キャリアアップ助成金正社員化コース 令和4年10月からの変更点
目次
こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。
キャリアアップ助成金は雇用関係の助成金の中でも人気が高く積極的に活用している企業も多いかと思います。令和4年10月にキャリアアップ助成金正社員化コースの変更があり、正社員、非正規雇用労働者の定義が変わり、申請の要件が従前と比べて厳しくなりました。
今回は、本年10月に変更されたキャリアアップ助成金正社員化コースについて、確認したいと思います。
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成される制度です。
正社員化の支援として、「正社員化コース」があり、有期雇用労働者等を正社員に転換または直接雇用した場合に下記の助成額が支給されます。
有期雇用→正規雇用:1人あたり 中小企業57万円 大企業42万7,500円
無期雇用→正規雇用:1人あたり 中小企業28万5千円 大企業21万3,750円
令和4年10月1日以降に転換または直接雇用を実施する場合の支給要件が下記の通り変更となりました。
1.正社員定義の変更
【9月30日まで】
同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
※正社員待遇が適用されていない正社員としての試用期間中の者は、正社員から除く
【10月1日以降】
同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る
※正社員としての試用期間中の者は、正社員から除く
9月30日までの制度では、正社員に適用されるべき労働条件として「長期雇用を前提とした待遇が正社員に適用されていること」とされていましたが、今回の変更でその具体的な要件(「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」の適用があること)が追加されました。
これらは就業規則に規定しておく必要があります。また、できる限り具体的に規定しておくことが望ましいとされています。
・賞与や昇給については、その支給または実施時期等を明示すること
・退職金については、労働基準法上、適用される労働者の範囲、退職金の支給要件、額の計算及び支払の方法、支払の時期などを記載すること
また、9月30日までの転換は、「試用期間中で賃金が低いなど、正社員待遇が適用されていない試用期間中の者」に限り正社員とみなさないとしていましたが、10月1日以降は、正社員に転換しても、試用期間を設定している場合は正社員に転換したものとみなされません。試用期間中は非正規雇用(無期)と見なされますので、「有期→正規」の申請であったとしても、「無期→正規」の申請として受理、審査され支給額が決定されてしまいます。
2.非正規雇用労働者定義の変更
【9月30日まで】
6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者
【10月1日以降】
賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者
例)契約社員と正社員とで異なる賃金規定(基本給の多寡や昇給幅の違い)などが適用されるケース
10月1日以降に正社員に転換する場合は、非正規雇用労働者が、「正社員と異なる雇用区分の就業規則」を転換前6か月間以上適用することが要件となりました。具体的な内容は下記の通りです。
・基本給、賞与、退職金、各種手当等にて、いずれか一つ以上で正社員と賃金の額または計算方法が異なる制度を明示的に定めておく(基本給の多寡や賞与の有無等)必要があります。
・正規・非正規雇用労働者の就業規則が一体となっていたとしても、「雇用形態」等の条文において、「正社員」「契約社員」「パート」が区別して規定されている場合は、「正規」「非正規」で区別されているものと見なされるため、支給対象となり得ます。
・就業規則には「個別の雇用契約書で定める」と記載し、各従業員と賃金の額または計算方法が正社員と異なる雇用区分の雇用契約を締結している場合は、就業規則で正社員と非正規雇用労働者の間の賃金の額または計算方法の違いを確認することができないため、支給対象外となります。
・有期雇用労働者を正社員に転換する場合は、就業規則等上に「契約期間の定め」が必要となります。この定めがない場合は、雇用契約書上の有期雇用労働者であっても、無期雇用労働者と見なされてしまうため注意が必要です(有期→正規の申請であっても、無期→正規の申請と見なされてしまう)。
以上見てきましたように、令和4年10月1日からの正社員化コースの要件は厳しくなっています。就業規則の変更内容や正社員への転換の時期などを十分確認した上で申請手続きを進めていきましょう。
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