賞与の支給と給与計算
夏のボーナスの時期が近付いてきました。2014年の春はテレビや新聞等の報道でも大きく取り上げられたように、賃上げをした会社が多くありました。夏に支給されるボーナスも、「前年よりもアップする!!」という期待感につつまれているのではないかと思います。
さて、毎月支払われる給与と賞与では、計算の方法が異なる部分が多くあります。今回は、賞与の計算方法をみていきたいと思います。
<賞与とは?>
まず、賞与とはどのようなものなのかをみていきましょう。
賞与は、法律的に必ず支給する義務があるわけではありません。経営者の判断で支給してもしなくても良いものです。ただ、入社の際に約束をしていたり、賃金規程等で「必ず支給する」と決めていると、支給が義務になります。
やむを得ず賞与を支給できない場合もあるでしょうから、雇用契約書の賞与の欄では、確定的な表現は避け、「業績に応じて支給することがある」といった表現にしておくほうが良いでしょう。また、賃金規程を作成し、支給対象者や支給時期、査定期間などを記載しておくと支給要件がはっきりします。
賞与は、何を基準に支給をするかを明確にする必要があります。まず、会社の業績が賞与に影響することを従業員には説明しておくべきでしょう。もちろん、固定的・安定的に賞与を支給するのは悪いことではありませんが、あまりに既得権益化すると「もらって当たり前」になってしまい、業績に応じたフレキシブルな運用ができなくなります。また、そのような状態で賞与を減額したり支給しなかったりすると、モチベーションダウンや、場合によってはトラブルに発展することさえあります。賞与の支給が逆効果にならないようにしっかりと考えた運用を行う必要があります。
<賞与の社会保険について>
賞与を支払う際にも、社会保険料や所得税を計算し、賞与から控除しなくてはなりません。しかし、賞与から控除する社会保険料や所得税は、毎月行う給与計算の方法とは控除の仕方が異なります。
健康保険と厚生年金保険を計算する際は、賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額に保険料率を乗じて計算します。さらに、40歳以上65歳未満の社員は介護保険の対象になりますので、同様に1,000円未満の端数を切り捨てた額に保険料率を乗じて、保険料を計算します。この1,000円未満の端数を切り捨てた賞与額のことを「標準賞与額」といいます。
また、健康保険(以下、介護保険も健康保険と同じ考え方です。)と厚生年金保険では、標準賞与額に上限額が定められています。そのため、上限額以上に賞与が支払われた場合は、超えた部分には健康保険や厚生年金保険がかかりません。
標準賞与額の上限額は、健康保険が賞与の支払った年度(4月から翌年3月)の累計額で540万円、厚生年金保険は賞与1回について150万円です。なお、同じ月内で賞与が2回以上支払われたときは、その月に支払う賞与を合算して標準賞与額を計算します。
<入退社時の社会保険料の計算>
健康保険、厚生年金保険ともに、原則として社員が賞与の支給を受けた月の月末まで在籍していた場合に控除します。したがって、7月31日に退職した場合は、7月に支給した賞与から社会保険料を控除し、賞与が8月に支給される場合は控除する必要がありません。
社員が月の途中で退職した場合には、退職月に支払う賞与は健康保険と厚生年金保険が不要になります。たとえば7月20日で退職する従業員に在職中の7月5日に賞与を支給する場合でも、健康保険と厚生年金保険の控除はしません。
パートから社員になったときなど、入社してすぐに賞与が支給されることもあります。この場合は、資格取得日の前に支払われているときは、健康保険と厚生年金保険は控除不要ですが、資格取得日以降に支払われた場合は、健康保険と厚生年金保険を控除します。
産休や育児休業も、その月の最終日に休業しているか復職しているかで、保険料の有無を判断します。唯一、介護保険だけは、誕生日の前日が判断基準になりますので、1日生まれの人は要注意です。
<賞与の雇用保険について>
雇用保険料は、賞与からも控除します。雇用保険の計算をするときは、健康保険や厚生年金保険とは違い、支給額に対してそのまま保険料率を乗じます。
なお、雇用保険は月末に在籍していたかは判断基準にはなりませんので、退職日の翌月以降に支払われた賞与であっても、雇用保険料を控除する必要があります。
<賞与の源泉所得税について>
健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料を計算し、賞与から控除をしたら最後に所得税率をかけて税額を算出します。賞与から控除する所得税の計算は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用します。
賞与の所得税率は、前月の給与額から社会保険料などを控除した金額で決定されます。そのため、賞与が一緒であっても前の月の給与が違えば、賞与から控除される所得税額は異なります。例えば、月々の給与が30万円と60万円の人が同額の50万円の賞与を支給されたとします。この2人の賞与から控除される源泉所得税額は、前月の給与が60万円だった人の方が税率が高くなります。
なお、住民税は賞与からの控除はありません。
いかがでしょうか?このように月の途中に退職した場合は、社会保険料を控除しない等の賞与独自のルールが存在します。賞与は給与より金額が大きくなることがあるため、計算のミスをしてしまうと修正する金額も大きくなってしまいます。
特殊なケースでも給与計算を正確に実施できる担当者を養成するのは、時間もコストもかかります。人事給与アウトソーシング(ペイロールアウトソーシング)S-PAYCIALの導入や社会保険労務士などの専門家へのアウトソーシングの活用を検討してみてはいかがでしょうか。戦略的な人事やタレントマネジメントなどの高度な人材育成が求められるなか、給与計算はアウトソーシングを行い、コストの削減と戦略的人事部門の強化を行うのも必要な時代になってきているように思えます。
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