女性活躍推進法の成立の背景と概要について
こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。8月28日に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(通称:女性活躍推進法)が成立しました。この法律は女性が、職業生活において、その希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するため制定されました。法律の施行により、来年の4月から一定以上の規模の企業は女性登用の数値目標を盛り込んだ行動計画の作成と公表が義務づけられます。今回は、女性活躍推進法の成立の背景および概要について述べたいと思います。
1.成立の背景
女性の活躍推進を求める背景には、少子高齢化に伴い労働者不足の加速化が予想され、女性の潜在的能力の活用が求められてきたことや、産業構造の変化により多様な人材を活用していこうという機運が高まってきたことなどが挙げられます。
これまでの国の施策としては、1985年に男女雇用機会均等法、1991年に育児休業法(1995年に育児介護休業法)、2003年に次世代育成支援対策推進法が制定され、仕事と家庭の「両立支援」、雇用管理における男女の「均等推進」が推し進められてきました。安倍内閣は、2013年に「日本再興戦略」を掲げ、女性の活躍推進を最重要課題の1 つとして取組みを進めてきました。
女性活躍推進に関する目標としては、2003 年6 月に男女共同参画推進本部において「社会のあらゆる分野において、2020 年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待する」といった目標(いわゆる「2020年30%目標」)が示されていましたが、総務省が2013年に行った労働力調査によると、管理的職業従事者に占める女性の割合は11.2%となっており、その目標と現実の差は大きく、女性の活躍推進施策の効果は十分であるとは言えません。
女性の活躍推進のためには、「両立支援」と「均等支援」を連動させる取組が必須であると多くの識者が指摘しています。育児と仕事の両立を支援する施策にばかり比重を置いても、女性の定着は進むものの仕事の内容や役割は補助的なものに移行し女性の育成やキャリア形成支援については進まなかったり、また均等支援に比重を置いても、意欲が高く男性並みに働ける一部の女性のみに昇進が限定されてしまったりといった具合に、一方のみの施策に偏るのではなく相互の施策をバランスよく連動させ進めることが女性の活躍推進には効果があると指摘されています。
また、女性の活躍推進が進まなかった根本的な問題に、男性は仕事、女性は家庭、といった男女の性別役割分担への根強い意識があることも指摘されています。過度に両立支援を推し進めてしまうと女性の両立支援への依存を高め、性別役割分担への意識がますます強化される恐れもあります。そのため、新法では、女性だけでなく、男性を含めた社会全体の職場風土に関する意識の改革や、長時間労働の是正など働き方の改革に向けた取組も企業に求めています。
2.女性活躍推進法の概要
女性活躍推進法は、従業員301人以上の企業に下記の事項を義務付けています。なお、300人以下の中小企業は「努力義務」としています。
(1)女性活躍に関する状況把握と課題分析
・状況把握は女性採用比率、勤続年数男女差、労働時間の状況、女性管理職比率
(2)女性活躍推進に向けた行動計画の策定・公表等
・「事業主行動計画の策定に関する指針」(下記)を参考に自社の課題解決に必要な取組を選択し、行動計画を策定
女性の積極採用に関する取組、配置・育成・教育訓練に関する取組、継続就業に関する取組、長時間労働是正など働き方の改革に向けた取組、女性の積極登用・評価に関する取組、雇用形態や職種の転換に関する取組、女性の再雇用や中途採用に関する取組、性別役割分担意識の見直し等職場風土改革に関する取組
・行動計画には目標(定量的目標)、取組内容、実施時期、計画期間の記載が必須
・取組実施、目標達成については努力義務
(3)女性の活躍に関する情報の公表
・省令で定める事項のうち、事業主が選択して公表
また、国が優れた取組をする企業を認定し、事業入札で受注機会を増やす優遇策も盛り込まれました。女性活躍推進法は2025年度までの10年間の時限立法とし、集中的な取組を促すこととしています。
なお、詳細な内容につきましては厚生労働省HPをご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
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