令和4年10月以降の地域別最低賃金額について
目次
こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。
厚生労働省は、都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した令和4年度の地域別最低賃金の改定額を取りまとめたと8月23日に発表しました。令和4年10月以降、全国加重平均額31円の引上げとなります。これは急激に進む物価上昇などを反映したものです。最低賃金額の引上げに伴い、企業は従業員に支給する賃金額が最低賃金を下回らないかを確認する必要があります。今回は、最低賃金の概要及び最低賃金の引上げに伴い企業が対応しておくこと等をまとめました。
1.全国加重平均は昨年度から31円増の961円
令和4年度の改定額の全国加重平均額は961円と、昨年度より31円の引上げ(昨年度930円)となりました。全国加重平均額31円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降最高額となります。最高額(東京都1,072円)に対する最低額(秋田、高知、宮崎、沖縄等853円)の比率は、79.6%(昨年度は78.8%)と昨年度から0.8ポイント上がり、8年連続で格差が縮まっています。
新たな改定額は10月1日から10月中旬までの間に順次発効される予定です。
各都道府県の最低賃金額は下記より確認してください。(厚生労働省発表「令和4年度 地域別最低賃金 答申状況」)
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000978544.pdf
2.最低賃金額を下回るとどうなるか
最低賃金は、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。地域別最低賃金は、雇用形態に関係なく、各都道府県の事業所で働く全ての労働者に、その地域の最低賃金が適用されます。特定(産業別)最低賃金は、特定の産業に対して設けられた最低賃金です。地域別最低賃金及び特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、高い方の最低賃金額以上の賃金が適用されます。
最低賃金を下回る賃金しか支払わなかった場合には、企業は最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法により50万円以下の罰金が科され、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法により30万円以下の罰金が科されます。
3.最低賃金額以上であるかを確認する方法
賃金が最低賃金額以上であるかは以下の通り確認します。最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金であって、臨時に支払われる賃金や賞与、時間外・休日・深夜割増賃金や精皆勤手当、通勤手当及び家族手当は除外します。
(1) 時間給制の場合は、時間給が最低賃金額(時間額) 以上であるか
(2) 日給制の場合は、【日給÷1日の所定労働時間】が、最低賃金額(時間額)以上であるか
日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合は、日給が最低賃金額(日額) 以上であるか
(3) 月給制の場合は、【月給÷1箇月平均所定労働時間】が最低賃金額(時間額) 以上であるか
(4) 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合は、出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算した額が、最低賃金額(時間額)以上であるか
(5) 上記(1)、(2)、(3)、(4)のいずれかとの組み合わせの場合は、それぞれ上記の時間額に換算した額を合計した額が、最低賃金額(時間額)以上であるか
4.さいごに
政府は「全国加重平均1,000円」を目標として掲げており、今後も最低賃金額の引上げは継続していくと思われます。今年度は大幅に改定額が引きあがることから、企業は賃金の見直しを迫られることとなります。人件費の増大により、従業員数や勤務時間の調整を行うことも場合により必要になるでしょう。厚生労働省は、最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業を行っています。参考にしてください。
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