育児期間中の短時間勤務 労務管理上のポイント
こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。
3歳未満の子を養育する労働者が短時間勤務を希望すれば、事業主は、短時間勤務制度を設けなくてはなりません。
今回は、育児期間中の短時間勤務についてよくいただくお問い合わせについて解説したいと思います。
1.育児期間中の短時間勤務は何時間に設定すればよいか
短時間勤務の措置を法的に満たすには、1日の所定労働時間を原則として6時間(1日5時間45分から6時間まで)としなければなりません。それより長くても短くても(たとえば所定労働時間を5時間、7時間と定めること)法的な基準を満たしたことになりません。ただし、所定労働時間を6時間とする措置に加えて、5時間あるいは7時間とする選択肢を設け、労働者に選択させるのであれば問題ありません。
2.残業を命じることはできるか
短時間勤務の措置は、1日の所定労働時間を原則として6時間にすることを内容とするものであり、残業をさせないことまでを規定していません。ただし、頻繁に残業をさせることは望ましくありません。
3.社会保険・雇用保険の適用は
社会保険の適用については、常用的使用関係にあり、労働時間と労働日数が、それぞれ一般社員の4分の3以上であるときは、原則として被保険者となります。
ただし、短時間勤務者が正社員の場合は、上記とは別に、下記の事項を満たしている場合に社会保険の被保険者となる行政通達があります(平21.6.30 保保発0630001号)。
ア.労働契約、就業規則、給与規程等に、短時間正社員に係る規定がある
イ.期間の定めのない労働契約が締結されている
ウ.給与規程等における時間当たりの基本給・賞与・退職金等の算定方法等が同一事業所に雇用されるフルタイム正社員と同等で、かつ就労実態も諸規程に則している
雇用保険については、週所定労働時間が20時間未満であれば被保険者とはなりません。
4.標準報酬の改定について
育児休業終了日に3歳未満の子を養育している被保険者は、次の条件を満たす場合には、通常の月額変更に該当しなくても、育児休業終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬の平均額に基づき、4か月目から標準報酬月額を改定することができます(育児休業等終了時の改定)。
ア.従前の標準報酬月額と改定後の標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じること
イ.育児休業終了日の翌日が属する月以後3か月のうち、少なくとも1か月における支払基礎日数が17日以上であること
標準報酬月額は、育児休業終了日の翌日が属する月以後3か月分の報酬の平均額に基づき算出します。
例えば、5月10日に職場復帰した場合は、5月、6月、7月の3か月の日数および報酬を確認します。
給与支払が月末締め翌月払いであれば、5月の給与は4月分ですので基礎日数は0となるため、5月および6月のいずれかの月の支払基礎日数が17日以上あり、従前の標準報酬月額と1等級以上の差が生じれば8月から育児休業等終了時の改定に該当します。
なお、育児休業等終了時の改定により標準報酬月額が下がったとしても、将来受け取る年金額が不利にならないよう、年金事務所に申請をすることにより、従前の高い標準報酬月額を元に年金額を算出するよう特例措置が設けられています(養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置)。この特例措置の申請は被保険者からの申出ベースではありますが、将来の年金額に関わることなので、人事担当者は忘れずに手続きしましょう。
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