溝口知実
第47回  投稿:2021.02.25 / 最終更新:2021.03.01

障害者の法定雇用率の引上げと障害者雇用のための支援制度について

こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。障害者が能力や適性を十分に活かしながら活躍し、また障害者とともに働くことが当たり前の社会を目指す障害者雇用対策が進められています。企業は、一定の割合(法定雇用率)で障害者を雇用することが義務付けられていますが、令和3年3月1日より法定雇用率が引き上げられます。今回は、障害者の法定雇用率の引上げと障害者雇用のための支援制度についての概要をご案内します。

1.法定雇用率の引上げ

従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります(障害者雇用促進法43条第1項)。
令和3年3月1日から、「法定雇用率」が下記の通り引き上げになります。

現行 令和3年3月から
民間企業    2.2%  ⇒ 2.3%
国、地方公共団体等    2.5%  ⇒ 2.6%
都道府県等の教育委員会    2.4%  ⇒ 2.5%

令和3年3月からは、民間企業の法定雇用率は2.2%から2.3%に引きあがり、全従業員のうち、2.3%以上の人数の障害者を雇用しなければなりません。
これにより、障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、従業員45.5人以上の規模から、従業員43.5人以上の規模に拡大となります。

2.障害者雇用納付金制度

法定雇用率を満たさなかった事業主(常用労働者100人超)には、不足1人につき月額50,000円の「障害者雇用納付金」を支払わなければなりません。
この納付金を元に、法定雇用率を達成している事業主に対して、調整金(常用労働者100人超の事業主に超過1人につき月額27,000円)や報奨金(常用労働者100人以下の事業主に超過1人につき月額21,000円)が支給されます。

3.障害者雇用における障害者の算定方法

障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度では、雇用する障害者の数を下記のように算定します。
※ただし、新規雇入れから3年以内または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内かつ、令和5年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した精神障害者である短時間労働者は、0.5ではなく1と算定。

4.対象事業主の報告義務

従業員43.5人以上の事業主は、毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)を7月15日までにハローワークに報告しなければなりません。毎年報告時期になると、対象の事業所に報告用紙が送付されてきます。また、障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めなければなりません。

5.障害者雇用のための支援制度

障害者雇用は、企業にとっても良い効果が期待されます。例えば、障害者の得意・不得意を把握し、得意なことを活かす活躍の場を提供することで、能力を発揮してもらうことができ貴重な労働力・戦力の確保につながります。
障害者を雇用する事業主に対しては、相談や支援を行う行政の中心的な機関として、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターがあります。また、他にも「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」の情報提供や、「トライアル雇用助成金」の制度など、障害者雇用のために利用できるサービスや支援策が数多くあります。
行政のサポートを有効活用することで、障害者雇用を進めやすくすることができます。障害者雇用が十分に進んでいない場合は、それらのサービスの活用を検討してみましょう。

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構HP
https://www.jeed.go.jp/disability/index.html

厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html

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