日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第02回  投稿:2014.05.13 / 最終更新:2019.07.04

産前産後休業や育児休業の仕組みと社会保険料

わが国の1人の女性が生涯に子供を産む人数を示す合計特殊出生率が1.41(12年)となり、着実に少子化が進展しています。また、4万4千人(13年10月時点)に上る待機児童をどのように減らしていくかも、国の大きな課題になっています。これらの問題に対して、厚生労働省を中心にさまざまな施策が作られています。

先日の新聞で報道されていたのは「社員以外の子供を預かる」という条件付きながら、民間企業の社内保育所に対して、運営費の4割以上を国や地方公共団体が助成する制度を平成27年4月からはじめようというものです。このように、少子化や女性が活躍する社会を作るために、新しい法律や制度が毎年作られています。

ここで紹介した社内保育所制度は、給与計算とは直接的な関係はありませんが、給与計算にダイレクトに関係してくる制度もあります。

これまで社会保険料の免除の対象にならなかった産前産後休業中も、平成26年4月から社会保険料が免除されることになりました。今回は、産前産後休業や育児休業の仕組みと給与計算の関係についてみていきます。

<産前産後休業について>

社員が出産するときは、出産予定日の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内であれば、本人が休みを希望した場合、会社は休業させないといけません。

また、出産後8週間は、社員が働きたいと申し出ても働かせることはできません。ただし、出産後6週間を経過している場合には、本人から働きたいとの請求があり、医師が認めた仕事内容であれば働くことができます。

この産前産後休業の期間は、就業規則に定めておけば有給でも無給でもかまいません。ただし、この休業期間は「健康保険」から「出産手当金」として標準報酬月額の3分の2が支給されるので、無給にしている会社が多いようです。なお、給与を支給した場合は、その分だけ出産手当金が減額されることになります。

平成26年4月より、産前産後休業期間中も社会保険料の免除を受けることができるようになりました。従業員から産前産後休業取得の申出があった場合、会社は、「産前産後休業取得者申出書」を行政(年金事務所や健康保険組合)へ提出します。産前産後休業取得者申出書を提出するタイミング(出産前もしくは出産後)と出産日(予定日より前か後か)によって追加書類が変わりますので、実際に手続きをする際は行政機関に問い合わせしながら行ったほうが良いでしょう。

<育児休業について>

社員が1歳(パパ・ママ休暇をとる場合は1歳2ヶ月)に満たない子供を養育するために休業を希望するときは、会社は育児休業を与えなければなりません(一部除外される労働者もいます)。また、子供が保育園に入園できないなど一定の要件を満たせば、1歳6ヶ月に達するまで育児休業を延長することができます。

この育児休業中の給与の支給についても特に法律的な制約はありませんので、会社の規則で定めておけば有給でも無給でも良いことになります。この休業期間中は、「雇用保険」から「育児休業給付金」が支給されます。

平成26年4月より男女ともに育児休業を取得することを促進するため、休業開始後6ヶ月間にかぎり、育児休業給付金の給付割合を50%から67%に引き上げられることになりました。ただし、会社からの給与の支給額と育児休業給付金を合わせた金額が休業前の賃金の8割を超えている場合は、育児休業給付金が減額されます。

育児休業中は、以前から健康保険や介護保険、厚生年金保険の保険料が会社負担、社員負担のいずれも免除されることになっています。

<社会保険料の免除で注意したい点>

健康保険や介護保険、厚生年金保険の保険料は、日割りの概念がなく、つねに1ヶ月単位での計算になります。そのため、月の途中から産前産後休業や育児休業になるときや、休業から復帰するときは注意が必要です。

月の途中から産前産後休業や育児休業を開始するときは、その月の社会保険料がすべて免除になります。ただし、産前休業を出産予定日の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以上前から取得している場合で出産予定日より早く出産したときは、社会保険料の免除の対象となる産前休業の開始日が繰り上がります。繰り上がりが月をまたぐと、免除の対象となる期間も1ヶ月前の社会保険料からになり、すでに本人から徴収していた社会保険料を返金する必要が出てきます。

産前産後休業や育児休業を終了する場合は、休業の開始と反対に、月の途中で復帰するとその月の社会保険料は1ヶ月分全額が必要になります。

たとえば、5月30日に育児休業を終了し、31日から復帰したとすると、5月分の社会保険料は全額徴収されることになります。

いかがでしょうか?最後にアウトソーシングについて補足します。給与計算の担当者が新しい制度の仕組み等をしっかり理解をしていないと正しい給与計算ができません。給与は社員にとってとても重要なものですから、間違えてしまうと会社への不信感へつながり無用なトラブルが発生する場合もあります。

頻繁におこなわれる制度改定に影響される給与計算や手続き業務については、社内で正確な知識や法改正に対応できる担当者を養成するのは時間もコストもかかります。人事給与(ペイロール)アウトソーシング「S-PAYCIAL」の導入や社会保険労務士などの専門家へのアウトソーシングの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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