗関連事業者も対象となります)。
「事業活動の縮小」とは、売上高または生産量などの指標により確認します。緊急対応期間(4/1~6/30)中の休業においては、最近1か月間の値が前年同月比5%以上減少しているという生産指標要件を満たしているかを確認します。比較するのは助成金の計画届を提出した日の前月と前年同月の生産指標です。
3.対象となる労働者
支給対象となる事業主に雇用されている雇用保険被保険者が対象となりますが、緊急対応期間(4/1~6/30)中の休業においては、雇用保険被保険者でない労働者(週労働時間が20時間未満)も対象となります。ただし、解雇を予告された労働者、退職願を提出した労働者、退職勧奨に応じた労働者は除きます。
4.休業の規模、短時間休業
休業等を実施する日数の要件(休業等規模要件)を満たす必要があります。休業の初日が1月24日以降のもので6月30日までは、休業等延日数が所定労働延日数の1/40以上(大企業1/30)であることが要件です。例えば、所定労働延べ日数22日、10人の労働者が1日ずつ休業するとして、10人×1日=10人日となり、10/220>1/40となり、要件を満たすこととなります。
また、休業は全日に限らず、1時間以上の短時間休業も認められています。短時間休業の要件としては従来、事業所の労働者が一斉に休業する必要がありましたが、休業の初日が1月24日以降で6月30日までは部門、店舗等施設ごとの短時間休業も対象となります。
5.助成額と限度日数
休業を実施した場合の助成額は、休業手当の相当額に下記の助成率を乗じた額となります。
助成率:緊急対応期間(4/1~6/30)中小企業4/5、大企業2/3
解雇等を行わない場合は中小企業9/10、大企業3/4
(緊急対応期間以外は中小企業2/3、大企業1/2)
ただし、1人1日当たりの上限額は8,330円です(令和2年3月1日現在)。
なお、申請用紙は【雇用保険被保険者】用と【雇用保険被保険者以外】用に分かれており、助成額はそれぞれに計算します。
また、支給限度日数は、通常の場合は100日が上限ですが、緊急対応期間(4/1~6/30)に実施した休業については、100日とは別に利用可能となっています。
6.支給申請から助成金が支払われるまで
雇用調整助成金の支給申請は手続きが煩雑の上、支給までに時間がかかりすぎるといった課題がありますが、新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置に関する申請書類等については、申請書類の記載項目の削減や簡略化、添付書類の削減がされるとともに、これまで支給決定まで2か月程度かかるところを1か月程度に短縮される見込みです。これにより、手続きが煩雑でやむなく申請を諦めていた事業主にとって申請のハードルが下がり、申請しやすくなっています。
本稿は4月17日時点での情報を元に執筆しています。
雇用調整助成金についての詳細は、厚労省HPにて確認してください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
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