溝口知実
第50回  投稿:2021.08.27 / 最終更新:2021.08.26

本年6月に公布された改正育児・介護休業法の概要について

こんにちは。社会保険労務士の溝口知実です。本年6月9日に育児・介護休業法が改正されました。令和4年4月1日から段階的に施行される予定です。今回の改正は、男女ともに希望に応じて仕事と育児を両立できるようにするため、柔軟に育児休業を取得できるような制度の創設が盛り込まれています。特に男性の育児休業の取得促進が大きな柱となっています。育児・介護休業法の改正の内容について概要を説明します。

令和4年4月1日施行予定

1.育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
育児休業を取得しようとしても会社や上司の理解が得られなかったり昇進に影響するのではという不安などから、男性の育児休業の取得がなかなか進まないのが現状です。法改正では、育児休業に関する研修の実施や相談窓口の設置などの雇用環境整備や、妊娠・出産の申出をした労働者に対して育児休業制度を個別に周知することと取得の意向を確認することを企業に対して義務付けました。

2.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
これまで有期雇用労働者の育児休業取得には、(1)引き続き雇用された期間が1年以上、(2)1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない、の2つの要件がありましたが、(2)の要件を撤廃し、(1)のみが要件となり、無期雇用労働者と同様の取扱いとなります(ただし別途労使協定の締結により取得の対象外とすることも可能です)。

公布日(令和3年6月9日)から1年6か月以内に施行予定

3.男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設

男性の育児休業の取得促進のため、新制度(出生時育児休業)が創設されました。出生直後の時期に柔軟に育児休業が取得できるものです。
① 対象期間・取得可能期間:子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能
② 申出期限:原則休業の2週間前まで
③ 分割取得:2回に分割して取得できる
④ 休業中の就業:労使協定を締結している場合に限り、従業員と会社が合意した範囲内で休業中に就業することが可能(就業可能日等の上限は厚生労働省令で設けられる予定)

なお、新制度についても雇用保険の育児休業給付の対象となります。

4.育児休業の分割取得
現行制度では、育児休業は原則分割することはできず、子どもが1歳以降に育児休業を延長する場合、育休開始日が、各期間(1歳~1歳半、1歳半~2歳)の初日に限定されているため、各期間の開始時点でしか夫婦交代で取得ができません。改正では、新制度とは別に分割して2回まで取得可能となり、また、1歳以降に延長する場合についても開始日を柔軟に設定することができ、各期間の途中でも夫婦交代で取得できるようになります。

令和5年4月1日施行予定

5.育児休業の取得の状況の公表の義務付け
男性の育児休業の取得を促進するため、従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。具体的な内容は、男性の育児休業等の取得率又は育児休業等及び育児目的休暇の取得率が予定されています。

今回の改正は、男性の育児休業取得の促進が大きな柱となっています。出生直後の育児休業や分割取得が可能となり、育児休業の取得をためらっていた男性にとっては大きな後押しになるのではないでしょうか。一方で、企業には雇用環境の整備や育児休業への申出に対する対応などが求められます。改正内容を確認し、早めに準備していきましょう。

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